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エスパー投手は彼女に夢中(甲子園に行くぞー)  作者: 駄犬
大騒ぎ野球チーム誕生
71/192

71.美月、顔、顔

タマチカのスタンドは大騒ぎだった。

4回まで10三振!あり得ない。

バットに当たっても力ないフライがファールゾーンに上がるだけ。

気が早い者はブロック抜けした後の日程を確認し始めていた。


普通に投げても球が小さく暴れる、回転の良い投手だったが、

この試合から2シームと『ともかく深く握る球』を投げていた。

簡単そうに見えるが、まだコントロールできておらず、ストライクにならない。

捕手の五十嵐は捕逸を繰り返し、決め球には使えないとバレた、が

全くタイミングの合わない空振りを見てタマチカ側スタンドは勝利を確信していた。

相手チームが苛立っているのも見て取れた。


5回先頭打者の向いた方と逆方向へボテボテのゴロが内野安打になった時、

スタンドにため息があふれた。

秋季大会でショータが打たれた初安打であった。

だが次の2人を連続三振に仕留めるとスタンドは別の興味を持ち

ショータに見惚れた。ここまで12三振1四球1安打いくつ三振をとるだろう。


美月は心の中で周りに自慢していた。


二試合連続ノーヒットで勝った帰り、学食で一緒に飲み物を飲んだ。

「でも。能力使ったんやろ?」というと「自慢できないね。」とショータは笑った。

二人で飲み物を片付け終わった後、手をショータの方へ差しだし目を見た。

物凄いキョドリ方だったな。美月は笑いをこらえるのに必死だった。

意味を察したショータがそっと手を握ってきた。

見た目の印象と違う、タコとマメだらけの手だった。


スタンドで思い出し笑いをしながら美月は思った。

本当にドンクサなアホ。あそこまでしてやらないと理解できんか?

話す度に優しい奴だと思う、可愛らしい性格だ。

周りで勝手に名前を呼んでる女の子に思う。

凄いやろ、私の彼氏やぞ。私だけのやぞ。

知らんやろ、無茶苦茶優しんやぞ。

優しすぎて頼りないけど、勉強できて

野球の練習物凄くやるんやぞ。だれも文句言えん位やぞ。


マウンドのショータは素直に美しかった。

投球動作を見るだけで観客は見とれていた。

彼女の幸せは続くはずだった。


音はスタンドまでは聞こえてこなかった。

ショータの華奢に見える身体は相手選手に

跳ね飛ばされたように見えた。

相手走者も倒れた。

審判が試合を止め、集まり、何やら話し合いドクターを呼んだ。

担架が出て来るまで美月は必死にグラウンドを見ていたが

そこから何も見えなくなった。

座り込み、動けなくなっていた。

横に居た同じマネージャーの汐里は最初から美月を気遣ってくれていた。

ずっと声をかけていてくれた。


お情けで付き合ってやってる、マヌケな彼氏ではないか。

今は考えてないけど代りはいくらでもいる、と言ってやったら

シュンとして可哀そうになる奴ではないか。

何をそんなに心配する事があるのか。


美月は駆け出したいと思ったが、体が動かない事に気がついた。

周囲がベンチに居る礼華に連絡をとろうとしている。

横に座った汐里が肩を抱いてくれた。

「大丈夫、大丈夫」汐里はずっと言っている。

何が大丈夫なのかわからへん。


治療中の無限に思える時間の後、ショータの交代が告げられた。

汐里がスマホを見て頷くと、美月の腕を引っ張った。

「どうしたん。」

「ショータ、脳震盪で病院に行って検査だって。」

「えっ」固まってしまう美月

「意識は戻った、まだやるって言ってたけど、ドクターストップ」

「そう、なんや。」

「礼華の伝言、出口まで美月を連れていけ。見る?」

汐里は礼華にスマホを見せてくる。

いつの間にか同級生達が周りに集まっていた。

男子生徒も遠巻に見ている。

「急いで、、て顔。」汐里が慌てた。

 美月は肌質を気にする母親のせいでほぼスッピンだが顔が?

「目の周り冷やしながら行こう、ほら」

数人の女性徒が立ち上がり、男子たちが道を空ける。


顔面蒼白で、出入り口に向かった彼女達は案外元気そうに

歩いているショータを見て少しイラっとした。





 







 





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