33.名門は分析する。(魔球? なにそれ)
W実業合宿所
監督、コーチ、ベンチ入りメンバー、スコアラーの学生達によるミーティング
「このように多摩近の下位打線は全く脅威になりません。」
戦力分析をした学生が締めくくり、分析報告が終わる。
選手としては使えなかった選手だが、コーチとともにスコアラーをやらせている。
彼の将来にきっと役立つだろう。部活動は教育活動だ。
「内野守備は一塁に大穴があり、外野は難しい打球が捕れないため守備範囲が狭い。」
「打撃はまともにヒットを打っているのは1番から4番までだけ、その下はからっきし。」
「よく、これで勝ち上がってきましたね。まあ前の六王子高校戦は僥倖みたいな勝ち方ですけど。」
選手たちが口々に言う。
「問題は5試合で自責点2のこの投手か。」
皆の目が大型画像の投手に注がれる。
昨日まで相手は六王子高校、思いっきり振ってくる打撃が特徴のあのチームと考えていた。
多摩近の対策なんて考えていなかった。
いささかドロナワだが緊急ミーティングだ。
「確かに良い投手だが六王子なら打ち込むと思ったんだけどな。」
「エラー絡みで9回に2失点か。7回以降毎回走者、うちのチームなら7回に崩しているな。」
「六王子はエラー絡みの失点が痛かっただけだしな。」
「しかし、一年生でエースで四番か、内野は一塁手除き全員一年生。そりゃノーマークだ。」
フリーミーティングだ。各自意見を言い合う。
「ほとんどストレートなんだろ?」スコアラーの学生に質問が飛ぶ。
「集計では86%がストレートです。鋭いカーブも持っていますが、コントロールできていません。
他はチェンジアップとスローカーブを1試合に何回か投げますが、ほぼ見せ球です。」
「データーによるとその直球もコントロールに難ありになっているけど?」
「はい、キャッチャーの構えから見ても結構アバウトです。
それとここ2試合は後半になると真ん中に集まる傾向が顕著です。」
「よくそれで打たれないな?」
「対戦した相手に聞いて回ったんですが、ベンチで見ているよりボールが来て驚くそうです。
調査に応じてくれたほとんどの打者が 腕の出て来る所が見にくいと回答しています。」
「注目の選手だもんな。新聞に載ってるの見たか? 消える魔球だってよ。」
「ああ、見た。腕が消えてからボールが急に出て来るだっけ?」
「そんな事があるわけがない。まあそれ位見難いフォームという事だろう。油断は禁物だ。」
その後も彼らは、相手の特徴について語り合い把握に努めた。
侮るわけではないが負けようのない相手だ。
短めのミーティングとなり彼らはそれぞれの日課に戻った。




