87.暮れは元気にご挨拶
12月突入のタマチカ野球部女子ロッカールーム
着替えながらの雑談は彼女たちの息抜き、癒しタイムである。
「ジャージやっぱりダサいよね。」
「皆で選んだのだけど、所詮ジャージだもんね。」
愚痴を言い合い、持ち込んだお菓子を食べ短い時間を過ごす。
「師走とか言うけど、私たちも忙しいよね。選手でやってる人凄くない?」
「選手になってる人って、生活時間どうしてるの?美月」
「なんで私に聞くんや。」
野球の練習は平日なら1日2時間を超える事はない。
朝練すれば夕方の練習を減らす。もっと時間が短い日もある。
前主将がメニューを考え監督が承認している。強豪校に笑われる短時間である。
でも短時間集中をモットーにして練習は厳しい。
学校単独で新しく作るよりはと、民間のトレーニングジムと契約しているが
そのジム関係者が驚くほど真面目にやる。
練習時間はマネージャー達も一緒だ。ジムで男の子が筋肉を盗み見しているが
記録する仕事もあるんだよ。
彼女達は食事管理も、野球の課題も出されて、学業の遅れも見せない選手は凄い。
よくやっていると、サポートしてあげる事は嫌ではなかった。
(他に男子で背番号着けていても実質マネージャーもそういう心理状態だった)
彼女たちの通う学校は世間的には旧帝大、医学部、官僚のイメージがある。
長時間勉強してそうなイメージがあるが一定レベルを保っていれば、
授業時間はむしろ短い。理解しているのが当然としてどんどん進むから。
ついて行けないと補講の嵐か、志望校のランクを下げるよう指導される。
私大中位を狙う五十嵐や地方国立大を狙う丸山は落ちこぼれ扱いである。
よく、やるよ全くと思っていた。
「ショータは模試組やから、参考にならへんよ? アホのくせに勉強はできるねん。」
美月がいつも通り嬉しそうに返している。
模試組とは、入学直後の1年生でも大学入手模試を受けさせられる生徒の事だ。
成績上位で、無駄な事を教えるよりそちらに特化させる。
1クラスだけあり、野球部ではショータと礼華が所属していた。
「宇宙人だものね。あのクラスの人達。」
「人の顔を見ながらサラッと悪口を言わないように。」
礼華が返事している。
「入試の話の時だけ少し後悔してる、楽できたかなって。」
礼華と美月以外の出身中学からは系列の高校、大学へ進学できる。
「今さら何を。あの大学なら楽に合格できるでしょ?」
「それをやったら、バカみたい。高校入試も地獄だったんだから。」
「うちの親なんて、病院を継いでくれる気になったって大喜びだったけど
この成績を維持できるか自信ないなー。入試が不安。」
美緒の家は眼科の開業医だった。
「そういうたら、医者の子多いなこの学校。」
「そうでもないんじゃない?親が医者なのはこの中では汐里と美緒だけだし
男子でも野球部ではショータと安西君だけでしょ。」
「なんでショータは呼び捨てやのに、安西君だけは君づけなん?」
「あれは、存在が安西君でしょ?安西君以外ない。」
「うん、そう思う。」
割とパっパ着替えながら口だけは止まらないいつもの会話だった。
終わると帰宅方向の同じ友人に別れ
「また明日!」と挨拶する。彼女たちの青春の1コマだった。
秘密)思春期の男の子がったら喜びそうな会話になるけど
それが男子に漏れる事はない。
「何でそんな下着付けてるの?」
「たまには冒険したいじゃない。」
「そんな過激なん誰にみせるんや?」
「特別に教えてやろう。今の所全く予定はない(泣」