第四話 ミッション1:輸送車護衛【2】
サーシャから簡易修理を受けAQAゴブの耐久力が少し回復した。だが、減少した回避力等はそのままだ。そして輸送車に装備されている補給装置を使用し、エネルギーの回復を済ませると俺たちは進行を再開した。
中盤の難所とみられる谷間へと踏み込む前に、キタの操縦するAQAメドと、ウェスのAQAグリが険しく切り立った崖を登り、上方から谷間での行軍の安全を確保する事になった。
キタ「登れなくはないけど、結構時間が掛かりそうやな。」
ウェス「ああ、ここを狙われたら御仕舞だな。」
キタ「不吉なこと言うなや、そんなん言うたらホンマに来るで。」
ウェス「・・・すまん、本当に来たようだ。」
崖上からクワガタムシの大顎を持った鳥型の半虫半機が襲いかかってきた・・・キタやウェスにではなく、輸送車の方に・・・。
サーシャ「あら、こっちを襲うつもりなのね。谷の方へ身を隠しながら迎え撃つわよ。」
ナック「ウェス達は登攀を続けてくれ。」
キタ&ウェス「「了解。」」
上空を自由に飛び回られては当てづらい為、渓谷へ誘い込み、トビクワガタの飛行領域を狭める作戦だ。サーシャの狙い通りトビクワガタは岩壁にぶつかるまいとして飛行速度が極端に落ちた。だが、速度は落ちても距離が離れていてなかなか命中させられない。
サーシャの銃では射程外で、ナックのヒートマシンガンだと、数発当たっても一発の威力が低く有効打になっていなさそうで、俺のドリルガンはドリル弾がトリクワガタの羽に当たったのに突き抜けてしまいダメージを与えることが出来なかった。
トウマ「駄目だ。俺の銃は通用しないみたいだ。こうなったら飛びかかってきたところをチェーンソードで切り裂いてやる。」
サーシャ「待ってトウマ、貴方の銃は敵の硬い部分を狙うのに適しているはずよ。あの大顎を狙い撃てるかしら?」
トウマ「解った。やってみる。」
リロードを済ませ壁を背にし、こちらに大顎を開き突っ込んでくる一匹に狙いを定める。命中力が高いおかげか、ある程度機械の方で狙いを付けてくれていて、当てるのはそう難しくはない。だが今回は一点を狙わなければならない、俺はターゲットサイトに全神経を傾ける。
トウマ「・・・今だ!」
力を込めてトリガーを引く、バスッ!迫りくるトリクワガタに向けドリル弾が発射された。
ガギンッ!ガガガッ、ガギーン!
ドリル弾はトリクワガタの右大顎に命中し、赤い火花を散らしながらドリルは貫入して行き、最も硬そうな大顎を砕き折った。そしてバランスを崩したトリクワガタは俺の脇をすり抜けて岩壁へ激突する。
ナック「やった、うまい具合に壁に刺さりやがった。」
左大顎の先端が絶妙な深さで壁にめり込んでいて、羽をばたつかせて大顎を抜こうとするが抜けそうもなく、両足は壁にも地面にも届かず踏ん張り抜くことも出来ない。
サーシャ「そいつは後にして、もう一匹が来るわ。」
俺は残りの一匹に狙いを定めて再度ドリル弾を発射するが、既のところでトリクワガタは少し上昇し、弾を避けられてしまう。咄嗟に伏せて突撃をかわしたのだが、そこへサーシャのネット弾が俺ごとトリクワガタを捕縛する。ネットの中で、もがき暴れるトリクワガタと必死にハンマーナックルパンチを浴びせ続ける俺。互いに傷つけ合いながらも何とか勝利を収めることができた。
壮絶な死闘を制し俺は勝利の余韻に浸っていたのだがサーシャのAQAに邪魔よとばかりに押しのけられてしまう。何事かと思い押しのけた本人の方を見ると、サーシャは点滅を開始した残骸のアイテム収拾に取り掛かっていた。
【12ソウル獲得】
【???パーツ入手】×2
サーシャ「やったわ、どうやら点滅していても入手アイテム数に変わりはなさそうね。」
サ、サーシャは研究熱心だね・・・。検証できたことが嬉しかったのかサーシャのAQAデュラはガッツポーズを決めていた。
【???パーツ入手】
ナック「こっちは二個か、まあ仕方がない。」
いつの間にかナックは壁に刺さっていたトリクワガタを仕留めていた。
キタ「お疲れさん、こっちは頂辺に着いたで~。」
ウェス「苦労して登ったかいがあったよ。崖の上にフンコロガシが四機もいる。」
サーシャ「そんなに?貴方達だけで対応できそうなの?」
キタ「まだこちらに気づいた様子はないな。ウェスの狙撃でなんとかなるんちゃうか。」
ウェス「それよりも、まだ輸送車を進めないでね。どうやらフンコロガシの目的は崖上から鉄の塊を落として輸送車を潰すつもりのようだ。」
サーシャ「了解、不用意に通過しようものなら鉄球の下敷きにされるところだったのね。」
キタ「そういうこっちゃ、ご丁寧にも崖際にはずらりと大きな鉄球が並べられとるからな。こんなもん落とされたら堪ったもんちゃうで。」
ウェス「そんな訳で全滅させるまでは動かないでね。」
サーシャ「二人共逃げ場は無いんでしょ、くれぐれも慎重にね。」
了解の返事の代わりに崖上から銃声が聞こえた。どうやら遠距離射撃を始めたようだ。
キタ「・・・おかしい。」
ナック「どうした?」
キタ「弾は当たってダメージを与えた。でも倒すには至らんかった。そしたら普通はこちらに気づいて襲いかかってくるはずや。それやのに全く動こうとせえへんねん。」
サーシャ「どういう事かしら?」
ウェス「こちらに気付かない程鈍いのか、感知範囲外からの攻撃だった為か、まだ判断できないな。」
キタ「撃たれたフンコロガシも隣に並ぶ他の三機もまるで俺らには無関心な感じや。」
ナック「それならチャンスじゃねーか、どんどん攻撃してみようぜ。」
サーシャ「まだ判断材料が少ないわ。一機ずつ仕留めていくのよ。」
ウェス「解った。」
ウェスの狙撃が間隔をあけて鳴り響く。
キタ「一機ぶち壊したで、そしたら他の三機が輸送車のおる方にズレよったわ。」
ウェス「相変わらずこちらには無関心のようだ。」
キタ「今度は真ん中のフンコロを狙ってみるわ。」
サーシャ「了解。周囲の警戒も怠らないでね。」
続けざまに四発の銃声が聞こえた。
キタ「やっぱり輸送車側に詰め寄りよる。こいつらの狙いは輸送車だけなんとちゃうか?」
ナック「もしくは崖下にいる者を狙っているのかもしれないな。」
キタ「アイテムも手に入れたいから続けて攻撃するで。」
サーシャ「了解。」
攻撃が再開され、四発の銃声の後にショットガンの銃声も加わった。
サーシャ「キタ!貴方敵に接近したの?」
キタ「最初にやった奴の残骸が点滅し始めよったんや、そやけど近寄っても無反応やったで。」
【???パーツ入手】
【???パーツ入手】×2
【???パーツ入手】×1
【???パーツ入手】
キタ「よっしゃ、間に合ったで。大猟大量や。」
ウェス「うん、こちらから見渡す限りは敵の姿は何処にも見当たらない。」
サーシャ「了解、進行を再開するわね。二人共お疲れ様。」
ナック「ウェス、キタ、お疲れ様。それでこちらへは降りられそうか?」
ウェス「いや、こっちは下り勾配の坂になっているからこのまま進めば谷の終点で合流できるよ。」
ナック「解った。じゃあ終点で落ち合おう。」
四人の遣り取りを聞いていると自分のチームワークの無さにゲンナリしてしまう。作戦について俺は一言も発言できていないからだ。はたしてゲームに慣れてくると先ほどの皆の様に、上手く話せて俺も連携が取れる様になるのだろうか?くそ、自信が持てない自分が情けない。
だが気落ちばかりしている訳にはいかない、まだミッションは続いているのだ。渓谷の道幅はとても狭く、輸送車と並走するには無理がある幅しかない。隊列はナックを先頭にサーシャ、輸送車、俺の順に進んでいく。渓谷の半ばに差し掛かった時、ウェスから静止の声がかかる。
ウェス「ナック止まれ!」
ナックは前進を止め周囲を警戒する。
ナック「どうしたウェス?」
ウェス「ちょっと気になることがあって、崖上にずらりと鉄の塊が並べられているんだけど、一箇所だけ鉄球が無い場所があるんだ。これって怪しくないか?」
ナック「確かに怪しいな。その周辺に敵が潜んでいないか探ってくれ。」
キタ「・・・特に異変は見当たらへんな。下の方はどうや?」
ナック「どうやら怪しいのはこちらの方だな。前方に地質の違う場所がある。」
キタ「そっちが本命か、ほな上から覗いてみるわ。」
ナック「微妙な違いだから上からじゃ見分けがつかないだろう。」
ウェス「そんなことないさ、鉄球の無い場所、つまりここの真下が正解って事でしょ?」
ナック「・・・そういう事だな。」
ナックの指示で輸送車を停止させ、俺達は距離をとり怪しい箇所に向けて銃を構える。
サーシャ「ウェス、そこからインパクトバレットで打ち込んでみて。」
ウェス「解った。3・2・1・【インパクトバレット】シュート。」
ウェスの放った衝撃弾が怪しさ満点の箇所へとぶち当たる。その瞬間20m級の巨大バサミが飛び出してきた。
巨大なハサミの下はひょろ長く、蛇の様な体をしていてヌラヌラとヌメっている。・・・まあ、驚いたのは最初だけでハサミの重さに耐えられないのか蛇の身体は真っ直ぐ伸びているものの、ハサミ付きの頭はだらんと垂れ下がり、ズルズルと穴の中に戻ろうとしている。
ナック「完全に奇襲型の敵だな。奇襲に成功すれば一撃死だが、失敗すれば袋叩きにされる可哀想な奴だ。」
サーシャ「気持ち悪いから直ぐに殺って頂戴。」
完全に目を背けるサーシャを余所に、野郎共はハサミヘビを蜂の巣にしましたとさ。
【15ソウル獲得】
【???パーツ入手】×4
収拾作業はキタがしたのだが、サーシャを含む全員に15ソウルが入り、未鑑定アイテムも全員が四個手に入れた。おそらくではあるが大型モンスターを倒せば全員に分配される仕様なのだろうと結論付けされた。




