82.美月は絶対美月です。
美月の視点
礼華ママが帰った後オカンが確認してきた。
「離婚届の説明で聞いたと思うけど、オカンは離婚と同時に姓が変わる。
美月と心晴はオカンの姓でええな?」
「高橋美月、高橋心晴やな。心晴もええよな。」
「オカンと美月と一緒やったら良いよ。」
「元のマンションもいらんな?」
「オカンが要らんなら別に要らん。心晴は?」
心晴が首を振った。
元のマンションは祖母が買い、美容室がそれを借りて家賃を払っていた。
節税対策だと聞いた。
良い思い出がない。怒鳴り声が響き、物が飛ぶ家。
近所がまともに付き合ってくれるはずがなく、私は友達が少なかった。
心晴も同じだろう。
「あと、美月の漢字、本当に変えるんか?」
「絶対変えて。」
「海に月ってそんな変かな?一生懸命考えたんやけど。」
「くらげ、って読むねん!」
絶対変える。小学生の時『うんこくらげ』と呼んだ連中は許さん。
それに『美しい月』言うてボーとした男まで居るんやぞ。
絶対美月!
「2年以上使っているのが立証できるからすぐ変えられるって。
明日頼んどく。」
「本人に早よ言ってんか。」
オカンがため息をついている。
「どうしたん?」
「あの人、借金あるから遺産の土地、全部売る事になるみたい。
結婚前ようけ財産あるって言ってたのに。実家もあかんのかな。」
最近似たような話を聞いた覚えが。
「ショータもあんなになるのかな?」
心配になってきた。想像できひんけど、先の事は、な。
「全然違うタイプやけどな。あの人は自信過剰で
何でも自分の言う通りやないと気に入らん人やけど
ショータ君は尻に敷かれても喜んでるやん。」
誰が尻に、尻に敷いとるけど仕方ないやん。
心晴まで
「ショータは美月の言う事なんでもきくもんな。」
言いよる。周りからそんな風に見られてるの?
「小学校の時から優しかったって礼華が言ってた。大丈夫やと思う。」
私が言うとオカンが変な目をする。
「優しいんか。ふーん。」
心晴まで笑ってる。もう知らん。
最初にショータにおんぶしてもらう権利譲ったのに。
誕生日デートの帰り、心晴が眠いと言い出しショータに
おんぶしてもらって本当に眠った時には驚いた。
心晴は怖がりで、オカンか私が一緒でないと外出しない。
小学校と学童保育ではかろうじて頑張れるので、そこまで
送り迎えしなければならない。
人通りが多い場所では怖がって眠るどころではない。
なのにショータの背中で寝息を立てていた。
驚いて、ちょっとだけショータと心晴に嫉妬した。
「晩御飯食べに行こか。」
オカンが言い出す。
「ゴリゴリうどん。」
またそれか。
「もう少し良い物食べたい。」
私が言うと
「実際にお金が入って来るのはまだ先や。
生活は変えへんで。」
オカンの一言
「お金来たら毎日ケーキ食べられる?」
心晴がオカンに聞く。
「毎日そんな食べたらデブが進んでまうから食べたらあかん。」
オカン、私の方見て言ったやろ。




