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129 呼び出される話


 灰色ラフレシアことゾンビメーカーのドロップ品は、地下茎の根っこの欠片が俺とデネボラに来ていた。

 これは煮詰めて粉末にすれば、魔法の効果を高めるアイテムになるようだ。

 ペットたちには分配は無し。あたりまえだが。

 代わりにと干し肉を全員に渡しておく。


 そして灰色の花と蔓が巻き付いた杖が1本と、灰色の花がついたショルダーガードが1つ。


「どっちが【解体】の効果だ?」

「両方ともレア……」

 鑑定したデネボラが杖を俺の方に差し出してくる。

【アイテム知識】の方に該当はあるが、こっちは「死灰のロッド」。

 魔法威力上昇、特に暗黒術と死霊術の効果を高める能力がある、と。打撃力はちょっぴり。


 ショルダーガードの方は「死灰のガード」。

 装備をすると根を重ねたようなマントが生え、暗黒術と死霊術の耐性が高まる代物だ。

 防御力もそれなりに高い。

 暗黒術は知らんが、死霊術はエナジードレイン対策か?


「分配はそれで大丈夫かー?」

「うん。適材適所」


 デネボラが「死灰のガード」を装備し。俺が「死灰のロッド」を受けとる。


「魔術士でもないのに杖を持っていたら誰かに何か言われそうだなあ」

「大丈夫。アナタの場合は「ビギナーさんだから」で皆は納得すると思う」


「……嫌な周知のされ方になってきたな」

「自業自得だと思う」

「ぐぬぅ……」


 それで納得するところが納得いかない。

 だからと言って突っ込まれても返答に困るが。


「これはいつ消えるの?」

「この前は1時間はそのままだったな。これで、えーと? 【城落とし】はレベル6に上がってるから、使用すればレベルがあがるみたいだ」


 ここに至るまででレベルが2上昇。ここに来るまでに近接戦しかしてないから【鉄拳】がちょっぴり上がった程度だ。


 ひっくり返った城を見上げてても、首が痛くなるくらいでしかない。

 1番高い尖塔は完全に地中に埋まってるから、入り込めるところにある尖塔の窓に近づいたデネボラが「あ」と声をあげた。


「なにかあったか?」

「この中、セーフティスペース」

「は?」


 覗き込んでみれば、確かにセーフティスペースと表示されている。

「ログインした時に城が消えていたらどうなるんだろうな?」

「ここに下りるか、登録したところに戻されるか。どちらか」

「へえ。いい時間だし、ここでログアウトす……」


 ビーー!


 言いかけたところで緊急コールを示すウィンドウが前後左右に開いた。

 赤と黒の枠に囲まれた「emergency call」がクルクルと周囲を回る。

 公用で視覚化されるので第3者にも見えるだろう。

 現にデネボラがひきつった顔で硬直していた。


「なにっ……!?」

「悪い私用だ」

 俺は手元に開いたキーボードに指を走らせて音を止めてから、別のウィンドウを引っ張り出す。

「第2種緊急集合!? 何があったのやら……。デネボラ! 俺はここで落ちる! この埋め合わせは後日に」

「え、うん……」


 アレキサンダーたちをスリープモードに移行させ、即ログアウトを選択する。

 敬礼をしてデネボラに詫びたところ、向こうはひらひらと手を振り返してくれた。


 一瞬のノイズ画面を経て、VRヘルメットの無機質な金属面が視界に映る。

 投げ捨てるようにベッドから起き上がると、ゲーム内で見たのと同じエマージェンシーが腕の端末を囲んで回っていた。


 簡単に言えば軍の召集状だ。

 特種や第1種などは戦争でも起きない限り通達されることはないが、その1つ下ってだけでも危険度はかなり高い。

 考えられるのは大多数の市民に被害が予想される災害か、事故か


 通達されたメールを開くと意味のない文字が羅列された文面が表示された。

 暗号通信なのでこのままでは読めない。

 端末の方で立ち上げたフィルターを通せばやっと読めるようになる。

「なんだって? 各自の所在地を明確にしてビーコンを発信せよ? 拾うレベルの緊急かっ!? こりゃ大通りまででた方が早いな!」


 端末さえあれば大した準備は必要ない。

 部屋を出て素早く階下に駆け降りると、水を飲もうとしていた翠がびっくりしていた。


「ど、どうしたんですか兄さん? そんなに殺気だって」

「軍の呼び出しだ。出てくる」

「あ、はい。え?」


 翠が目を丸くして口ごもる中、俺は外へ飛び出した。


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