200 最終回~ついに旅立ちの時
今回で完結です。
読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
太田和音です。
今日は、尊敬する先輩、小出葵さんと、板谷翔さんが東北に向けて旅立つ日です。
男子校、女子校の主要メンバーが東京駅の新幹線のホームに集結しています。
みんなで見送りしようって打ち合わせたんです。
私は、良太、風歌、そして、演劇部ではないけど通学時に挨拶したことから先輩方と知り合いになった森山優人君と一緒に来ました。
森山君がしみじみ言います。
「あの二人、交際してるんだよね。
すごいな。付き合っている男女で、同じ東北の地方大学に行くなんて。
これで、4年間一緒だよな。
親の目からも離れるから、同居とかできるし、新婚生活が始まるようなもんじゃないか?
しかも、小出先輩って、性別変えたんだろう?
めちゃくちゃきれいじゃないか?信じられない。
そうだ、
朝倉はどこの大学へ行くつもりなんだ。東京の大学にするのか?
それとも、今日出発する先輩みたいに地方の大学にするのか?
もう2年になるから、そろそろ考えないとな。」
「俺は北海道の国立大学を考えている。
一人暮らしをすると、親には負担かけるけど、自立心を育てられるような気がするんだ。
それに、北海道の大自然は憧れだ。
自然の幸も美味しそうだし。
札幌だとバイトするところもいっぱいありそうだ。」
「まじか?実は俺も北海道の国立大学考えてたんだ。
札幌に有名なバンドがあってさ。有名なライブハウスで活躍してるんだ。
そこのライブハウスに出演したいと思ってるんだ。
やっぱり、大自然に憧れるし。」
「おお、そうだったのか?
二人で、北海道の大学をめざすか?
よし、先輩たちみたいに現役合格を目指そう。
いまから狙いを定めて勉強すれば間に合うかも。」
風歌が私の耳に囁きます。
「ねえっ、北海道の大学行きたいなんて話、知ってた?」
「全然知らなかった。初めて聴くよ。」
「いつも一緒なのに、聴いてないの?」
「そりゃ、行動は一緒にすること多いけど、良太って、正式に恋人ってわけじゃないし。」
「そう?微妙な関係ね。
私と森山君も付き合っているわけじゃないから、教えてもらえなかったのかな?
何か悔しい。
ねえ、和音、私たちも北海道の大学目指さない?
4人で合格目指そうよ。」
「ええっ?風歌って森山君好きなの?」
「シーっ、誰かに聞こえると恥ずかしいから、小さい声で会話して。
私もよくわからないけど、森山君のバンドで、ヴォーカルやってみたいって思ってるの。
私、演劇部卒業したら、ロック・バンドのヴォーカルをやるって決めてるんだ。」
「そうなの?
全然知らなかった!」
「家族以外には話してないから当然よ。
どう?北海道の大学目指す?」
「北海道かー?確かにちょっと憧れるかも!」
「じゃあ、作戦練りましょう。でも、男子二人には内緒で行動よ。
ただ、心配なのは・・・」
「心配なのは?」
「まだ、受験まで時間があるから、二人が方針変えることがあるってこと。
今後は二人の志望大学について、何気なく確認する必要がある。
この点についても協力しようね。」
「う、うん。」
そんな話をしてると、葵さんが私のところにやってきました。
「男子校の姫、がんばってね。
地区大会は秋だけど、今から十分案を練って、全国をまた目指そうよ。
まだまだみんな成長すると思う。
それから、女性化の件で悩んだら、山野先生に相談するのもいいけど、私に遠慮なく連絡してね。
一応手術までしてる人間だから、いろいろアドバイスできると思う。
それから・・・演劇部としては、次の姫のことも考えないと。
今年の4月はいいけど、来年の新入生は姫が必要。今年の間にいい中学生がいたら、スカウトしてもいいよ。その辺は山野先生と相談して進めてね。」
「はい、任せてください。そうですね。全国大会目指してがんばります。
それから、次の姫については、いい子がいればスカウトします。
最近はLGBTの中学生増えているから、その中で適任がいるかもしれません。
男子校の姫制度、バトンを渡していけるように努力します。」
「ありがとう。じゃ、よろしくね。」
そして、良太のところには板谷先輩がやってきました。
「新体制の演劇部をよろしく頼むぞ。俺も、そこにいる友利も言われたことだけど、その体のデカさをうまく使うんだ。舞台で輝くにはどうすればいいかよく考えろよ。目立てばいいというものではない。内面からでる演技が人の心をとらえるんだ。お前ならそんな演技ができるようになると信じている。
がんばれ。それから、太田と仲良くな。」
「いろいろとご指導ありがとうございます!演劇部の伝統を汚さないようにがんばります!」
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葵です。新幹線がホームに入線して、清掃が終わり、私と翔は自分の席に荷物を置きます。
そして、出発時間まで、ホームで、みんなと握手したり、ハグしたりして、別れを惜しみました。
意外にも、一番しっかりしている篠原さんが私に抱き着いて、ボロボロ涙を流しています。
篠原さんのおっぱい大きいから、抱き留めるとふわふわした感触がしました。
いつもと違う。可愛いなー。その横では、佐々木さんが、もらい泣きをしてました。
「葵先輩。私、男子校での葵先輩の演技大好きでした。生まれつき女子ではないのに、何て女性らしい演技なんだろうっていつも感動してたんです。たまにはこっちに帰ってきてくださいね。あ、私の方から遊びに行くかもしれません。」
そこに、私のファンだと公言している新川さんが、顔を出します。
「葵先輩、絶対遊びに行きますから、よろしくお願いします。できれば、友理奈とあいくを連れていきます。これからも仲良くしてくださいね。」
一番泣きそうだった新川さんは全然泣きません。日頃から、スマホで連絡とりあってるし、もう夏休みに私のところに遊びに行くって決めてるからでしょう。余裕があるのかも。
「葵、ホルモン治療とか、精神の不安定とかで、新しくお世話になる医師とうまく意思疎通が取れない時は連絡してね。お母さんと一緒に対応考えるから。」
「さすが、医者の卵。祐希にはこれからいろいろ相談に乗ってもらうだろうなー。ぜひ、お願いします。」
「板谷、小出、大学では演劇続けるんだろ?俺も演劇頑張るから、切磋琢磨しようぜ。」
「うん、お互いにがんばろう。」「お互いの公演を見る機会があるといいな。」
祐希と尾崎君は仲良く並んで声をかけてくれました。二人はお似合いです。
由奈、菅原君カップルは、お菓子を買ってきてくれました。
「これ、差し入れ。電車の中で食べてね。あ、向こうで美味しいお菓子とかあったら、送ってね。楽しみにしてる。」
由奈はけっこう地方のお菓子が好きなんです。
「ふふふ、お菓子の食べ過ぎで太らないようにね。」
「うっ、痛いところを。その分、運動するから大丈夫。葵こそ、一人暮らしになって、栄養のバランス崩さないように。あっ、実質二人暮らしか?、じゃあ、二人で食生活気をつけてね。」
そして、出発の知らせがアナウンスされます。
私と翔は新幹線に乗り込み、みんなに声をかけます。
「じゃ、行ってきます。みんな元気でね。」
「後輩のみんな、期待してるからなー。」
私たちの前のドアが閉まりました。
ドアが閉まっても私と翔は手を振り続けます。
そして、それにこたえてくれる演劇部の仲間たち。
新幹線は走り出し、だんだんみんなから遠ざかります。
「見えなくなっちゃったね。」
「ああ、これで高校時代が終わったな。これからいよいよ新生活だ。」
「一緒に暮らすとなると、些細なことで喧嘩しちゃうかもしれないけど、その後、ちゃんと仲直りしようね。」
「まだ、喧嘩もしてないのに、用心深いな。」
「私みたいな女の子とこういう関係になっちゃって、後悔してない?」
「後悔なんかするわけないさ。いっしょに演劇部を引っ張った戦友だろ?
普通のカップルとは違うんだ。
これからもいろいろ二人三脚でがんばろう。
一人ではできないことも二人ならばできたりするかもしれない。」
「翔・・・ありがとう。
私、女の子になってよかった!」
私は、翔に抱き着き、翔の胸に顔をうずめます。
「世の中の誰が何と言うと、葵は俺にとって世界一の女の子だよ。
さあ、席に戻ろうか?」
「うん。」
席に着くと、車窓の景色はすごい速さで変わっていきます。ついに首都圏を離れるんだなと感傷的になる私。
「あ、富士山!」
「えっ?ホントだ。この電車からも見えることあるんだな。
あの富士山に誓うよ。葵を大事にするって。」
「ふふふ、素敵。演劇のセリフみたいね。」
「そりゃ、役者だからな。うまいこと言わないと。」
「何それ?
でも、そうね・・・二人で、大学で一番の男優、女優になろうよ。」
「おお。がんばるぞ。何とかなるさ。」
大学でのどんな生活が待っているだろう?とちょっと不安がありましたが、翔の自信に満ちた一声で、何でもできるような気分になります。
男性から女性に変化した高校生活は終わりました。
これからは女性としての一歩を踏み出します。
きっと素敵な女性になれるはず・・・だって、翔がいるんだもん。
これで、私の男子校のお話は終わります。
皆様、お元気で。
完




