19.お財布に入んないでしょうがっ
この城に来て一ヶ月ぐらいたったらしい。日常会話は理解できるようになった。文字も覚えた。だけど喋らない。喋るのはアドリア―ヌとマーシェリンだけだ。他の人にあまり知られたくない。子供が喋り始めるのは多分1歳ぐらいだろう。それも単純な単語、『まま~』程度だよね。
俺の月齢は4か月ぐらいだと言われた。誕生日は分からないから、ルーナレータの1日ということで決まった。1月1日だ。元旦ですかっ!!
絵本でこの世界の暦を覚えられたが、太陽暦と同じだった。12の神々がこの世界を司っているらしい。その神々の名が12ヶ月にあてはめられている。方角にも時刻にも12神だ。要するに時刻と方角を12支の代わりに神様の名前を使ってるってことで理解した。
肉体も鍛えた。力の限り這いずり回った。這っている途中で力尽き寝てしまうことが何度あったろうか。しかしまだ立って歩けない。しょうがない。頭がデカいから立ち上がろうとするとバランスが悪くてひっくりかえるんだ。歩き始めるのも1歳ぐらいだったよね。早くても10ヶ月ぐらいかな?
アドリア―ヌは俺と二人だけで会話をしたがる。領主の仕事はかなり忙しいらしく滅多に時間が取れないらしいけど、日本語が懐かしいらしく二人だけの時は日本語で会話をする。
「このお城も慣れたかしら。」
「慣れるも何も、行動範囲が狭すぎてどこも見てないよ。」
考えてみたら、ベビーカーに乗せられて寝室と子供室の往復ぐらいか。たまにマーシェリンに抱かれてお散歩するぐらいだね。外の景色、見たことないな。
「確認しておきたいんだけど、ショウが創ったカプセルの中にあった革袋はショウの物なの?」
「あ~、カプセルって、エ〇トリープラグっぽい物ね。あの中の? そうそう、俺が作った革袋。その袋だけでも欲しいんだけど。」
袋があれば、いろいろ私物を入れておけるかな? 自分では持ち歩けないか。
「袋だけでいいの? 中の大量の魔石は、どうするつもりなの? ショウが集めたのかしら。」
「へ~、あれ魔石なんだ。RPGだと魔物倒すとお金やアイテム落としたりするから、この世界の通貨だと思ってたよ。」
「ゲームじゃないんだからお金なんか落とさないわよ。この世界の生命は魔石を必ず宿しているわ。ショウの体内にもね。特に貴族で魔法を使える人たちはその体内の魔石が魔力を発生させて、魔法円に魔力を込める事によって魔法を発動することが出来たり、魔力による従魔を創り使役することが出来るのよ。ショウが創った巨大人型魔獣みたいにね。」
「あ~ ○ヴァンゲリオン? 魔獣扱いですかっ!! ・・・ 決して、チヴァンゲリオンではないからね。」
「何? それってチヴァで見つかった古い地層に付いた名前じゃないの?」
「いやっ!! それを言うならチヴァタリアンでしょうがっ!!」
「え?・・・ なんだかどっちも違うような気がするわ。」
「うん、俺もそんな気がする・・・」
「思い出したわっ!! チヴァニャンよっ。間違いないわ。」
「あー、それそれ・・・ って、そんなユルキャラみたいな名前だったっけ。」
そんな名前はどーでもよくなってきた。話を戻そうよ。
「もうそれはいいから魔石の話に戻そうよ。」
「あら、そうね、脱線してたわね。魔石、魔石、魔石の話ね。平民でも魔石を宿しているんだけど、ほとんどの平民達は生命活動を維持するぐらいしか魔力を発生していないわね。ごくまれに魔力を操れる平民も生まれたりするけど、生活の中で便利な程度の魔法しか操れないんじゃなかったかしら。ショウも平民の生まれのようだけど、あなたの魔力量は異常すぎるわね。このまま成長すれば神々にも匹敵する魔力を持つかもしれないわ。」
「神様って、絵本のお話じゃないの? 本当にいるの?」
「いるっていうよりも、存在する・・・ 在るって表現した方がしっくりくるかな。」
その表現は、ちょっと納得できるかも。この世界でずっと感じている魔力、『どこに』とか説明もできないような力が、確かに在る。感じられる。いつかその力にも遭遇してみたい物だね。
「後は、魔獣の事を教えておくわね。魔力の澱みから発生する魔獣達は最初から魔獣として、凶暴性と魔力を備えて生まれてくるの。他にも普通の動植物なども、魔力の澱みに触れたりすると魔獣化するわね。その魔獣を討伐したり、魔力の澱みを解消させたりするのも、騎士団の仕事の一つね。」
「澱みの解消って何するのさ。」
「魔力を使い切った魔石を大量に持って行って、魔力を吸わせるのよ。その魔石は魔道具に使えるし、領の結界を維持する魔力にも使えるわ。」
「へー、俺の持ってきた魔石もそんなふうに使えるんだ。」
「ええ、魔獣の魔石ばかりだったわ。魔獣達はその魔石に宿る魔力が強いと、他の魔獣の魔石を捕食してどんどん強大になっていくわ。魔力的にもね。あなたが倒した『ブリザードエンペラーウルフ』は周りに吹雪が吹き荒れてたでしょ。」
「そうそう、吹雪が凄くて視界が悪かったよ。」
「ウルフが強い魔力を持って、吹雪を纏っていたのよ。水や風を纏ったりするときもあるわ。他にもあれだけたくさんの魔石を集めたのは、どんな魔獣を倒したの。」
「大型の野犬みたいのとか。」
「それがウルフよ。」
「他には、やけに攻撃的な猿の群れとか。」
「クレイジーモンキー、あれに遭遇したの。」
「笑拳ですかっ!!」
「なんなの、それ。」
「え? ジャッ〇ーチェンの・・・・・ あ、いえ、なんでもありません、気にしないで。」
「あれは群れで襲って来るから危険なのよ。」
「うんうん、ウザかった。群れで飛び掛かられて、噛みつかれて。そんな時、炎の魔法が便利だったよ。飛ばせる魔法じゃなかったけど、猿の体内で発生させると体が爆発するみたいな、って思い出したら気持ち悪。」
「生活魔法を攻撃に使ったの? そんな使い方する人、今迄いなかったんじゃないかしら。」
「どんな使い方でも効果あればいいんじゃない。でも魔石が通貨じゃなかったら、いっぱい集めて苦労して持ってきても、全く意味なかったか~。」
「そんなことないわ。この世界では魔石は、価値あるのよ。魔道具を作るのに必要なのよ。魔力を充填させて魔道具を動かしたり、魔法円を記憶させた魔石を装備していれば魔法を発動できたりするわ。他には魔力量が多くて魔力を押さえ込めない子供には、逆に魔力を吸い取る魔道具を持たせるのよ。小さな子供には魔法を使用することを教えてないから、魔力に魔力がたまりすぎて魔力暴走を起こす危険があるのよ。」
「魔力暴走だなんて、そんな恐そうなネーミング、 体が爆発とか・・・・・」
「そんな事は起こらないわよ。そうね、小さい子が癲癇の発作を起こすようなものよ。そんなときにこんな魔道具を持たせて魔力を吸わせるのよ。」
アドリアーヌが書棚から、杖状のものを持ってきて見せてくれるけど・・・ そ、それは、
「魔女っ娘アニメの、魔法のステッキですかっ!! 『○リリカピリララ』とか、呪文を唱えるのですかっ!!」
「呪文は唱えないわ。形状は魔道具やさんの趣味ね。子供がこの魔道具に魔力を込めるだけで、魔法を使用する訳じゃないの。暴走させる危険があるから、子供に魔法は教えないわ。貴族学院で魔法の勉強をする事になるのよ。」
「え? 俺、自由に魔法使ってるけど、だめ?」
「もうそこまで自在に魔法や魔力を操ってるのを見れば、禁止にはできないけど、人前で使わないように気をつけてちょうだい。
それと魔法発動に関しては呪文はいらないわね。私がしてるこの腕輪、魔法円を記憶させた魔石を装備させて、魔力を込めると魔法が発動するわ。魔力で従魔を創り出す時も魔石が必要だから、多い人で10個ぐらい装備してるわね。」
そんなに価値があるなら、俺の食費とかの生活費は大丈夫か。着の身着のままで放り出されずにすみそうだ。
「じゃあ、それは俺の生活費ということで使ってよ。」
「何言ってるの。あれは買い取るわ。ショウが必要になったときにお金は渡すわ。これからあなたが生きていくうえでいくらでもお金は必要になって来るわ。」
「いくらぐらいなの。」
「革袋の中にあったものだけで大金貨25枚の値が付いたわ。まだ売ってないけど。」
「貨幣価値がわからないよ。」
「私も貨幣価値はあやふやな所があるけど、日本円換算して大金貨1枚、100万円前後くらいかしら。」
「えーっ!! 2500万円も。家一軒建てれるんじゃね。」
「後はショウが討伐した『ブリザードエンペラーウルフ』の魔石なんだけど、国王が噂を聞きつけたらしくて買い取りたいらしいのよね。売ってもいいかしら。」
「俺に権利はないでしょ。好きなようにしてよ。」
「ショウが討伐したんだからショウに権利があるのよ。運搬したのは騎士団だから運賃ぐらい貰うかもしれないけど。」
「それはいくらの値が付いたの。」
「先日王都から使者が来て大金貨200枚の値を付けていったわ。ほんとなら300枚ぐらい付けくれてもいいんだけど、王様に無理は言えないしね。」
「2億?・・・ そんな大金持ってたら、安心して寝れないよ。」
「城の金庫室に保管しとくから大丈夫よ。それに大金貨に関しては、全てに魔石と魔法円が組み込まれていて、偽造防止になっているし、手に入れた時点で魔力登録をしておけば盗難防止にもなるの。そもそも大金貨なんて、王族や領主間ぐらいでないと流通していないし、大きいから持ち歩くのが大変なのよ。」
「どれくらい、でかいの?」
「直径が10cmぐらいね。」
「でかっ、お財布に入んないでしょうがっ!」
「だから、王族や領主間しか流通してないのよ。上位の貴族家の金庫室を覗くと、いっぱいため込んでるかもしれないわね。後は普通の金貨が10万円ぐらい、銀貨が1万円、小銀貨が千円ぐらいかしら。その下には銅貨、小銅貨があるけど、貴族はほとんど使うときは無いわね。」




