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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第二章 それぞれの想い
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16 天候を司る魔法使い

 オレの名前はビッツェ。

 今日も今日とて、天候を操り料理を降らす。

 毎日毎日同じことの繰り返しだ。

 それでも、オレはこの仕事に誇りを持っている。

 自分にしかできない仕事。

 孤独であること以外、不満はない。


 ないはずなのだが、オレもそろそろ十五歳だ。

 彼女の一人や二人、欲しくないと言えば嘘になる。


 しかし、オレは外部との接触は固く禁じられている。

 オレの存在は人々に知られてはいけない。

 それがこの世界の規則ルールなのだから……。





「ふんふんふーん、今日はカレー祭りー、準備は万端、あとは料理を降らせるだけー」


 鼻歌交じりに家の屋上へと上がる。

 あとは、魔力をちょいっと込めればカレーが降るって寸法だ。

 料理を自由自在に出現させる不思議な能力。

 これがオレに与えられたユニークスキル。


 誰も褒めてはくれない。

 それでも、オレは毎日決まった時間に料理を降らせる。

 もうかれこれ数千年に渡り、代々受け継がれてきた極秘任務だ。


「ん、あれは何だろう?」


 料理を降らせる町のほうを見ていると、何かがこちらに向かって飛んでくる。

 魚? モンスター? いや、あれは……。


「に、人間!? オレのことがバレたのか? どどど、どうしよう!?」


 なぜ、この辺境の地に人間が降ってくるんだ?

 もしかして、オレの寂しい想いが魔法となって料理ではなく人間を降らせたとでも言うのだろうか。


「軌道をずらすか? いや、あの速度じゃ間に合わない……ッ! それならば――」


 オレは、飛んでくる人間目掛けて魔法を撃つ準備をする。

 と、そこであることに気付いた。


「女の子だ。しかもめっちゃカワイイ!」






 オレは、自分が情けない。

 規則を破り、外部の人間を助けてしまった。

 

 いや、まだ間に合う。

 二人は気を失っている。

 やるなら今がチャンスだ。


 ゆっくりと二人に近付く。

 ゴクリと唾を飲む。


「お、おお、なかなかに柔らかい! って何をやってるんだオレは! 早くトドメを……」

「う、うーん……」


 !?

 まずい、目を覚ましてしまったようだ。


「あら? ここはどこかしら~?」

「……」





 話を聞くと、どうやら二人は勇者とその仲間らしい。

 危ない危ない、勇者を手にかけるところだったのかオレは。


「オレはビッツェ、天候を司る魔法使いだッ! あっ!」


 テンションが上がったオレは、つい自己紹介をしてしまった。

 料理を降らせる魔法のことは誰にも知られてはならないのに。


「そんなことより、ここはどうして移動魔法が使えないの? 私は早く町に戻らないといけないのよ!」


 と思ったら、軽くスルーされた。

 どうやら悠長に話をしてる場合ではないらしい。

 

 この家は、特殊な結界が張られているため移動魔法で来ることはできない。

 同時に、この家からも移動魔法を使うこともできないのだ。


「悪いけど、オレの正体を知った者を生きて返すことはできない」

「はあ? あんた何バカなこと言ってんのよ! あんたの正体なんかに興味ないわ! 私は勇者よ! 今こうしてる間にも、スライムに町の人々が殺されてるかもしれない。それを見過ごすことなどできやしないわ!」


 勇者に捲し立てられてオレはたじろいでしまう。

 女の子って怖いんだな。


「わ、分かった、分かったから、胸座掴まないでくれる? そんなに言うなら、帰る方法を教えてあげるよ。ただし、こっちの巨乳の子は置いてってもらう」

「なんでよ! ミルフィは私の仲間よ! こんな場所に置いていくわけにはいかないわ!」

「いわば人質さ。君が勇者だとしても、完全に信用はできない。もしオレのことをバラすようなことがあれば、この子を殺す。良いね?」


 オレがそういうと、勇者が物凄い剣幕で斬りかかってきた。


「おっと、危ない。オレを殺したら世界中の人々が飢えて死ぬことになるんだよ?」

「ど、どういうことよ!?」


 あの、話聞いてなかったんですかね。

 オレは天候を司る魔法使い、すなわち世界の食を一人で賄っているというわけだ。


「あの、クレアちゃん? 私のことは良いから、町に戻って? ね? 魔王が一人で戦ってるの。お願い」

「そ、そんなことでき……」

「大丈夫、この人だって私を本当に殺したりしないわ。もしその気があるなら、私たちを助けたりしない、そうでしょう? ね?」


 何やら、二人が話し込んでいる。

 オレはすっかり蚊帳の外だ。

 面白くねえ。


「分かったわ。でも、スライムを片付けたらすぐ戻ってくる。そこのあんた、ミルフィに変な真似したらこの私が許さないからねッ!」


 そう言って、勇者は一人飛び出していった。

 まだ帰る方法を教えてないんだけどな。

 まあ、この家から出れば移動魔法は使えるんだけどね。


「さて、ミルフィさんだっけ? とりあえずオレと付き合うことを前提に結婚してくれませんか?」


 二人きりになったオレは、そう切り出したのだった。

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