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Last Resort  作者: 当廟
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社畜です、遅くなりまして

フラフラ、ブラブラ目的もなく街を歩く。

街並みを眺め、すれ違う人の波を抜け、喧騒に紛れる。

プレイヤーもNPCも区別なく人の活気に満ち溢れている。


NPC、ノンプレイヤーキャラクター。データで構成された舞台装置。

幾ら最近のゲームが高性能になってきたからと言っても、ここまで大量に配置されたそれぞれに膨大なパターンを生成し容量を食わせることがあるのか。

はっきり言ってNPCっぽさがない。創作の世界じゃ軍用AIだの新高性能鯖による自動生成だのとあるけどさ。

現実にそんな物をゲームのNPC様に用意するとは思えないんだよな。用意できたとしても。そもそも無理だろ。存在しなさそう。

所詮はやはりファンタジーというのか。


まぁゲームの中に閉じ込められてる現状あんまり強くも言えないけど。

あり得ない事が起きているならあり得ない何て断定することはできないけど。


そこで二つが繋がってこういった仮説が生まれるわけで。

ゲームに閉じ込められた人間が世代を重ねるとどうなるのかって話。

魂とかは正直信じてはいない、新しく生まれたとしてもそれは思考をサーバーで肩代わりしてるだけだろう。それってNPCとどう違うのかって話にはなるけども。


仮に魂というものがあり肉体や化学反応と生体電流何かがなくても個人として成り立つだけの記憶が保持できるなら。

彼らはNPCではなくてこの世界の先住民ってことになるか。


オカルト要素多すぎて突拍子もないな、仮説に仮説を重ねてバベルの仮設じゃん。そもそも建造計画却下されそう。

とりあえずNPCとかとは思えないくらい多様性に満ちてるってことで。



「きゃっ」


「すいません、前見てませんでした」



そんな事考えて思考に没頭してるから人とぶつかるなんて初歩的なことをやらかす。


白い人だった。白いという印象しか残らない、上から下まで白くて白くて。何ものにも染まらない純白ではなく、全てを塗り潰して白く染め上げたかのような人。

ただ一点を除いて。

煌々と、紅々と。一瞬を切り取り収めたかのような煌めくような赤い瞳。

どこまでも深く沈む紅でありながら光を感じさせる彩度をも持つ瞳。


目を奪われた、話せなかった。



「いえ、私の方もよそ見していましたので。お気になさらず。お怪我はありませんか?」



一瞬遅れて音が頭に入り理解する。思考が止まっていた。



「あ、はい。大丈夫です、何も問題はありません。そちらこそお怪我などh」



地震、確かな揺れを感じる。幸い大きくはない単発のようだが。イベント発生か?

同時に出現したウィンドウには機能開放とゲージの上昇が表示されている。

ボス討伐に伴って世界全体でシナリオが進行したと考えるべきか。



「ふふふ、貴方はあまり驚かれないのですね?大地が揺れるなど天変地異だと騒いでも不思議ではありませんのに」


「あぁいや慣れてますので。住んでるところではよくあるんですよ、またかって位には」


そう、地震大国に住んでたら少々の揺れ程度では動じない。あれはネットに集合する合図程度だ。

それでもこの仮想世界の文明レベルを考えれば騒ぎになってもおかしくはない。


周りを見渡せばやはり… 誰もいない?おかしい、さっきまで人混みを歩いていた。

思考に没頭し周囲を見れていなかったのはあっても確実に。

一切の音もなく静寂が耳を焼く。自分の心音と呼吸音だけが聴こえる。

マップも機能していない、表示がバグってやがる。指し示す方角は存在せずただ自身の周囲を白紙が示すのみ。

そもそもどこだ、ここは。街並みは変わってない。確実にさっきまでいた町と同じはず。なのに見たことがない。違和感しかない。


気持ち悪い、それまでの既知が未知に塗り替えられていく。根本を崩される間隔だ。



「この間折り返しを超えたばかりだというのに。早いものですね。しかし、いずれは訪れるのですから」



静寂を壊すよく通る声の持ち主は虚空へと視線を漂わせ紡ぐ。



「いつ以来でしょうか、先へ至る試練は。維持による停滞はの終わりは」



こちらを見た、ちらりと目線を動かし確かに俺を見ている。

紅い瞳が俺を捉えている。全てを見透かされるような感覚が全身を叩く。



「貴方も大変ですね、私でも手に負えません。煙に巻くなんてそんなことはありませんよ。霧には巻かれた様ですが。ふふふ、長く生きていると色々な事を知ってしまうのですよ。頑張ってくださいね。私はしがない大司教ですから。」



バッドコミュニケーション、返しが出てこない。不確定情報が多すぎる。



「その鍵は封じられた始まりの道への鍵ですね。今一度よく探して見るといいかもしれません。」


「何でそれを」


「秘密です。乙女の秘密とだけ言っておきましょう」


「は、はは…」


「何か困ったことがあれば教会まで来て頂ければお力になれるかもしれません、では」



すれ違い歩いていく。靴音だけが確かに彼女が歩いていることを証明する。

振り向けない、極度のストレスに足が言うことを聞かない。



「Break Carrier ただの記号で古い伝承です」



一言、ポツリと呟き彼女は消えていた。

滝のように汗が流れ出している気がする。それほどまでによく分からない時間だった。

気が付けばいつもの街、人もいる、音もある、見覚えもある。

何だったんだよ、ここ最近よくわからんことが多すぎる。

完全に脳の処理能力を超えている。もうパンクしてるよこれ。

もうやだ、訳が分からない。思考を放棄して投げ出したい。もうやめてくれ、ただゲームしたかっただけなんだぞ。



「黒■■■ェ■No■ー■hあ■■神■■ボ■■の■■niン形■」


「は?」


「あぁ、やはり伝わらないか。仕方ないとはいえやるせない」



男がいた。酷く浮いた男だった。黒いスーツに身を包み、人混みの中でこちらを向き立っていた。

いや、そこに居た筈だった。決して目を離してはいないし意識を向けていたうえでだ。

人混みの中で不自然にぽっかりと空間が存在していただけだった。

そしてそれも数秒と待たずに埋もれ消える。


立て続けに起きた理外の現象。明らかにゲームに則ったモノじゃない。

異質な存在だった。ゲーム内での異物と言ってもいい。それだけ浮いていた。



「よぉ!さっきから未知のど真ん中で突っ立って何してんだ?」



不意に後ろから声を掛けられた。振り向けばここ数日で見慣れた顔ぶれが居た。

確かにいる、目を離しても消えない。


ヴァーミリオンのPTか。



「あぁ、どうも。……今の見ました?」


「今の?何をだ?変なもんでも見たのか?」


「いや、ただの黒スーツ何ですけど」


「…?誰も居なかっただろ、一人で立ち止まってたから見つけて声かけたんだぜ?」



はは、またかよ。どうなってんだこれ。

ログにも何も残ってない。リアル過ぎる幻覚か何かだっていうのか。

ゲームに閉じ込められてストレスでおかしくなったのか。


ただただ気持ちが悪い。

自分でもそう思うんだ。俺を他人が見たらもっと気持ち悪く見えるだろうな。

完全に違うものが見えてるんだもん。


何やってるんだろうな、何されてるんだろうか。

何なんだろうな、この状況は。


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