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エスパー投手は彼女に夢中(甲子園に行くぞー)  作者: 駄犬
大騒ぎ野球チーム誕生
76/195

76.教えたい事、教えられない事(ショータは金欠)

射沢春香視点

 やれやれ、難しいぞ。

 この可愛いバカが舞い上がっておかしくなっている。

 静めないと。


「ショータが彼女の欲しがる物がわからなくて、高校生が欲しがりそうな物を

 調べたのは正しいよ。

 でも、それ貰って嬉しい、だよね。

 だったら少し高くて、買えないけど欲しい物を言うよね。」

「そう思う。」

「ショータがそれをプレゼントしたら、その子喜ぶとは思うよ。

 でもね、いきなりはダメ。まだ早すぎる。交際1カ月でしょ?

 びっくりして引いちゃうよ。自分が高いプレゼント貰ったらって考えた?」

 ショータはすぐ理解したみたいだ。

「うん、重いよね。なんか、抱きつかれているというか、変だよね。」

「確か学校はバイト禁止だよね?みんなお小遣いないよ。

 無理には無理で返さないといけない。相手の子がショータが好きだったら

 大変な思いをさせなきゃいけない。ショータお金あるの?」


「デート代捻出で、自販機禁止、コンビニ禁止している。」

 何か可愛いな。

「三べん回ってワンって言って口で受けるなら千円あげるよ。

 それとも貸そうか、お年玉で倍返しだ、どうよ?」

「やめて、本当にしてしまいそうだ。」

 ショータ涙目だな。ちとイジメ過ぎたか。

 お義姉さんのポイント稼ぎに少し補給させてあげよう。

 ショータが甘ちゃんなのは周囲が甘々なせいかもしれない。

 もう少し教えてあげよう。

「相手の家に上げてもらって、ご家族と話したんだろ?」

「うん。彼女の妹がどうしても会いたいって言ってくれたんだ。」

「タクシーの話とか、お金の話をしたの彼女?」

「美月のお母さん、お姉ちゃんの事知ってたよ。髪セットしてるって。」

  ?あの美容師さんの娘か。なら親は大丈夫だ。

 家族に合わせたという事は相手の子もショータに惚れている。

 見せて確認してもらい、褒めてもらい、自慢したいという奴だ。

 相手の親は、少し先走ってショータと娘の事を考えているだけ。

 どこまで、教えてやろうかな? 自分で考えさせないと覚えないし。

「お金の事は難しいんだ。特にショータも相手もお小遣いをもらっている子供だ。」

 子供、の所を強調した。ショータは反発する子じゃないから大丈夫。

「お金の事、使い方とかには家によって違いがあるよね?

 相手のお母さんはどんな家の子供か知りたかったんだよ。

 あんまり違うと自分の子供が大変だからね。」

  

「だいぶわかったけど、またプレゼント考えないといけない。どうしよう」

「誕生日デートはショータの奢りなんでしょ?だったら可愛いバースデーカードで

 良いと思うな? 私だったら残る小さい物、キーホルダーとかのクダラナイので

 クスッとできるようなのが良いな。」

 ちょっと助けすぎかな?

 ショータ顔が明るくなっている。

 お前は話すのが苦手で、友達、ましてや彼女なんかできなかったもんな。

 嬉しくて全力で『好き、好き』ってなるのはわかるよ。

 相手も嫌な気持ちはしないだろうけど、行き過ぎはダメ。

順番と程度は間違えるなよ。


射沢晴彦(監督、祖父)の視点

 この歳で野球の監督をやれるとは思えなかった。

 孫が技術を教えてくれる人がいないと悩んでいるのを見て

 教えてやれる事は教えてやろうと考えた。

 とんでもなかった、教わる事ばかりだった。

 指導者として野球に携わった事はこれまで無い。

 髪は自由、先輩後輩の垣根はない、練習時間は制限がある。

 どうしようも無いチームに基本的な事だけ教えようと思った。

 自分のいた高校のチームが見れば低レベルなチームに見えるだろう。

 でもこのチームは素晴らしい。

 自分の出来る事をやっている、それが他人のサポートでも楽しみ

 お互い高めあっている。仲間を支える事を誇りに思っている。

 野球部としては弱小も良い所だ。

 孫の年次には良い選手がいるが学校の性質からいって今後も来る

 可能性は低い。

 勝ち進むのは無理だろう。

 でも、弱くても良いじゃないか、と思わせてくれる奴らだ。

 子供に何か教えられた気分だ。


 孫が心配だ。野球は経験不足と練習不足なだけだ、教えてやれる。

 マネージャーの一人と付き合っているのは知っている。

 隠しているつもりらしいが周囲にバレバレだ。

 妻には言うつもりはない。娘が阻止するとは思うが干渉するだろう。

 『善意だからたちが悪い』野球場で見たどんな好選手より鋭い視線で

 娘は妻と俺を睨んで言った。

 孫が吃音になったった理由はわからない。

 両親が嫁の実家病院の経営立て直しで身動きが出来なくなり、

 生後1年から我が家で育つ事になった。

 俺も当時は現役だったので妻のワンオペになる。

 大丈夫かと思ったが妻は喜び、子育てしていた。

 上手く行っていると思っていた。

 『はーい』『の~』しか言わない子だとは思ったが

 某国民的アニメの幼児みたいな話し方だと思っていた。

 吃音に気がついたのは閑が出来てキャッチボールをしようとした時だ。

 愕然としている俺に妻は必ず自分が直すからと口止めした。

 俺はゴムまりでキャッチボールをして、ニコニコ笑っている孫を見るのが

 辛かった。

 娘にバレた時はむしろホッとしたかもしれない。

 孫とキャッチボールをしていて気がついた。

 才能にあふれていた。ボールを体全体で投げる事をすぐ理解した。

 俺の甲子園のビデオを見せたら喜んで見ていた。

 少年野球の強豪チームに入れてしまったのは間違いだったと思う。

 まともな友達が出来なかった。

 孫への負債がまた増えた。


 翔太、お前が付き合っているその娘、いつも笑ってるけど

 寂しいのを笑って、自分も周囲もだましているだけだぞ。

 わかっているか。

 お前もそうだから心でわかるのか?

 大事にしてやれよ。こっちは俺には教えられない。

 

 

 


 

 








 


 




 



 

 




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