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62 怒られた話


「ぐすん……」

「わ、わかった。分かったから泣くなよ」


 泣いた翠を慰めるなんて何年ぶりだろうか。それとは別に俺の前には笑顔の鬼がいた。

 今は場所を移してアルヘナたちが泊まっている宿屋だ。部屋に招かれた俺は、エニフさんによって即座に正座させられた。


「いいですかナナシさん。親しき仲にも礼儀ありと申します。プレイヤーはゲームの中ではギブアンドテイク、身内と言えど無償の施しなどあってはならないのですよ。しかもその武器はレアアイテムだというではありませんか。無闇にそのような物をちらつかせたりしてはいけません。そういった物品を狙うPK(プレイヤーキラー)を呼び寄せてしまいます。もし今のような経緯で貴方がPKに倒されたとすれば、苦悩するのはアルヘナさんなのですよ。ナナシさんは溺愛している妹さんにそのような責め苦を与えたいのですか? もちろん貴方がそのような事をなさる方だとは、私とて微塵も思ったことはありません。ただ、次からはアイテムをしっかりと吟味し、分からないことは人に聞いてください。ナナシさんもゲームの中で親しくなった方や、相談できる方もいらっしゃるでしょう? 是非とも今後はその迂闊な行動をご自身で(かえり)みるように、重ねてお願い致しますね」


 気付いた時には俺自身も自然に土下座をしていた。あれほど慌てていた心の中も静寂で満ち溢れている。ああ、エニフさんの背後に後光が見える、美しい。

 これが神、か……。



「ちょっと兄さんしっかりしてください!」


 アルヘナにべしっと殴られて我に返った。


「ハッ!? お、俺は何を?」

「ご、ごめんなさい、ナナシさん。大丈夫ですか?」


 エニフさんが俺に頭を下げて心配そうな顔をしていた。あれ、光はどこへ?


「彼女のスキルにやられたんです。エニフも気を付けてください」

「はい、ごめんなさい」


「俺が怒られてたんじゃねえの?」

「すみません。つい感情的になってしまって……」


 とりあえず状況がわからん。情報をくれ。


 落ち着いた2人から、なんで俺がエニフさんに陶酔状態になってしまったかの理由を聞いた。

 なんでもエニフさんは今の俺みたいな迂闊な行動をとるプレイヤーに、ついつい説教をしてしまうらしい。そんなことを続けていたら、【説法】【教祖】というスキルを手に入れたというのだ。これによってエニフさんに改心させられたプレイヤーは、無意識に彼女への畏敬の念を抱くことになったのだとか。


「つまりエニフ教っ!?」

「違います!」


「すでにビギナー教が発足している兄さんには言われたくないセリフですね」

「してんのっ!?」

「「知らなかったんですか?」」


 そんなん知ってるわけねーだろうが! 今初めて聞いたわ! 前に貴広が言ってたのはこういうことかーい!


 教祖として祀り上げられた記憶もないんだが……。必ずしも俺自身が祀り上げられる必要はないのか、ご神体があれば。何がご神体になってんだろうか?

 恐ろしい。何が恐ろしいって、俺の与り知らぬところで形になってるものがあるのが。


「兄さん、自分は何もしてないのに、とか思ってるでしょう。そんなことは無いですからね!」

「何故わかった!?」


「いつものことですから」

「……、まあ、そうな」


 テンションが急激に下がる。

 ペットとかダンジョン発見とかやってるもんな。それはわかるんだが、そんなんでビギナー教が発足する経緯がさっぱりだ。


「ナナシさんはずいぶん落ち着いていますね。その人たちについて何か思うことはないのですか?」

「別にこっちに干渉しないんだったらほっときゃいいじゃん。自主的に活動してるファンクラブみたいなもんだろ」


 俺に関する何かしらをご神体にしてるようなら、乗り込んで行ってぶっ潰すけどな。


「悪い笑みを浮かべてましたよ。兄さん」

「おいたをしてなかったらいい。さて、俺はいったん落ちるぞ。そっちは?」


「ずいぶん早くないですか?」

「バイトがあるんだよ。この続きは明日だ」

「そうですか。こっちはもう少し探してみます」


 チラリと視線を動かした先にはギルドから出てきたアニエラさんとデネボラさんがいた。セルテルさんとこへ行くのはまた明日にしよう。俺は4人へ手を振って別れ、宿へと向かってログアウトした。

 ちなみに毒針のスティレットだが、お金を貯めたら1本は買い取るというのでおとなしくインベントリで死蔵する予定だ。

 競売に出さないのは、PKに買われると惨事になるかもしれないからだな。

 もう片方は気が向いたら競売に出してみよう。



 本日までのステータス


名前:ナナシ

種族:人間

職業:ビギナーLv.12

SP:15


所有スキル:

【格闘Lv.30】【投擲Lv.20】【蹴りLv.8】

【急所攻撃Lv.17】【カウンターLv.15】

【死霊術Lv.8】【生活魔法】

【闘気】

【観察Lv.18】【気配察知Lv.15】

【忍び足Lv.5】【軽業Lv.5】

【料理Lv.21】【調合Lv.3】【大工Lv.1】

【植物知識】【鉱物知識】【アイテム知識】

【毒耐性】【暗視】

【解体】


ユニークスキル:

【城落としLv.3】

称号:

【後先考えぬ者】【スライムの友】【アラクネの友】

【草を食む者】【闇を歩む者】

【ネッツアーの加護】【マルクトの興味】【ゲヴラーの興味】


ペット

名前:アレキサンダー

種族:レッドスライムLv.■


名前:シラヒメ

種族:アラクネ(幼体)Lv.10


 昔の記憶を引っ張り出すのががが……。

 城サの話ではないのですが、書いてるうちに混じってくるという。

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