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Last Resort  作者: 当廟
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熱い、熱い、熱い、空気が焼けている。

地面からの、周囲一帯からの輻射熱が肌を焼く。

息を吸えば気道を熱風が張り付かせる。幾ら咽ても掠れた音が鳴るだけ。


黒光が解放される瞬間、咄嗟に虚鋸を解除し闇と霧を纏った。

死に掛けではあるけれどもリスポーンしてないってことはギリギリのとこで生き延びれたか。


震える腕でインベントリからポーションを取り出し呷る。

回復効果ではなくポーションという液体を飲むことによって渇き機能を失っていた喉が生き返る。



「ヘヴィ……ミスト……」「シャド…ウフィ……イルド…」



掠れた声でもシステムには認識された様で薄闇と霧が展開される。


薄闇が光を遮り冷たい霧が体を冷やしていく。

火照った体から熱を奪う感覚が心地よい。


敵の直ぐ近くで、危険が去った訳でもないのに横になったまま動けなかった。

そしてそのまま短くも長い一瞬を享受して。


音が鳴った。

視界の端、HPなどのステータス情報と共に表示されたそれ。

”状態異常:熱傷Ⅰ”

ログを見るにポーションや霧による冷却で回復し今の状態に落ち着いたようで。



「アクアオーラ」「ダークオーラ」「ウィンドオーラ」「レジストファイア」「イミュナティエンハンスメント」



MP残量なんて考えず効果のありそうなものを端から順に唱えていく。

平衡してポーションを取り出しては流し込む。


そうしていれば思考はクリアになっていき体の感覚も取り戻してきた。

上体を起こした所でようやく周囲を確認する余裕が生まれた。


幸いにも全身炭化することもなかったようで、装備も完全に破損している様子はない。

おそらく修理は必要になるだろうが。


次に目に入ったのがBreak Carrierで。

そこから伸びる聖都まで一直線に刻まれた焦げ跡。それは街寸前で途切れていた。

そして透明の盾のようなものが見えた。あれが黒光から街を守ったのだろう。


何にせよ聖都が蒸発することは避けられたようで。


聖都を蒸発させかけた張本人は、硝子化した大地に佇んで動いていない。

纏っていた黒いオーラも今はなくハッキリとその姿を見ることができる。



黒神チェルノボーグ/Break Carrier/Lv?/?

レイドボス/ユニークエネミー/アクティブ

適性:?/属性:?

スキル:?



あれ?看破が通ったな。モヤがなくなって妨害されなくなったのか、それともモヤにレジストされていただけなのか。

まぁ良いか、とりあえずスクショして後で送ろう。名前が分かっただけでも収穫だ。

スラヴ神話系のオリジナルじゃない元ネタがある系の奴だ。調べれば確実に何らかの情報が取れる。



「よっこいせっと」



まだ横になって転がっていたいと信号を発する肉体に鞭を撃ち立ち上がる。

状態異常がリアルすぎないか?リアリティが求められているのであって過剰なまでのリアルはゲームをする上で邪魔にしかならないでしょうに。


先程の熱傷系状態異常に肉体の疲労感や足の裏から伝わる振動、多種多様なモンスターの鳴き声なんか。もうちょっと選んで欲しいよなぁ。熱傷は本当に死ぬかと思った。

……感覚強化を取得してる自分が悪いのか?でも過剰な痛覚信号はちょっと。



「しっかし一気に騒がしくなってきたな、夜はあれだけ静かだったのに」



大移動でもしてるかのような、ってか確実してるなこれ。

けどそりゅそうか、昨日までは突如現れただけで直接的な害はなかった、けど今はこれだもんな。普通逃げ出すよ。


ただ方向がちょっと問題か、どういった意図でそうなってるのかは分からないけども確実に聖都の方向に向かってるね。

野生生物と言っていいのかは分からないけれども、高性能なAIを搭載したリアルなモンスター達がわざわざ破壊の震源地に近付いていくのはちょっと違和感がある。

そう考えるならばやっぱりフィールド、マップの境界で遮断されているのか。単純に切り替わると格上がいすぎて避けてるのか。


何にせよだ、そろそろのんびりもしていられないだろうな。ってか敵前で気を抜きすぎというか。

余波で死に掛けたりはするけども直接攻撃されてないからなんとも。

精々が分離して反撃してきた奴らだけだし。ってかあれ硝子化した地面の上でも原型保ってるな。

プレイヤーの丸焼きが出来る環境を耐えられるならなかなかいい素材になりそうだ。流石レイド素材。



『ヤギリさん生きていますか?』


『ヤギリさん大丈夫ですかぁ?』


『どうも、なんとか生きてますよ。余波で焼かれて蒸発しかけましたけどね。そっちはどんな感じですか。レーザー撃たれてましたよね』


『ええ、教会の聖女による結界で直撃はありませんでした。余波の衝撃だけでもかなりのモノでしたが。神託を公表してた方が聖女だったみたいです』


『いやぁー凄かったですよアレ、規格外光学魔導遮断結界とかいうスキルらしいですー。教会のNPC全員集めても使えないレベルだとかでえ、一撃防いだ後聖女ちゃんも戦線離脱しちゃいましてえ。出来てもあと一回らしいです。いやあー初っ端から残機1じゃないですかもう、きついですねえ』


『そういう訳ですので何かしらの防御手段が必要になりますね』


『あーそれなら役に立ちそうなものありますよ。ボス殴るとパージして殴ってくる外殻素材なんですけどね、あれレーザーの余波で地面が硝子化している中でも無事な素材で。殴れば取り放題ですね。』


『それは幸先がいい。NPCで拠点攻撃を防いでおいて拠点防衛素材はボスから調達する。そういうシナリオですかねこれは。近付いて殴れば誰でも素材を獲得する機会がある。それを元にクラフターが装備や防衛設備を充実させ備えると』


『それと追加情報が二つほどありまして、ボスの名前とスタンピードかな。名前のほうはスクショ送っときますんでアーカイヴの方ででも調査お願いして下さい。スタンピードの方はおそらくって所ですが、レーザーでの破壊後に周辺一帯のモンスターが移動し始めたので。追い立てられてる感じですねえ』


『そうなるとスタンピード防衛、ボスによる遠距離対策、ボス攻略、防衛設備改修、消耗品増産ですか、大別して部門分けするならば。情報収集や解析、検証なんかは班単位で行い別行動でいいですからね』


『完全に全員強制参加の流れですねえ。あの極潰し共動員しないと手が足りないんじゃないですかあ。取り敢えず私もヤギリさんとこ向かいますね』


『アヤカさん、少々口が過ぎますよ。思うところはあるかもしれませんが直接的に口に出してしますと争いの元です。それに不幸中の幸いとでも言いますか彼らに色々ありまして、かなりの人数が私達のとこに協力を申し出てきたんですよ。』


『濁してるとこ悪いですけどぶっちゃけ何があったんですか』


『……ヤギリさんが現地でボスをサンドバックにしていた夜間にですねPK被害が発生しまして。彼らの中で発言力があったりと中心的なメンバーがほとんどリスポーンしました。闇の中でレイドボスが現れている状況で断続的に人がキルされ、彼らの中で恐怖が伝播し疑心暗鬼になっていたんです。そんなこんなで私たちに保護を求めてきまして代わりに協力してもらう運びとなった訳です』


『怖いですねえ、この状況で仲間割れとか。まあ仲間のカウントに入ってないのかもしれませんけどお』


『正直かなり怪しい話ですけど、やってないですよね?』


『ええ、色々と手を回したりはしますけどPKに関しては全く』


『本気で隠蔽されたら分かりませんしね、そもそもやってないんでしょう。誤魔化しても嘘言うような人じゃないと思ってますし。ホントにタイミングが悪い』


人数が人数だけに一枚岩になるのは難しいだろうけどさ、ログアウト出来ない状況でレイドボスが出てるのに何で足並み乱して引っ張ろうとするやつが出て来るかねえ。

何もせず喚くだけに成り下がった精神も、それをキルして回って面倒毎を増やす輩も。気持ちは理解できなくもないけどさ。


ああ、一々癪に障る。何もできないのに、何もしないのに生きているだけ。死ぬべきじゃない人間が死んで死ぬべきだった人間が生き残る。あの時もそうだ。生き残った。皆死んでいった。同じだ、自分はあいつらと同じだ。何もできないのに。生き残った。だから見てると思い出す。同族嫌悪だ。俺が死ぬべきだった。動けなかった。違うそうじゃない。何で、何で。俺は、


違う、ここはゲームだ。人は死なない。まただ、訳が分かんねえ。

何のことだよ、覚えがない。くそっ。



『……さん?ヤギリさん大丈夫ですか?聞こえていますか?』


『……あぁ、大丈夫、です。ちょっと考え事を』


『そうですか、無理はしないでくださいね。連続稼働時間考えると一度休息を取ってもらったほうが良いかとは思いますが。』


『ヤギリさーん、私今向かってるんでリスポンしちゃいやですよ?入れ違いなりますしい』


『大丈夫、もう大丈夫。とりあえずこっちはこっちで引き続き調査します。進行方向は聖都で間違いないでしょうけども。地形からルートや速度に到達予想時間その他諸々を。敵の形状、攻撃手段、範囲、速度、判定、効果、時間、肉質、機能、弱点、破壊方法、有効属性あたりは効率考えると絶対に必要になってきますから。それを整理して拡散してもらえれば』


『はい、其れはこちらで請け負います。それとスタンピードの第一波が見えたようなので一度切りますね。偵察組の情報では隣接1マップの中でも低レベル帯みたいです。初戦の相手としては悪くないでしょう。では』


『はい、また』


『ではではー』


『あ、そういえばヤギリさん。ヒゲもじゃのレイズさんから装備預かってますよ?外套と皮鎧ですねえ』


『それか、このタイミングで仕上がるとは。ボス前に更新出来たと考えればありかな?』


『という訳でなるはやで向かいますー』


『了解、気を付けて』


『はいさー』



さて、それじゃあ色々と考えながらやりましょうかね。


丁度ボスも大技後の硬直から回復したみたいだし。


改めて、VS黒神チェルノボーグ戦開始ってことで。


全人類種に対する試練の時。


全人類種が全身全霊を持って生き残りをかけた総力戦を。生存競争を。


敵性存在を撃滅し根絶し絶滅させるまで終わらない、生き残った者が強者であり次世代の支配者に。


適者生存、より高みへと進化し高次元の存在へ。


大丈夫です、敗北は終わりではない。絶滅ではない。


滅びるまで立ち上がるのです。復讐、恨みでもって立ち上がりなさい。


ならば私は繁栄への手助けをしましょう。



永劫に繰り返しながら。

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