↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/154

92.タコ討伐、頭をグリン・・・

 マーシェリンに舵取りを任せて、前方を警戒してもらう。スクリューを回しとけば勝手に進んでいくけど、万一鯨みたいなのが泳いでいるとも限らない。進行方向の警戒は重要だよね。

 その間に、デッキに(とも)(いかり)を一つ上げて形状を変化させる。長さは2間ほどのボートのような形状の板、その下側におもり、後ろ側にエビぞった形の針を2本。

 『たこてんや』だ。タコを釣りに行く時の必須アイテム。これにカニの疑似餌を付けるんだけど、さっきの牙を切り落とした『ユニコーンフィッシュ』を板の上に固定する。

 餌は生きてるカニがいいんだけど、巨大タコらしいからもう餌は小さなカニを括り付けた程度ではもの足りなくなっているだろう。まわりに見える魚介類全てを捕食していると思う。タコってガッツリ肉食系だからね。

 上空からは騎士隊が興味津々で眺めてる。まあ、騎士達も海中の魔獣には手こずっているみたいだし、後学のためにも俺のやり方を見ておきたいんだろうね。でも、たこてんやはタコ専用の仕掛けだからね。タコしか釣れないよ。

 海中から『ユニコーンフィッシュ』が襲ってきたあたりに近づいた。多分このあたりだと思う。目標物があるわけではないから見当を付けるしかない。

 今欲しい物は、と聞かれたら、迷わずGPS付きソナーと答えるね。あれの便利さは使った人でないと絶対わからないよね。GPSがあれば画面上に船が進んだ航路が記されて迷う事無く目的地へ到達できる。港への帰港も全く迷わない・・・・・  無い物ねだりをしてもしょうがないか。

 そもそも、ソナーだけなら単独で使用ができるけどGPSになると人工衛星からの電波が無ければ機能しない。人工衛星を打ち上げたくてもこの世界は『原初の女神』が創造した閉鎖空間なんだから、惑星のように球状にもなっていない。ガリレオ・ガリレイが主張した地動説とは相反する天動説の世界なのだ。だからといってゾウやカメが地面を支えているわけではない・・・・・ と思う。

 要するに引力と遠心力の絶妙なバランスで衛星軌道上に浮かぶ人工衛星は、この世界では浮かんでいられなくて墜落するというわけだ。

 あれ? 魔法がありふれた世界だし、GPS魔法なんてのもできるとか?・・・・・

 う~~~~ん、ダメかな? GPSのシステムを魔法化するイメージが全く浮かばない。

 もう一度言おう。無い物ねだりをしてもしょうがない。



 スクリューの回転を止め潮の流れに船をまかせる。って潮の流れがあるのか? 船が動かないようだったらスクリューを回そう。

 たこてんやを海に放り込みワイヤーを繰り出し沈めていく。どのくらいの深さがあるんだろう。

 緩やかな潮の流れがあるようだ。海中に沈めていくたこてんやのワイヤーが斜めに沈んで行く。『原初の女神』の創造の世界で潮流まで再現しているとは、『原初の女神』芸が細かすぎっ!!


 海底に到達した感覚が伝わってきた。斜めに沈んだと言っても、船も一緒に潮に流されてたからほとんど真下に沈んだようなもんだろう。ワイヤーを出した長さがこのあたりの深さだと考えればいいか。感覚としては800mぐらいだろうか。

 まだワイヤーを出しながら、スクリューを回し微速前進。ある程度ワイヤーを出したところで船を進めたままワイヤーを止めれば、たこてんやが海底をズルズルと引っ張られ生物が動いているように見えるだろう。海底は砂地のようで根掛かりがなくて助かった。

 たこてんやもワイヤーも俺の魔力で形成しているから、俺が操作している触手と同じような感覚がある。


 半刻ほど海底を探っているが、お目当てのものは一向にかかる気配がない。どこにいるのかわからないタコを探して彷徨っているんだからね、そう簡単に見つかるわけもないか。

 突然たこてんやの下の地面が・・・・・  消えた? ここから深くなっているのか、沈んでいる様子が伝わってくる。

 沈み込むたこてんやのまわりにある濃密な魔力。これは、魔力の澱みか。この澱みを解消してやらないと、また新たなる魔獣が発生することになる。


 底に着いた。それほど深くはなかったな。

 ガンッとワイヤーが引っ張られた。タコが掛かったかっ・・・・・  根掛かりだ。魔力の澱みの中に引っ掛かりがあった。

 でも、魔力の澱みを見つけられたのは僥倖だ。この場所をわかるようにしておかないといけないな。

()(さき)(いかり)を一つガラガラと降ろしていく。鎖を繰り出したこてんやが引っ掛かっている深みに向けて沈めていく。

 たこてんやの引っ掛かっている位置の近くに錨が到達した。この錨が抜けないように地中にしっかり突き刺しておく。

 船から伸びている鎖の水面あたりに魔力を放出、浮標(ブイ)を形創る。海中の長い鎖の重量に負けないように、大きめの浮標を創った。

 次は『魔力固定』だ。鎖の先端、錨が地中に突き刺さっているその先端に『魔力固定』の魔法円を展開、そして発動。発動させた魔法円に鎖経由で魔力を供給しながら、鎖を伝って海面まで移動すれば、錨から浮標までが固定される。これで魔力の澱みの位置がすぐにわかるぞ。

 そしたら、たこてんやを外さないと。ワイヤー伝いに魔力を送って、たこてんやから触手を出す。引っ掛かっている物は、岩みたいな感じだな。

 簡単に外れて、微速前進を再開する。


 今まで沖に向かっていたけど、もっと浅いところにいるのかもしれないな。こんな深いところじゃ、餌もあまり見つからないのかもしれないし。


 「マーシェリン、右へ5度転針、大きくまわって陸地に向かって直進。」

 「かしこまりました。」


 ケルベロスが舞い降りてきた。アステリオスが飛び下りてくる。


 「ショウ、あれは何が浮いているんだ。何かの印なのか。」

 「浮標(ブイ)だよ。あの下に魔力の澱みがあったんだ。あの澱みをなんとかしないと、他にも魔獣が発生するよ。」

 「海底の・・・・・  魔力の澱み・・・・・  あるのだろうとは思っていたが。それを見つけても解消する手段はないのだ。発生する魔獣を苦労しながら討伐するくらいで放置している状態だ。」


 アステリオスが悔しそうに拳を握る。

 そうか、海底は放置か。でも、その魔力の澱みで魔力を浴び続けた生物が、巨大な『五時()』になってしまったらどうするんだ。海から突如現れ大都市を破壊し尽くし海に消えていく巨大怪獣『五時()

 こ、これは、海から『五時()』が現れる前に俺がなんとかしなければっ!!


 「わかった。その件は後で何か考えるよ。」

 「そうかっ、助かる。」



 あの場所が海の中の魔力が集まるよな場所だった場合、俺が魔石を沈めて魔力の澱みを解消させても、また同じ状態に戻る事もありうる・・・ か。騎士団ができる方法を考えてやらないと、そのたびに俺が呼び出される羽目になるぞ。魔力の澱みの場所まで魔石を沈める方法か。

 魔力って汲み上げたりできるかな? 海水ごと汲み上げてみるか? 海洋深層水とかいって商品価値でも付けて売ったりできれば、領の財政も潤う? いや、その前に汲み上げる設備を作らないと。

 まあ、今日は無理だな。でも、早めに解消しておかないと・・・・・ 『五時()』が・・・・・



 浮標(ブイ)を浮かべたところから回頭して、陸地に向かっている。一刻ほどの時刻が過ぎ、このまま岸壁に向かって今日はおしまいにしよう。このまま微速前進でも、岸壁までは半刻もかからずに帰り着けるだろう。

 水深も浅くなってきている。ワイヤーを巻き上げて短くしておこう。

 微速前進しながらワイヤーを巻き上げれば、たこてんやの動きが速くなってしまうけど、もうタコはかからないだろうと、諦めの気持ちが強くなってる。今日は夜釣りの気分じゃないし、さっさと帰りたい。明日は昼間に寝て、夜に釣りに来ようか。


 いきなり船が止まった。油断していた俺は、慣性の法則よろしく体が前の壁めがけて飛び出していく。舵を握っていたマーシェリンが、壁に激突寸前の俺をキャッチし抱き上げてくれた。

 た、助かった。壁に顔から突っ込んで、自分の顔が潰れる音を聞きたい奴はいないだろう。俺は絶対に聞きたくないね。


 「何事ですかっ!!」

 「『デビルフィッシュ』がかかったっ!! マーシェリン、舵を頼むっ。」


 デッキに向かって・・・・・  ヨチヨチ走る。機敏に走ってるつもりなんだけどね。


 たこてんやの上に巨大なタコが覆い被さってきた。『ユニコーンフィッシュ』はちゃんと餌として活躍してくれたようだ。

 この感覚は、しっかり餌の上に乗って抱きかかえている。あわせても大丈夫だろう。

 スクリューの回転を一気に上げる、と同時にワイヤーを巻き上げる。タコにズブリと差し込まれる針の感触が、ワイヤー越しに伝わってきた。この針は返しがないから緩めると逃げられるんだ。

 錨を銛にして撃ち出せばいいか。錨の形状を銛に変形、たこてんやの上に被さっている『デビルフィッシュ』に向けて撃ち出す。

 見事命中。これで緩んでも逃げられない。でも、タコって生命力が強いからこの程度では弱ったりしないんだよね。

 もう、船の速度を緩めても大丈夫だ。スクリューの回転を止める。後はたこてんやのワイヤーと銛の鎖を巻き上げれば、タコは近くに寄ってくる。

 逃げるつもりなのか餌から離れようとしたタコに、銛がしっかり効いている。逃がすわけがなかろう。

 あ、鎖を伝って上に上ろうとしてる? このタコ、『コウシン丸』よりデカいぞ。船の上まで上ってきたら沈められる。『ユニコーンフィッシュ』の時のように空中に釣り上げてタコ殴りにしてやろうか。

 空中高く浮き上がって、タコも海面から上に持ち上げる。デッキからでは下にぶら下げたタコは見えない。しかし鎖伝い、ワイヤー伝いで動きが伝わってくる。鎖伝いに足を伸ばして上に上がろうとしている。この船を餌認定したのか? あまりにも貪欲すぎる。

 こりゃ、さっさと弱らせないとヤバいね。

 タコの弱らせ方は、頭をひっくり返すと弱るんだよね。ひっくり返すって、逆さにするって意味じゃあない。タコの頭の中には内臓が詰まっているんだけど、その頭の中外をひっくり返して内臓側を外に出しちゃうんだ。頭の下側、足の付け根に指を突っ込めれる所があって、そこに親指2本を突っ込んで他の指で頭を押して、グリンとひっくり返す。

 すでに船底から10本の太めにした触手を放ち、頭をグリン・・・・・

 俺が討伐できなかった時のために、いつでも攻撃できる位置取りをしていた騎士隊が、一斉に引いた。相当グロかったんだろう

 タコも弱ったようだしこのまま空輸しよう。船だけどっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。