91 クリパ続き
僕は安藤司です。
桃花高校演劇部1年生です。
中学の時から演劇部に入っていて、高校も続けています。
桃花高校に入ったのは、演劇部が有名であったことと、女子がいないからです。
僕は、女子と話すのが苦手なんです。
もちろん、女子自体は好きなんですが、なんか目の前にすると緊張しちゃって、上手く話せません。
緊張する毎日が嫌で、男子校の高校にはいったんです。
中学の時は、男女共学なのに、女子とほとんど会話しませんでした。
もちろん事務的な会話はしますけど、私語というか、普通の世間話みたいな会話は全くしませんでした。
男子校にはいって、女子がいなくて、気楽な毎日を過ごすようになります。
演劇部には女形の小出君という女子にしか見えない男子がいましたけど、中身は男子とわかっているので、普通に話せます。問題ありません。
このまんま、平和に、3年間過ごすのかなあと思ってたら、忘れていたことがありました。
そう、桃花高校系列の女子校との合宿や交流があったんです。
たまにですが、女子と会って、話さなければいけません。
うわーっ、また緊張する。嫌だなぁって思って夏の合宿に参加しました。
合宿では、なるべく女子と会話しないようにしてたんですが、即興演劇の練習をしてた時に、
一人の女子生徒が積極的に僕に話かけてきました。
「安藤君、すごい!演技のとき、別人だ!まるで別人格になってる!
それに迫力がある。演技うまいよ!」
とすごく褒めてくれたんです。
僕は演技に自信があったし、先輩や先生から、あるいは同じ1年生から褒められることが今まで何度となくあったけど、女子に面と向かって褒められたのは初めてでした。
すごく嬉しい気分になります。
「あ、ありがとう。」僕はやっとそれだけを答えました。
女子生徒の名前は三塚公佳さん。
可愛いし、胸が大きい。けっこう好みです。
三塚さんかぁ。仲良くなれたらいいなぁ。
僕はちょっと意識しましたが、現実には何もしませんでした。
結局は、女の子に対して、積極的にはなれない自分を肯定してしまったんです。
でも、
演劇部の地区大会、県大会、ブロック大会で、何回か三塚さんから、声をかけられます。
「こんにちは!元気?」
ニコッと笑顔で話しかけられ、僕は「あ、ああ。」みたいに返すだけですけど、何か嬉しくなります。
そして、胸の中で、ドキドキした感情が芽生えてきます。
そう、どうも恋をしてしまったようです。
どうしよう?
女子恐怖症の僕が、女の子を好きになっていいのかな?
でも、自分を変えるいい機会かもしれません。
僕は決心します。
とりあえず、男子校女子校合同のクリスマスパーティの時は、三塚さんと少しでも会話しよう。
そう、考えました。
そこで、女子校とのつながりが深い女形の小出に頼んじゃいました。
「三塚さんを好きになっちゃんだけどどうしよう?
今度のクリパで話のきっかけ作ってくれないかな?」
すると、小出は、驚いて目を丸くします。
「そ、そうなの?
きっかけくらいは・・・うん、作れるよ。」って言ってくれました。
よし、がんばるぞ!
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クリスマスパーティ当日、男子と女子との交流が始まります。
積極的に女子と話す仲間を横目に、何となく男子同士で話す僕です。
やっぱり、一人では、女子のところに行けません。
三塚さんのところに行きたいけど・・・
あ、小出と三塚さんが話してる。
小出のやつ、ちゃんと僕と三塚さんが話をするきっかけ作りしてくれるかな?
そう思ってたら・・・小出と話していた三塚さんが、突然僕を見つけ、こっちの方に向かって歩いてきます。ちょっと険しい顔だけど・・・
「安藤君!だめよ!
また男子とばかり、話してる!今日は女子と男子の交流会なんだから、女の子と話さなきゃ。
さ、私と一緒に、こっちに来て。
女の子と話をさせてあげる。」
僕は呆気にとられました。
たぶん、小出は僕が男子とばかり話してるから、話をしてあげてって誘導してくれたのかもしれないけど、
けっこうすごい剣幕だ。仲良く話ができるかな?
「安藤です。よろしく。」
3人ほどの女子の前に連れて行かれた僕はやむなく挨拶します。
「ふふふ、安藤君ね。公佳が褒めてたよ。演技すごいって。
私もそう言われて、迫力のあるセリフに感心しちゃった。」
「そうね、ふだんのおとなしい感じと違うよね。神がかってるっていうか・・・」
「安藤君の演技、確かに勉強になる。どうやって演技力磨いてるの?」
「ええっと・・・」僕は女子に注目されながら、汗をかきながら、丁寧に自分の持論を説明します。
ちょっとたどたどしく・・・
「もう、安藤君たらあ!
女子の前に来たのに硬すぎだよ。
気に入った子がいたら、いいなよ。
応援するから。
この3人の中で、いいなって思った子いる?」
僕は真っ赤になってしまいます。
そんな・・・僕は三塚さんの対象外なのか?
そんなの許せない!
なんか、どうしようもない感情が心の奥底から湧き上がってきます。
「公佳、おとなしい安藤君にそんなこといきなりいっちゃだめだよ。」
「安藤君、真面目に考えちゃうじゃない。困ってるよ。」
「そうだよ、何て答えていいかわからなくなってる。」
僕の心の中で何かが爆発しました。
もう止められません。
「あの・・・
僕は、三塚さん・・・がいいです!!」
「えっ、何言ってるの?」
ちょっと強い調子で声を張り上げた僕でした。
目の前にいる女の子が口を開けて驚くのがわかります。
そして、パーティ会場のみんなが振り返るのもわかります。
三塚さんは顔が真っ赤になっています。
「僕は、三塚さんが好きなんです。
僕と付き合ってください!!
他の女の子を勧めないでください!!」
僕は何を言っているのかわからなくなりました。もう、やけでした。
「うわっ、公開告白だ!!」
「大胆!!すごい、告白してる!!」
「公佳、彼氏いないでしょ?どうするの?
いいなって思った子って公佳だったんだ!」
「ええっ?こんなところで何言うの?おかしいんじゃない!
ちょっと、やめてー!
うわっ、恥ずかしいよ!」
三塚さんは、大声をあげて、その場から、トイレの方に向かって、走っていきました。
恥ずかしくて一瞬もこの場所にいられないという感じでした。
うわーっ、やっちゃった!
もう、後の祭りだ。
もう、ダメだ!完全に嫌われちゃったよ!
僕は激しく落ち込みます。
でも、周りの反応は意外でした。
2年生の先輩が、僕の肩に手を置いて、
「おおっ、やったなー!男らしくて、スッキリしたぞ。やっぱ、男はこうありたいな!
かっこよかったぞ。」と大声で話しかけてくれたんです。
えっ?そうなの?
それからは、
「すごい勇気だ!」「うん、好きな子には好きっていわないと。」という男子の声と
「私も、あんな感じで告白されたい。ちょっといいかも。」
「公佳は自分が攻められると弱いんだね。でも素敵な告白かも。」みたいな女子の声が広がります。
あれっ?問題発言じゃなかったかな?
なら、いいけど・・・
いや、よくない。もし、三塚さんが困ってるとしたらどうしよう?
「安藤君、後はまかせて。」「うん、私たちが何とかするから。」「大丈夫。」
小出と、藤原祐希さん、柏原由奈さんの3人が僕に声をかけて、三塚さんを追いかけてトイレに向かいます。
泣いたりしてないといいな。もし、傷つけちゃっていたら、謝らなきゃ。




