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159 魔の森の話(1

 なんだか夏頃より1日のアクセス数がおかしい……。

 特に掲示板回のアクセス数が異常(苦笑

 さて色々探さなくては。

 嵐絶と別れて北の方角に向かってまっすぐ進む。

 嵐絶はギルドから黒い木を切り倒す依頼を受けている、というので別行動だ。

 こちらは目についた物から1つずつ採取していくことにしよう。


 水蔓は棍棒のような太い部分に、甘味のある水分を貯めている蔓草だ。

 木の枝から垂れ下がっている1本が高さ5mもあるので、シラヒメに登って上の方を切ってもらう。落ちてきたそれを傾けないように受け止め、インベントリに納める。

「1種類につき5つもありゃあ充分だろ」

「はァイ」


 夜光草。

 一見すると青いパンジーのようだが、花弁の部分が夜になると緑色に光る草。

 根っ子が滋養強壮の薬になり、花弁からは青い塗料の元が採れるという。

 緑なのか青なのかどっちかにしてもらいたい。

 アレキサンダーが生えている所に覆い被さり、しばらくすると体内から綺麗に抜かれた夜光草が浮かんでくる。

 根っこに土もついてないので、アレキサンダーの利便性ここに極まれりだ。


 てのひら草。

 人の手のような形をした茶色い葉を持つ草。葉の表面に微細な鉤があり、皮膚が触れると猛烈な痒みに襲われる。

 葉から痒み成分を抽出し、痒み止めなどの薬となるらしい。

 こっちは痒みなどものともしないグリースが、見付けしだい摘んでくる。


 ハンギングガ。

 全長3mもある巨大な緑色の蛾で、茂みや木蔭に擬態して獲物が通りかかるのを待ち、背中から襲い掛かる。

 前肢で首を絞めつつ、首筋の柔らかい肉をかじるという肉食の虫である。

 雌の腹から卵を取り出し、幼虫を育てて糸を取り出す仕事があるようだ。

 幼虫は最大4mになるという。


「がうっ! ぐるがあああっ!」「メメメエェッッ!」

「待て待てツイナ! ボコボコにし過ぎ! ストップストーップ!」

 ツイナの頭上から襲いかかったハンギングガは、羽根で振り払われて地面に落ちた。

 その後にマシンガンの如き炎の矢の連射をくらい、あっという間に穴だらけの真っ黒焦げに。

「ぐるるるるるるっ!」「べっ!」

「唾を吐くな、唾を」

 随分な死体蹴りだなあ。魔物だけど。

 とてつもなく機嫌の悪いツイナをわしわしと擦ってなだめてやる。

 俺たち以外が背中に触れることがとてつもなく嫌なようだ。

 アレキサンダーはハンギングガの死体を呑み込み、卵だけを摘出してくれた。

 卵は直径5cmくらいのオレンジ色で、数は30個だった。

「これが多いのか少ないのか、よく分からんな。またいたら考えよう」

 ぽよよん。

「がうう~」「メエェ~」

「コケッ」

「はイ」


 そこから10mも行かないうちに、今度はマダラオオアリというでっかい蟻に出くわした。

 頭が俺の腰くらいの高さにあり、体長2mもある。

 それが赤、青、黄色と信号機みたいな体色の3匹が現れた。

 最初は別々の種類の蟻だと思われていたらしいが、同巣の中でも多彩な色合いがいる同種の蟻だったという。

 甲殻は固いが熱に弱く、熱湯に漬ければ自在に形を変えられるらしい。

 滅多にいない金と銀の甲殻が高値で売れるそうだ。


 それが大顎をガチガチ鳴らして向かってきたので、迎え撃つ。

【闘気】をちょっぴり込め、飛びかかって来たところに大きく振りかぶってタイミングを合わせる。

 大顎を開いた頭部ど真ん中に拳を叩きつければ、パァン! という音と共に頭部が弾け飛んだ。

 頭を失った体はドサッと倒れ、しばらく足を動かしてもがいていたが、そのうち動かなくなった。

 俺が倒したのは黄色だったが、青色の奴はツイナとアレキサンダーのダブル火炎放射で燃やされていた。

 赤の蟻はシラヒメの網で絡めとられ、グリースの蹴りで首を折られて絶命している。

 ドロップ品は腹の部分の甲殻だった。

 叩くとコンコンと鉄でも叩いたようなかん高い音がする。

「しかし、ちょっと力を込めすぎたなー」

 まさか頭が消失するとは思わなかった。【甲殻スレイヤー】と【カウンター】と【闘気】の威力としては妥当なのかなあ。


「おトウサマ」

 シラヒメに呼ばれてそちらの方を向けば、いつの間にか木の上に登っていた。

 そこから糸で束ねた白いものをするすると下ろしてくる。

 手元に来たそれは白いキノコだった。

「シロノオタケか。これも一覧にあったな」

 紙を取り出して確認してみる。

 傘の裏に黒い筋が入っていたらクロノオタケといい、触れるだけで劇毒に侵されるという。

 アイテム知識と植物知識があるから、そうそうシロノオとクロノオは間違えないだろう。

 見つけたら毒消しポーションのために、1つは確保しておきたい。

 シロノオタケは高級料理に使われるくらいには美味らしい。


「しかし森に入って100mも行かないうちに、こんだけ集まるものなんだなあ」

 表層面でこれだけあるのに、なんで不足してるのやら?

 今のところ危険らしい危険もないんだけど。他の人たちはいったい何と遭遇したのだろう。


 とりあえず【気配察知】に感じられた足元の何かに対して、足で破撃を撃ち込んでおく。

 アレキサンダーたちは、俺が振り向くより先にその場から飛び退いていたので、影響は受けないだろうと思って全力でだ。

「ギィィッ!!」

 断末魔の声?

 無理矢理弦楽器か何かを鳴らしたような音と共に、地面から浮き上がって来たのは平べったく真っ黒い何かだった。

 シャドウキラーという魔物らしい。これは一覧に入ってないから素材じゃねえな。

 即殺してしまったから攻撃方法は分からず仕舞いだ。

 平べったくって丸いこと以外、さっぱり分からん。


 ドロップ品はシャドウシミターという刀身が真っ黒な剣。

 光の届かない暗闇で使うなら、相手の防具や衣服を透過してその身を切り刻める魔法の武器だ。

「魔法の武器っつーのは初めてだが、これは競売に出すわけにはいかねーな」

 どうみても暗殺用だろう。

 そういえばアルヘナが暗殺者に転職した、とか言ってたから売るか?

 通信用チャットを開き、アルヘナにアクセスする。

 1分ほど待つと相手が出た。


 アルヘナ:はい。兄さん、今度はどうしましたか?

  ナナシ:魔法の武器が出たんだが幾らで買う?

 アルヘナ:はい?

  ナナシ:魔法の武器を50万で売ってやろう

 アルヘナ:はあああーーーっっ!?


 大絶叫である。思わずチャットを閉じるところだった。

 うるせえ。


 アニエラ:ちょっとナナシ! 魔法の武器って聞こえたんだけど! どんなの? 私にも使える?


 増えた。

 そしてテンションがおかしい。


 デネボラ:ナナシ……。

  ナナシ:おう、どうした?


 ものすごーく意気消沈した声のデネボラまで混じる。

 今にも死にそうな感じなんだけど何があった?


  エニフ:ナナシさん。魔法の武器に50万は安過ぎでは な い の で す か?


 ……あれっ、なんだか気温が低くなってないか?

 

 ※シャドウキラー

 影に潜んで獲物を狩る魔法生物。形状は直径1mもある黒い丸ノコの刃。

 攻撃する際にしか影から出ないので、その瞬間だけ物理攻撃が効く。

 食事は獲物に切りつけると同時に魂を少し削っていく。プレイヤーにしてみれば経験値泥棒みたいなもの。

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