77.作戦行動
ペルセポーナの始刻に出られるように、といいながらその刻限に起こされた。マーシェリンはしっかりと防具、剣を装備し、アドリア―ヌの後ろに収納袋を持った護衛達が・・・・・ 準備できてないのは俺だけか。って、もっと早く起こしに来るんじゃなかったのかよ 。
少しでも俺の睡眠時間を多く取らせたかったらしい。でも、そんなに変わらないんじゃ無い?
朝食を持ってきてくれていたので、起きがけの洗浄魔法で身綺麗 にしてから、腹ごしらえだ。
メシを食ったら出すもの出しましょう。そうだ、もうすでにオシメは卒業したのだ。筋力トレーニングのおかげかどうかは分からないが、俺の括約筋は大活躍なのだ。ちゃんととどめることを覚え、排出する時の大解放の快楽・・・・・ あ、いやいや、とどめることを覚えられたことが凄いのだ。たまに粗相はあるのだが・・・・・ しょうがないじゃないかっ!! ちょっとした気の緩みなんだよっ!! たまになんだよっ!! 出ちゃうんだよっ!!・・・・・・・ そんなときは洗浄魔法でごまかしているから誰にも知られていないはずっ!!
ということでトイレで出すもん出した俺は、皆が待つ自室に戻る。
アドリアーヌと護衛達、準備はOK.のようだ。
『プロテクトアーマー タイプコナン』
コナンを纏い、転移円を展開。転移先は・・・・・ 人がいない場所、山の麓の壁の内側でいいだろう。よし、転移。
扱いだ木を山積みにしてある平地に転移してきた。ここからはアドリア―ヌのトラネコバスで山頂まで飛んでいけば騎士達は誰も不思議には思わないはずだ。時刻は丁度いいだろう。そろそろデーメーテーの正刻になる頃合いだ。
山頂には、多くの騎士達が集まっていた。多分もう全員あつまっているんだろう。
山頂部はまだ整地してないからボコボコで足場が悪いんだよね。今日作戦が終わって時間に余裕があったらここの整地をやっておくか。
アドリア―ヌと護衛達が携行食をトラネコバスから取り出し騎士達に配ってる。人前で『異空間収納お買い物袋』から直に出すことを控えたようだ。
「諸君、定刻通りの集合に感謝する。」
アステリオスの声が響き渡る。何かの魔法かな。声量が人の限界を超えている。
「各隊長より作戦内容は伝えられているはずだが、今一度私から説明する。
殲滅するべき魔獣は『カラードアント』及びそれらを生み出している『カラードクイーン』。この女王を討伐するまで今回の作戦は終わらない。なぜなら女王が存在する限り、働き蟻、兵隊蟻が生み出される。
今こちらにおられるコナン殿が本日の作戦の要だ。コナン殿が巣の奥深くを魔法で焼き尽くす。第7第8騎士隊が地上でコナン殿を援護、地上の蟻、巣から出ようとする蟻を撃破。第9騎士隊は地上の戦列が崩れた時の補強。第10騎士隊は怪我人の救助、常に班ごとで動け。私が上空からの戦況確認。撤退命令を出したらこれは絶対命令である。動ける者は自らのまわりの負傷者を救助して即時撤退。戦列を立て直し再攻撃か、野営地まで撤退かはその場にて判断する。以上だ。何か質問は。」
誰も質問は無かった。
「質問は無いようだ。では、出発だっ。テルヴェリカ領の平穏を守るため、蟻共を倒すぞっ!!」
「オゥッ!!」
鬨の声が上がり、騎士達が従魔を形成し次々と飛び立つ。マーシェリンのペガサスにタンデムで、アステリオスが跨がるケルベロスの横に着く。
俺達が先頭で巣まで案内しなければいけない。
「マーシェリン、俺が指す方向にに飛んでくれっ!! 速度は抑えめにっ。」
「はいっ。」
マーシェリンの魔力量は騎士団の中でも上位にいる? いや、もう1番といってもいいぐらいか。アステリオスの魔力量を超えてるんじゃないかと思う。これは俺のひいき目かもしれないけど。
マーシェリンが全力で飛んだら置き去りにされる騎士が多数出てしまう。それにペガサスは、スピード特化のようだ。アステリオスのケルベロスは戦闘力が高そうだけど、空中では鈍重そうだ。初めて従魔を形成する時に、何に重きを置くかで選択が変わるようだ。
高木の森を越え視界が広がる。低木の森の上空を飛び続ければ、低木の陰に『カラードアント』が這い回るのが見え始める。働き蟻が餌を探しているんだろう。こいつらは放置だ。
今日の作戦は、巣を叩き女王を倒す。女王さえ討伐できれば、その他の蟻共は烏合の衆と化す。油断さえしなければ騎士達が片付けるのも苦労はしないだろう。
巣穴があった付近に到達した。昨日と景色が違う。
働き蟻だろう。せっせと土を穴から運び出しては、穴の中に戻っていく。土の山が大きく盛り上がっている。そのまわり一体の低木が埋まってしまう程に。
手を上げて騎士隊をその場に止めれば、アステリオスが隣に並び尋ねてきた。
「あの土の山の中心が巣なのだな。」
「昨日はあそこまで大きな土の山は無かった。急激に巣の内部を拡張してる・・・・・・」
「それはどう取れば良いのだ。」
「いろいろ考えられるが、卵を産みまくって部屋が足らなくなった。『カラードアント』の骸を餌として捕食した幼虫が巨大化した。女王が捕食して巨大化した。最悪はその両方が巨大化した。ってところだと思う。」
「ここにいる隊だけで対処できそうなのか。」
「その危険は最初から織り込み済みだよね。だからやることは変わらない。でも女王が巨大化していた場合に焼き殺せない可能性が高い。巣穴の中には酸素が限られている。焼き殺すまでに酸素が持たない。炎が消えるんだ。」
逆に酸素がなくなれば酸欠で全滅もあるかな。ただしこいつらは生命力が異様に強い。酸欠で動けなくなるまでにどれだけ暴れるか・・・ だな。
「酸素とは何か分からんが、女王に痛手を与えることはできるのであろう。そうすればもし女王が地表に出てきたとしても、我ら騎士団の攻撃で仕留められよう。」
「分かった。最初の作戦通り、始めよう。」
巣穴に向かってマーシェリンのペガサスが滑空する。その後に続く第7第8騎士隊の騎士達。俺とマーシェリンが地上に降り立ったまわりを騎士達が固める。
地上に降り立ち見回してみれば、這う蟻は思った程いなかった。巣の拡張をしている蟻が多いのだろう。その働き蟻たちは俺達を全く気にせず、土を運び出しては戻っていく。
その仕事を命令されていれば、それ以外のことは我関せず、といったところか。
騎士達に伝えておこう。
「こいつらは攻撃を受けなければ何もしてこない。手を出すな。俺が内部を燃やした時に兵隊蟻が出てくるかもしれない。そいつらは、有無を言わさず攻撃してくるぞ。気をつけろ。」
先ほどから、降り立った場所、足元が揺れている。地震か? 地震とは違った揺れ方のように感じる。いや、そもそも原初の女神が創り出したこの世界に地震はないだろう。地殻変動とかありそうもないし。
ん? あるのかな? 地震の魔法とかあったりする? 暇な時にでも図書館で探してみるか。
巣穴から離れた位置、働き蟻たちが土を運び出してできた山の上に立つ。土の山はすり鉢状になり、そのすり鉢の中心にぽっかりと穴が空いている。今も大量の働き蟻たちが、すり鉢の上まで土を運び外へ土を落としては穴に戻っていく。俺達の存在は全く目に入っていないように、働き続ける。
巣穴の中に薄く広く魔力を漂わせていく。縦穴を下り横穴がいくつもある。横穴を進んだ先、その上に部屋がある。食料庫に、兵隊蟻の部屋、卵の部屋、幼虫の部屋、そのトンネルの中を働き蟻は動き回っている。それらを越えた最奥に・・・・・
いた。女王だ。巨大化した女王が自らのまわりの土を掘りまくっている。まだでかくなるというのだろうか。地表に降り立った時から感じている足元の震動は、女王がその巨大な顎で土を削っている震動だ。
巣の中に漂わせていた魔力を集束させる。その時にふと気がついてしまった。集束させた魔力の触手を筒状にする。地表から風魔法で筒の中に空気を通せば、炎は燃え続ける。充分な火力で焼き尽くした後に、風邪魔法で送っていた空気を止めれば、炎が酸素を使い切って消火する。生き残ったアリ共は酸欠で全滅だ。やってみよう。
各部屋に伸ばした触手の先に炎の魔法円を展開、俺の目の前には風の魔法円を展開、発動。風は強風、炎は獄炎。焼き尽くせっ!!
穴の中から恐ろしい程の熱量が吹き上がる。蟻の焼ける嫌なにおいも立ちこめる。
多くの蟻が燃えながら飛び出てくるが、そこまでのダメージを受けた蟻たちは戦うこともできずに息絶えていく。
そんな中で女王は? 大暴れだ。体表が燃え上がっているようだ。
上に向かって土を掘り、その土が女王の体に被さり炎の勢いがなくなる。
くそっ。他の部屋はもういい。女王の部屋を徹底攻撃だ。他の部屋へ送られていた風を全てカット、女王の部屋だけに送り込む。炎の魔法も一カ所に集中させて燃え上がらせる。
燃えながらも土の中を掘り進む女王。掘った土で炎の勢いが衰える。通路までが女王の掘り進む土で塞がってしまった。しまった。触手で後を追うことができない。
女王のまわりは閉鎖空間になる。燃え残っていた炎が酸素を燃やし尽くし、窒息させることができるだろうか。地上まで掘り進む間、息が続けば窒息は無理だろう。
地面が揺れ、立っていた場所にあった山は崩れて巣穴を塞いでいる。
地下からの地響きがひどくなってくる。
ヤバいっ!! 夢で見たことが・・・・・ そのまま起こる?
「待避―――――っ!! 総員、空中へ待避―――っ!!」
傍らに立っていたマーシェリンを抱きかかえ、空中に飛び上がる。俺の前にいた騎士達の足元の土が崩れすり鉢の中へ転げ落ちていく。すり鉢の底が盛り上がる。転がり落ちていく騎士達は恐怖のあまり悲鳴を上げ、従魔を形成させることもできない。
騎士達は8人だ。八本の触手を伸ばし全員を絡め取り一気に引っ張り上げた。その後を追いかけ巨大な顎が地中から飛び出してきた。
夢ではここで犠牲者が出ていたけど、よかった、助けられた。他の地表にいた騎士達も飛び立つことができたようだ。
アステリオスの所まで飛んでいけば、そこの騎士達が何か騒いでる。
「なんであいつ飛んでるんだっ!!」
「従魔も無しに、あり得ないだろう。」
そうか、コナンが小脇にマーシェリンを抱えて、8人をロープでぶら下げて空中に浮いてる事が気になるようだ。とりあえず8人を他の騎士に渡して、マーシェリンにペガサスを出してもらう。
俺はコナン単体で空中に立ち、
「何か質問は?」




