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プリンとキス  作者: 雲母あお


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13/43

13.おかんってなんだよ

アパートに戻ると、ゼミの名簿を見てみた。

総勢11人。男7人、女4人だ。

確かに、今日昼休みに初めて話したクラスメート倉島達也の名前もあった。


「あいつ野球部だったのか。ポジションとか聞けばもう少し話しできたかな。」


名簿の次にあった今後の日程表に目をやる。

「やば、明日ゼミの初顔合わせじゃん。すっかり忘れてた。ゼミって明日からだったんだ…。」

初顔合わせって、何着て行こう。

いや何言ってんだ。普通でいいんだよ、普通で。


大教室や小クラスだって50人は人がいて、先生対大勢の学生という図だけれど、ゼミは少人数制で先生とも一対一に近い。11人、もしくは2~3人のかたまりになって、グループ学習などという苦痛の課題も出るかもしれない。なるようにしかならないし、一人になっても仕方ない。だけれど、考えるだけで苦痛だ…。

だいたい、2で割って1余る人数にするなよな。

2人1組ってなったら、絶対1人になるじゃん。


はあ。


もう一度名簿を見る。倉島達也…。

確かに、知ってる名前が書かれているだけで、少し安心するな。

もう一度、ゼミの予定表を眺めたのだった。




「おーい、戸ノ岡!」

廊下の向こうから、倉島が走ってくる。

はあはあ息を切らして俺の前で止まった。

「戸ノ岡、一緒にゼミ行こうぜ。」

「ああ。」

息を整えながら倉島が先に歩き出した。

「教室304だよな?」

「ああ。しかし、そんなに息を切らしてどこから走ってきたんだよ。」

まだ肩を上げ下げしながら、隣を歩いている。

「部室。」

「部室?どこにあるんだ?」

「校庭の端っこ。」

「アバウトな…。まあ結構遠くから走ってきたんだな。」

「そうだよ!一人で行くの嫌で。」

「そうか。ありがとう。俺も不安だったから。」

倉島の目がびっくりしてそれ以上開かないくらい開いている。

「なんだ?おかしなこと言ったか?」

あれ?なんだかかのこさんと同じようなことを言ってしまった。俺の声に我に返って、

「いや。俺も不安だったから、お前がいてよかったよ。」

そういって、にかっと笑った。




「ここだな。」

倉島が先にドアノブに手をかけ、開いた。教室の中には女子二人と男子三人がいて、お互いに自己紹介をしていた。

「こんにちは。」

俺たちは教室の中に入った。俺が扉を閉める。まったく、倉島は飲んだら飲みっぱなし、開けたら開けっぱなしかよ。

「はじめまして。」

そういって倉島は輪の中に入っていく。俺もそれに続いた。

「あと、4人だね。全員揃ったら自己紹介しよう。何度もめんどいよな?」

先に来ていた男子3人のうちの一人がそういうと、みんながうなずく。先に来ていた5人が一番奥の席にかたまって座っていたので、俺たちは、一番入り口に近い空いている席に並んで座った。5分もしないうちに残りの4人もやってきた。


授業開始のベルが鳴る。

ガラガラと音を立ててドアが開いた。築うん十年の古い建物だから建付けが悪くなっているのだろう。初めて来た教室だが、木製の引き戸というのが、なんともレトロでいい感じだ。教室に入ってきた教授は、部屋の一番奥の席の前に立ち、挨拶を始めた。

「始めまして。神林です。これから君たちと2年間ともに切磋琢磨し、私も含め成長していければと思っています。よろしく。それでは、簡単に自己紹介を。」

先生からみて左側に座っている学生に目をやると、

「君から時計回りにお願いできますか。」

と言った。

君といわれた学生は、椅子から立ちあがると、一礼した。

「初めまして。田中誠一です。新潟からきました。これからよろしくお願いします。」

また一礼して席に着いた。それから順に立ちあがり、挨拶をしていく。

「倉島です。大学のそばに住んでいます。近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。」

小さな笑いがこぼれた。

倉島は、にかっと笑うと、俺を見る。手で背中を軽くポンと叩き、小さくウィンクしてきた。

「…」

何とも言えず、立ちあがると、

「戸ノ岡です。よろしくお願いいたします。」

名前だけいうと、すっと席についた。

俺の左隣の学生が立ちあがる。

「深見です。よろしく。」

それから、先生のところまで、簡単な挨拶に変わった。


気にする俺は、もっと何か言った方がよかったのか?

と小さな悩みを抱えつつ、ゼミが終わった。

はあっとため息をついて机に頭を預けると、

「さすが、戸ノ岡!」

と、肩を叩かれてにかっと笑った倉島をちらっと横目で見て、「なんだよ」と思いつつ、なんだか気が楽になっていくのを感じた。

「倉島がいてよかったよ。ありがとう。」

顔を伏せ椅子に座ったまま、素直にお礼を言う。

まじ疲れた…。

すると、頭をぽんぽんとする大きな手が…。

見上げると、俺の横に立っていた倉島が、

「お前可愛いな。」

といって笑顔を向けた…というかなんだその思い切り可笑しそうに笑う顔は?

「!?」

一瞬、なに気持ち悪いこと言ってるんだ、こいつ!?と思ったが、続きを聞いてガクッとした。

「なんか、親戚の子供みたい。そいつ人見知りで、おばさんとうちにくると、緊張のあまり疲れて寝ちゃうんだよ。その子を見ているみたいだ。大丈夫か?」

親戚の子供…

「その子何歳?」

「ええっと、今年小学生になったって言ってたかな?」

うーんと思い出しながら言った。

「俺、小学一年生と一緒…」

がっくりした俺を見て、

「あはは!まあ、なんだ、そうだな、お前は純粋ってことじゃねえか?」

とか言って、思い切り笑いながら倉島は言った。

それってどういう意味だよ?

褒めているようで褒めていないような…。

ただ、不思議と倉島からは、人を馬鹿にするような雰囲気はなく、純粋に思ったことをいっているように思えて、悪い気はしなかった。

「ありがとう。でも倉島も純粋だよな。」

そういって席を立つと、

「昼食おうぜ。腹減った。」

と、自然と口をついていた。倉島はうれしそうに、

「学食でいいか?」

「ああ。」

学食へ向かって歩き出した。

お前、自分で飲んだ茶くらい片付けろよとか言い合いしながら。

「それよく母さんに言われる。」

「だろうな。」

当然だ。こいつ変な奴なのに、親は普通だ。というか、注意されているなら直せよ。

心の中でつぶやいていると、ふと視線に気づいた。

倉島がまじまじと俺をみている。

「なんだよ?」

「いや、なんかお前、おかんみたいだなあって思って。」

「おかん!?」

内心ショックを受けるのであった。



おかんってなんだよ…。



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