190 交際申し込み
朝倉蒼汰です。
弟の良太の中学校時代の担任の小山先生、つまり朱里さんと、夕方のラーメンを食べ終わったところだ。
トマトベースの洋風のスープのラーメンは普通のラーメンと違ってイタリアン的な印象もあったが、食べてみると、やっぱりラーメン。やっぱり麺がパスタと違う。
なかなか美味しかった。
朱里さんも大興奮で、「面白い!意外!」とけっこうはしゃいでいて、すごく可愛かった。
なんか、高校の同級生の女の子と一緒にいる気分で、男女二人でいるけど、デートって言う感じではない。仲がいい仲間って感じだ。
そして、ラーメン屋さんの外にでても、ラーメンの話が尽きない。
朱里さんを駅まで送ったのだが、名残りおしくて、駅前のコーヒーショップでさらにラーメンの話で盛り上がってしまう。
「朱里さん、今日、本人に会ってしまったわけですけど、ネット上は師匠として敬いますのでよろしくお願いいたします。ネット上の関係を変えるわけにはいかないと思うんです。」
「やめてくださいっ!
て言いたいところですけど、それも面白いですね。
ネット上に限り、蒼汰さんを弟子ということにします。
ちょっとしたロールプレイングゲームみたいでいいかも。
そうだ、これからは一緒にラーメンを食べに行った時のブログについては、師匠と弟子のラーメン日記みたいにしましょうか?」
「おおっ、いいですね!
ブログをコラボするって面白そう!
で、ネット上では朱里さんは中年の独身男性で通すんですね。」
「ふふふ、そうします。今までそうしてきたから。
麺汁好き蔵の正体が若い女性だって知ってるのは蒼汰さんだけでいいと思います。
もし女性とわかれば、注目を浴びてロクなことにならないと思うんです。
中年の独身ラーメンオタクで太りぎみって感じがリアルでしょ?
そして、ラーメン一緒に食べに行った時は、ブログでは男性二人で一緒に食べに行ったことにしましょう。」
「ネット民を欺くんですね。
そうですね。
太った中年のラーメンオタク多いですからね。読者にはそう思わせた方が安全でしょう。
それから、男女二人で食べに行ったなんて書けませんよ。読者の反感買います。
…うん、女っ気のない男二人がラーメンを食べに行くっていう感じにしましょう。
ラーメンで太ってしまってる男性二人組のイメージがわかりやすいですね。」
「ふふふ、やっぱり?
ちょっと嫌な絵図だけどその方がリアリティありますよね。
そうしましょう。
それにしても、私、ずうずうしくお宅にお邪魔してすみません。
初めてお会いしたばかりなのに、失礼しました。
でも、便利なところですよね。
蒼汰さんの家からなら、都内のいろんなラーメン店に簡単に行けます。
羨ましいです。」
「そう言われるとそうですね。
実に便利なところですね。
東京の飲み屋街で、飲んだくれても、30分くらいで帰れるから、助かります。
実家に帰るとなると、1時間30分以上かかりますからね。」
「蒼汰さん、お酒は好きなんですか?」
「それほど強くはないんですけど、好きですよ。
お酒というより、つまみにする焼き鳥が好きなんです。ホルモンとかも好きです。」
「焼き鳥、ホルモン・・・大好物です!
私、ちょっとおじさんっぽいんだけど、お酒のつまみってすごく憧れるんです。
学校の同僚とはあまり行く機会がなくて・・・。
またまた、ずうずうしいんですけど、今度東京の美味しい焼き鳥屋さんに連れてってください。」
「いいですけど、東京で飲んだら、家まで帰るの大変でしょう?やっぱり1時間以上かかっちゃいますよ。」
「じゃあ、蒼汰さん、その時は蒼汰さんのアパートに泊めてください。
お泊りセット持ってきますから。」
「え?
いや、・・・その・・・年ごろの女性を泊めるのはちょっと・・・
それに、朱里さんは、弟の担任だったし・・・」
「あ、ごめなさい!
取り消しします。
そうですよね。
・・・・・・
非常識ですよね?
私、何言ってるんだろう?
盛り上がって、変なこと言っちゃった。
ごめんなさい。」
「あの・・・
そうですね。
今日、会ったばかりなんですが、
こんな機会めったにないので、言う事にします。
身元わかっている同士だし。
あの…
俺とまじめに付き合いませんか?
もちろん、将来のことを考えてです。
正式に交際するのならば、俺のところに泊まるのもありかなって思います。」
「ええっ?それって交際の申し込みですよね?
わ、どうしよう?
うれしいんだけど、どう答えていいかちょっと・・・わからない。
困ったな。」
「ははは、困らせちゃってごめんなさい。
いきなりすぎましたよね?
じっくり考えてください。
もし、男女交際するのは嫌で、ラーメン友達でいたいっていうのなら、それでもいいですよ。
俺も、勢いで言ってます。
ノリっていうか・・・。
お互いのことをよく知らないのに、交際を申し込むって変だとも思ってます。
でも、趣味が一緒って素晴らしいと思うんですよ。
まあ、一晩寝た後、ゆっくり考えてください。
全然急かすつもりはありません。
あの・・・
きょうはありがとうございました。」
「あ、こちらこそ。ありがとうございました。
わかりました・・・
ちゃんと考えて、お返事いたします。」
彼女を駅で送ったあと、俺は、不思議な気分になった。
朝、こんな出会いがあるなんて思わなかった。
これは、夢かもしれない。明日の朝になったら、忘れたりしてたりして・・・。
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小山朱里です。
蒼太さんに駅まで送ってもらい、電車に乗ったところです。
自宅に着くまで1時間30分くらいかかる見込みです。
帰りながらいろいろ考えちゃう。
だって、あまりにもいろいろあったから。
まさか、ほぼノーメイク、束ねた髪に眼鏡、
Tシャツにストレートパンツという色気が全くない姿で教え子とそのお兄さんに会うとは思わなかった。
しかも、そのお兄さんはネット上では知り合いだったし、午後は実質デートしちゃって、自宅まで訪問しちゃった。
どうしよう?
交際申し込まれたけど!




