第五話 ミッション1:輸送車護衛【3】
キタ「またああ言うのが出てきてくれへんかな~。」
ウェス「奇襲なんて一度バレれば二度は通用しないからね。もう出てきやしないさ。」
キタ「そやろな~。」
ウェスの言うとおり、何事もなく谷間を抜けキタ達と合流したところで目的地点とされる友軍基地が見えた。あの基地まで輸送車を護送すればミッション達成か・・・確か怪しい箇所はあの湖だったよな。
街道沿いに大きな湖がある。おそらく湖の中から敵が襲いかかってくるだろうと、ミッション前の作戦会議で話し合われていた事を思い出した。街道を進みながら湖を覗き込む。水の透明度は高く、数匹の魚が泳いでいるのが見えるが、敵が潜んでいるようには見えない。
トウマ「綺麗な湖だな。ここから見た感じだと敵がいる様子はないな。」
ウェス「・・・そうだね。予想と違って反対側の草原から来たよ。」
ナック「あれは何だ?盾が走ってくるぞ。」
ナックの言う通り大きな盾が四つこちらに迫ってきている。盾には野牛の顔が描かれており、その形相は怒りに満ち溢れているようだ。
『ブッモーーー。』『モーーゥ。』
キタ「もしかしてあの盾が顔なんか?面の皮が厚いって感じやな。」
トウマ「虫じゃなくて牛か。」
サーシャ「虫でも牛でも構わないわ。敵は四機、並んでこちらに向かってきてるわ。総員迎撃用意、ウェスからいって。」
「よっしゃ。」「応。」「解った。【インパクトバレット】を撃つね。」「了解。」
サーシャ「放て!」
タッーーン! ・・・ガンッ!
ウェスの遠距離射撃により左端の盾牛に衝撃弾が命中する。盾牛は大きく仰け反りはするものの、盾を左右に振ったあと、再びこちらに向け走り出した。
ウェス「【インパクトバレット】でも足止めにしか成らないみたいだ。」
サーシャ「正面から迎撃するのは厳しそうね。トウマは牛の側面に回り込みドリルガンでアイツ等に風穴を開けてきて頂戴。」
トウマ「了解。」
サーシャ「キタはトウマの逆側に回り込んで。」
キタ「よっしゃ。」
サーシャ「二機までならネットガンの【ワイドショット】で止めてみせるわ。」
いつの間にかサーシャはチームのリーダーになっていた・・・いや、最初からそんな感じだったな。ゲーム歴はナックやウェスの方が長いのに、元々サーシャにはリーダーの素質が有るのかもしれないな。
俺はシールドバイソンの側面に回り込むために機体を走らせる。装填数一発のみのドリル弾が装填されているのは確認済みだ。リロードのやり方も覚えた。今回はダンゴムシ戦の様な失敗はしない。
だが、今回もサーシャの指示通りには出来なかった。
盾牛が足を緩め、俺の方へと向き直り転進してきたのである。
トウマ「な、なんで?」
「あら。」「あらら。」
これも運の悪さが原因なのか?俺はどう動けば良いんだ?銃をシールドバイソンに向けてはいるが、もっと引き付けるべきなのか、今が撃つべき時なのか分からない。
ナック「トウマ、何してる、早く撃て!」
バスッ・・ガガガ・ガガガガガガガガガガガガガガガ・ガガガガガガガガガガガガッ。
『ブモモモモモォーーーー!!』
【14ソウル獲得】
ドシュッ、ガガ・ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ。ドガッ!
『ブモーーゥ!』
『『ブオオオォゥ!』』
無我夢中で撃ったドリル弾は先頭を走るシールドバイソンの盾に描かれている猛牛の額に命中し、ドリル回転により掘削しながら盾を貫通し盾牛の体まで貫いた。それどころか後続する二頭目の盾牛にまで到達し、そのまま貫通とまではいかなかったが相当な損傷を与え大きくよろめかせる。そこへ三頭目の盾牛が二頭目を弾き飛ばし俺に向け突撃を仕掛けてくる。
俺は焦りながらもリロードを済ませ、二発目のドリル弾を発射するが、シールドバイソンは弾を正面から受けないように盾の頭を斜に構え、ドリル弾を逸らす様に弾かれてしまう。
ドガッ!!バァーーン!!
シールドバイソンの突撃をモロに食らってしまう。それと同時に【体】、【腰】、【脚】の装甲が爆発し、その衝撃でAQAは大きく後方へと吹っ飛んだ。・・・撃墜されたのか?まだ操縦席では警告音が鳴り響いており、第三モニターの機体表示を見てみると【体】、【腰】、【脚】の部分が黒色になってはいるが、【頭】は白で、【背】と【腕】は赤く点滅している。AQAの腕を動かしてみると腕はしっかりと動く。装甲が無くなりはしたが脚も動くのだ。俺はまだ・・・。
トウヤ「俺はまだ、戦える!!」
最後尾のシールドバイソンは、ウェスによる側面への衝撃弾によってよろけ、ナックの火炎弾、後方からキタの散弾を受けて動けそうにない、二頭目は立ち上がりかけた所をサーシャの捕縛弾により鋼網が絡みついて思うように動けないでいる。残る相手は俺を吹き飛ばした三頭目、すでに姿勢を低くし、突進の構えをとっている。
【三連コンボ】発動。ベコッ、ボコッ、ギィィィィン。
再度突進してくるシールドバイソン目掛けてストレート、アッパー、抜剣しての叩きつけ斬りをぶちかますがダンゴムシの時の様にすぐさま真っ二つとまではいかず、大盾を切断するには時間が掛かった。その間も盾牛による突進は止まらず、踏ん張りはするがズルズルと後へと押されていく。
背後には湖、もうこんな所まで押されてしまっていたのか、湖に落とされると拙いな、ん?拙いのか?アクアと呼ばれるくらいだから水には強いのかもしれないぞ、そんな気がしてきた俺のところにサーシャから通信が入る。
サーシャ「トウマ、後ろは湖よ、気をつけて。」
おいおい、やっぱり拙いんじゃないか、落とされるわけにはいかなくなったぞ。俺はチェーンソードを盾牛の顔面に食い込ませたまま、それを支柱にして飛び上がり、同時に剣を手放し機体を捻らせながら盾牛の背中に飛び乗る。それからはロデオしながらハンマーナックルで背中を滅多打ちにする我慢比べが始まった。
振り落とされるとダメージを受けるだろう、そうなると今度こそ機体を失うはめになりそうだ。耐えたとしても真下にいる盾牛の突撃を避ける自信はない。暴れまくる野牛に落とされまいと足腰に力を込め、左手で野牛の背中を掴み、右手で殴打を繰り返す。
野牛は飛び跳ねながら俺を乗せて湖の中へと突き進む、やがて盾牛は跳ね落とそうとしているのか息継ぎしようとしているのか分からない程の水深まで進むと、徐々に跳ね落とす力を無くして行き、最後は力尽きてどうと倒れ込んだ。
盾牛が倒れると言うことは、背中に乗っていた俺は当然、盾牛と共に倒れる事になり、放り投げられる感じで湖の中へと落ちてしまう。
【14ソウル獲得】
ナック「トウマ、無事か?」
トウマ「ああ、なんとかな。」
キタ「そうか、ほな遠慮なく。」
【???パーツ入手】
【???パーツ入手】×2
あ、皆、無事に残りの敵を倒せたみたいだな。一頭目の収拾は間に合わなかったか・・・。
皆は悪いが、この盾牛は俺が収拾しておくか・・シールドバイソンの残骸を探すと、それは水中にあり早くも点滅している。
【???パーツ入手】
やっぱり一個だけだな。
「あっ!」「「「おっ!」」」
トウマ「どうした?」
キタ「なんでか知らんがアイテムがきたで。」
ナック「今、トウマが収拾したのか?」
トウマ「ああ、皆には悪いと思ったけど、もったいないから収拾した。」
サーシャ「トウマからでもアイテムが来るのね。」
キタ「そういう事もあるっちゅう事やな。」
ウェス「そうだね。これからは遠慮せずにアイテムを拾ってよ。」
キタ「優先度は低いけどな。」
トウマ「解った。祈りながら取るよ。」
サーシャ「ふふ、それじゃあ、一息ついたところで護衛任務を再開しましょうか。」
ナック「そうだな、流石にもう敵は出てこないだろうし後は基地に着けば任務達成だな。」
ウェス「今回は湖から出てくると踏んでたのに逆を突かれたね。」
キタ「おいおい、そんな事言ってるとホンマに出てくんで。」
ナック「・・・。」
サーシャ「・・・ねえ、今のやり取り、どこかで聞かなかったかしら。」
ナック「ああ、聞いた覚えがあるな、しかも本当に・・・。」
トウマ「うわっ!!」
俺が湖から出ようとすると突然後方へと強い力で引っ張られる。振り返ると湖の中心に向けて渦が巻いているのが見えた。
渦から逃れようと必死にもがいたが、その甲斐もなく機体は渦の中心部へと飲み込まれてしまう。
「うわぁぁぁ。」
サーシャ「トウマー!」