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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第一章 俺の知ってる異世界と違う
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09 この世界の食料事情はどこか変わっている

「それにしても、驚いたよ。まさかクレアが村の子どもたちにエビフライを分け与えてるなんてさ。俺、クレアのことを少し見直したよ」

「べ、べ、別にそんなつもりでやってるわけじゃないしっ! 勇者なんだからこれくらい当然のことだしっ!」


 照れながらもそんなことを言うクレアがなんだか可愛く思えた。

 いかんいかん。

 騙されるな俺。

 こいつは、自分勝手な横暴勇者だ。

 そうだよ、人の失態を見て指差して笑ったりしてくるようなやつだぞ?

 いきなり牢屋に放り込んだりするようなやつだぞ?


「……」

「……な、何よ? 黙ってられると気分悪いんだけど?」

「えっ! ご、ごめん……」


 なにこれ凄い気まずい。

 やばい。

 勇者のことが気になりだしてる?

 いやいや、あり得ないって。


「……あんたさ、異世界から来たって言ってたわよね?」

「ああ、そうだけど……」

「ねえ、どんなところなの? 教えなさいよ!」


 無言なのが気まずかったのかクレアがそう切り出してきた。

 俺の世界のこと、か。

 俺はごくごく普通の高校生だったし、特に面白い話もできない。

 けど、俺は気付いたら話していた。

 自分のことを、今までのことを。


「ふーん、なんか変な世界ねっ! ねえ、もうその世界には戻れないの?」

「ん? そりゃ戻れないんじゃないかなぁ? 自分の力で来たわけじゃないし」

「そっか……」


 クレアは少し残念そうな顔をした。

 変なのはこっちの世界だと思うんだけどなあ。

 ネコや料理が降ってくるなんて常識じゃ考えられん。


「あらあら、二人ともすっかり仲良くなっちゃって」

「何言ってんのよミルフィ! こ、これは別にそういうんじゃないから! ちょっと異世界に興味があったってだけで、こいつに興味があったわけじゃないんだから!」

「はいはい、そういうことにしておきますね~」


 ミルフィがエビフライ祭りの負傷者の治療を終えて戻ってきた。

 しかし、この世界、なんとも不思議な世界だ。


「なんで危ない思いまでして皆エビフライ祭りに参加してるの? オリンピック精神?」

「なんでって、生きるために決まってるじゃない」

「……? 生きるため? エビフライがないと死んじゃう世界なの?」


 そういえば、シャルノも『天の恵み』がないと死んじゃうとかなんとか言ってたような。


「この世界の食料は全部『天の恵み』で賄われてるのよ」

「へえ、他の食べ物はないの? そういや畑とか見かけなかったなあ」

「農業だったっけ? ナイトの世界ではそれが当たり前なのかもしれないけど、この世界にはそんなものは存在しない。毎日、決まった地域で決まった量しか食料が降らないの」


 農業、がない?

 あれ、でもシャルノたちは空飛ぶ魚を食べていたような。


「『天の恵み』以外にも食べられるものは存在しているわ。でもね、それらは決まって毒を持っているのよ。常人が食べたら死ぬくらいの猛毒がね」


 も、猛毒って。

 ポイズンフィッシュは猛毒なのかよ。

 良く生きてたな俺。


「だからね、勇者は毎日、与えられた移動魔法を活かして食料を確保するの」

「んー、なんだか大変そうだな」


 俺の知ってる勇者のイメージと大分かけ離れてるけど、世界を救ってることには変わりはないのかもしれない。

 だから、多少自分勝手な行動していても許されているのかもしれないな。


「だから、本来ならば私は魔王を倒さないといけないのよ」

「えっ?」


 少し寂しげに床を見つめながらシャルノが言った。


「数少ない食料。それを大量に食べてしまう魔王は世界の敵なのよ」

「なるほどねぇ。たこ焼きがどうとかって言ってたから変だと思ってたんだよ」


 そりゃそうか。

 いくらなんでもたこ焼きで争うなんておかしいもんな。

 まあこの世界はおかしいことだらけだけど。


「たこ焼きを食べられて怒ったのは事実よ。私、たこ焼きが好きなのよ。この世界で一番好きなの。後で食べようと思って大事に取っておいたたこ焼きをあの大食い魔王が全部食べちゃったのよ? 許せないでしょう!」


 結局たこ焼きのせいなのかよ!


「まあ、結局私は魔王を倒せなかったんだけどね……。さてと、無駄話はおしまいっ! 早くエビフライをみんなに届けなきゃ!」


 そう言って、クレアが立ち上がる。

 どうやら、全世界にその日の祭りでゲットした料理を届けるのも勇者の仕事らしい。


「俺も何か手伝おうか?」


 軽はずみでこんなことを言ってしまったがために大変なことになってしまう。


「本当に? じゃあ、それ、全部運ぶからこっちに持ってきてちょうだい」

「え、全部ってこれ全部?」


 クレアが指差す先にあるのは、村人たちが総出で手に入れたエビフライの山。

 地域ごとの食材を提供する代わりに他の食材をもらう。

 ギブアンドテイクってやつらしい。

 この世界は、そうやって成り立っている。


「皆が待ってるんだから早くしなさいよね!」

「ちょ、待って待ってよ! 俺に全部任せてないでお前も少しは手伝えよ!」


 ああ、どうしてこんなことにっ!

 ま、しょうがないか。

 別に良いことしてるわけだし……。


 はぁ、こんなことするために異世界に来たわけじゃないんだけどなあ。

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