■ 第34話:崩壊する境界
白い衝撃波が全域を飲み込んだ。
視界が反転する。
上下も左右も消えた。
レイは激しい浮遊感に襲われ、何かへ叩きつけられる。
肺から空気が抜けた。
「……っ、カナ!」
咳き込みながら周囲を見る。
だが景色が違った。
そこは拠点ではない。
灰色の空。
崩壊した都市。
遠くには、空中に浮かぶ巨大な輪状構造物。
静まり返った世界。
風だけが瓦礫を撫でていた。
「ここ……どこだ……」
立ち上がった瞬間、後ろから声がした。
「レイ……」
振り返る。
カナがいた。
だが彼女の表情は青ざめている。
「わたし……知ってる……ここ……」
その言葉に、レイの胸がざわつく。
カナはゆっくり崩壊都市を見上げた。
「ここ、“旧コロニー領域”……」
聞いたことのない名前。
だが空気が違った。
今までの世界とは決定的に。
人の気配がない。
なのに、どこか“本物”だった。
不自然に整えられたコロニーとは違う。
壊れた現実。
その時。
遠くの瓦礫の上に、人影が現れた。
黒い外套。
銀色の義眼。
そして背中には、管理者の紋章を傷だらけに削った痕。
男は静かに笑った。
「……生きてたか。“観測補助個体”」
カナの顔色が変わる。
「あなた……まさか……」
男はゆっくり近づく。
「久しぶりだな、カナ」
レイは咄嗟に前へ出た。
敵か味方か分からない。
だが男の目は、どこか異様だった。
壊れている。
それなのに、強烈な意思だけが燃えていた。
男はレイを見つめ、小さく呟く。
「なるほど。今回の“鍵”はお前か」
その瞬間、レイの胸の奥で、またあの激痛が走った。




