89.オネショータ再び
射沢家2階 ショータの部屋
「何で僕の部屋でお酒飲むの?」
「自分の部屋だと資料が沢山あって酔えないの!」
たまにとはいえ、お姉ちゃんはショータの部屋に乱入する事がある。
ショータだって16歳の健康な男の子、見られたく無い物だってある。
隠してある所をチラッとみている。
超能力持ちのショータは見た事がバレないと思っているが
診察室で百戦錬磨のお姉ちゃんは、『棚のあの位置、変わっていない。』
と視線をたどっていた。
ショータの留守にこっそり侵入し、人気グラドルの写真集と怪しいマンガを
確認し『普通。つまらん』と安心したのは過保護という物である。
「あー、カッコ悪い。涙の別れみたいな話したのに、いつまでも出て行けないよ。」
「応援の先生まだ決まらないの?」
「どこも人手不足でね。それに花粉症の季節は大変なんだよ。」
「相手は大丈夫なの?」
「大丈夫だけど、私も彼も、それ以上に向こうのご両親が子供が欲しいみたい。」
「大変だね。なんか食べる?下から持って来ようか?」
「もっと真剣に心配しろ! 食べて飲むと際限なくなるから要らない。」
射沢家でお酒を飲むのは彼女だけだったりする、たばこは誰も吸わない。
祖父はドクターストップ、母は緊急呼び出しに備え飲まないだけだが。
「来年4月半ばに応援が来てくれる。これから妊娠しなければいけないので
飲めるのも今のうちだな。結婚前に仕込もうかという話もしたし」
「僕も一応思春期男子なんで、そういう話はしないで欲しい。」
「興奮しちゃった?ショータ意外とムッツリだもんね。」
「もう、結構悩んでるんだから。」
酒を飲んでる方より顔が赤くなっている。
ムッツリは認めるのね。
「野球は最近どう?痛みは消えた?」
「骨が固まってきて、痛みは出なくなった。無茶しない限り大丈夫だと思う。
野球部はびっくりする位変わった。僕の身長位伸びた。」
中3春から10cm以上伸びたので、数か月ショータを見なかった人は驚く。
元々ひょろっとした感じだったが、更に長くなった足が、がっしりしてきて
印象が全然変わって来た。
「何言ってるか不明だけど、野球の事は詳しく聞いても判らないから良いや。
でも、吃音せず冗談も言えるようになった。よく頑張ったね。」
「焦るとダメだけど、普段もよく言葉をカムし。でも有難う。もう大丈夫」
「で、恋愛は?」
「お姉ちゃんのおかげ。上手く行ってると思う。」
「そこは断言しないんだ。」
「外で2人きりのデートした事ない。別に不満じゃないけど。」
「どういう意味?集団デートとかしてるの?」
「美月の妹、心晴ちゃんが毎回着いてくるんだよね。懐いてくれて可愛いけど。」
ショータ犬猫も大好きで他所の奴に懐かれてたもんな。
ババアが動物アレルギーのせいで飼えないが。
「それでキスもできなくて寂しいとか?」
「それじゃなく、相手の目をしっかり見て、二人の事話したい。」
あれ、真面目な気持ちなんだ。
「デートだけじゃなくメールで画像や絵も送り合ってるけど
目を合わせるのが何か恥ずかしくて、合わせまま話したことがない。
あんまり情けないから自己嫌悪に陥っているんだ。」
「それは彼女に二人きりで会いたいってちゃんと伝える他ないな。」
「うん、今度伝える。心晴ちゃん大丈夫かな?」
グラス一杯ウイスキーを飲んだお姉ちゃんは自分の部屋に引き上げて行った。




