98.昔ながらの大晦日
「この家もだめという事か?」
「無理です。負債が大きすぎます。」
「親分は助けてくれんのか?」
「その言い方はやめる様に言われているはずです。」
海野拓哉、美月と心晴の父親は追い詰められていた。
離婚協議で揉めていた妻から慰謝料、財産分与、養育費を請求された。
とんでもない、出て行った女に払う金なんてない。
まだ籍は入れていないが若い妻との生活がある。
母親が死んだときには悲しいという思いより、遺産が入り楽になると喜んだ。
それ程追い詰められていた。
その母親の遺言書に財産を自分の孫(海月と心晴)に渡せ
と書いてあった時には焦った。
慌てて連れ戻そうと探し回り、強引に連れて来ようとしたが拒否された。
その後から話がおかしくなった。
最初慰謝料は払わないと離婚交渉してもらっていた。
妻の父親、ヤバい筋に法律事務所を紹介してもらい
ほとんど金を払わず新しい妻と結婚できるはずだった。
『まずいです。ハイエナが出てきました。しかも女豹が担当してます。』
法律事務所の担当弁が焦ってやってきた。
『何を訳の分からん、ハイエナなんか豹なんかどっちや?』
最初冗談かと思ったが、たちの悪い法律事務所らしい。
「絶対勝てません。『むしろ敗北を知りたい』言ってる連中です。」
「何を弱気な。親分に言うたらええやん。」
「もう逃げてます。裁判所や桜田門と正面衝突するアホはいません。」
あっという間やった。
型にはめるって言い方は知ってたが本当にそんな感じ。
こっちの法律事務所も頑張ったらしい。
支払い能力がない、ここまでの養育費は払えない、言うとった。
ちょっとカッコ悪いと思ったけど支払いが減るならええやろ。
そのうち、美容室の帳簿をいじってたのがバレた。
黒字やないと金が借りられん。
ちょっと位誤魔化すやろ?
それを相手の法律事務所の連中が見つけよった。
あっという間に店が潰れた、なんか送検されるらしい。
母の持ってた財産が次々抑えられていく。
俺名義で貯金や債券があったのを処分してここまできたが
今はもうない。
「親分が大晦日や、清算しろと言ってます。」
「無い物は払えんで。」
「不動産の査定、ここにありますが、むしろ向うの金額が高いです。
全部放り投げて遺留分をもらいましょう」
「半分になってまうんか。」
「そこから、慰謝料やらなんやら引かれます。」
「腹立つ、泉州のオバハンのクセに金や親権やうるさいんじゃ。」
「これから書類出しますので、署名捺印して下さい。」
なんかこの弁、態度悪なったな。




