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128 廃村で出会う話


 壁を物理的手段で越えた先は、進めども進めども終わりがみえない通路が続く。

 そして、少し進むたびにゾンビと遭遇する。

 この先に何があるのか分からないので、デネボラとツイナには魔力を温存してもらう。

 ゾンビ程度なら殴り倒せば済むことだ。


 ただゾンビとはいうものの人間のゾンビだけでなく、コボルトやゴブリンやリンルフのゾンビも混じってる。

 ここがダンジョンのカテゴリーに入るか分からないが、リンルフは外から入って来てんのか?


 トロッコ用の線路は延々と続いているし、坑道自体は右に左にと蛇行しているがまだまだ先がある。

 徒歩で3~4kmぐらいは進んだころだろうか。


「あ」

「お?」


 通路は緩やかな上り坂に変化した。そしてトロッコの線路はここで途切れている。

 そして通路の先の方に光が差していた。 


「やれやれやっと出口か?」

「でもおかしい。方角からいってベアーガの反対側」

「あ、やっぱりそうなのか」


 手元でマップを確認していたデネボラが首を傾げている。

 ベアーガは谷の入り口みたいなところにあった。

 その裏側にある坑道が抜けた先が、谷の向う側というには近すぎる。


「谷と谷の間かなにかか?」

「それにしては風景が拓けすぎている」


 坑道というより、出口はもう洞窟のように自然すぎた。

 その先に広がっているのは木々の生い茂る森だ。

 まだ下生えの草も少なく、奥の方までの見通しも利くので林かもしれない。


 空はどんよりと曇っていて、湿った空気の匂いも漂っている。


「雨が降りそうだなあ」

 俺が呟くと足元にいたアレキサンダーが大きくジャンプして、頭の上に着地した。

 どうやら傘になろうとしてくれているようだ。

 円盤みたいに体を大きく広げていたところを、押し留める。


「大丈夫だぞアレキサンダー。それは雨が降ってきてからな」

 ぷるぷる震えていたアレキサンダーだが、俺がもう1度撫でると元の真ん丸に戻った。


 このやりとりの最中にも、林からリンルフのゾンビが内臓を引きずりながら襲ってきたが、ツイナのライオンパンチによって撃退された。


「この辺り一帯がゾンビの温床?」

「墓場でもあるかもしれないぞ」


 デネボラの呟きに足してみる。

 墓場があるなら、村か街があるということだ。

 だが、こうも散発的にゾンビの襲撃があるならば、その集落はとっくに滅んでいるかもしれない。

 そういう結論に至るほど、ゾンビの数も多いのは確かだ。

 魔石も手に入るし、俺が手を出さなくてもアレキサンダーたちでも倒せるし、ゾンビ様々ですなあ。


 まあ、林を抜けたら村があったんだが、一軒一軒は見るからにボロボロである。

 屋根から雑草は生えてるし、壁は朽ちていてあちこち崩れているようだ。


 そして5体くらいの集団で襲ってくるゾンビ。

 動きが鈍いのでシラヒメが網で捕獲。アレキサンダーの火炎放射と、ツイナとデネボラのファイヤーボールで終了だ。


「ここがゾンビの温床で間違いなさそうだな」

「あ、敵」

「敵?」


 デネボラの指し示す方を見れば、地面に咲く大きな花があった。

 ポコボコと凹凸のついた花弁。剣山のように雄しべだか雌しべだか分からんものが突き立っている中央部。

 形としてはラフレシアみたいなものか。あれは直径10mもないと思うが。

 あとは全体が灰色だったりとか、花弁の付け根から4本の触手が伸びていたりするところは、普通に植物じゃあないだろう。


 灰色ラフレシアは俺たちが近づくのに気づいたらしく、触手を激しくうねらせた。

 灰色ラフレシアは周囲の地面に触手を接触させると、引っ張り出すように人ゾンビを出現させる。

 その数は触手と同じく4体だ。


「うげ、あれがゾンビの発生元か!」

「個体名ゾンビメーカー。あれに喰われたらゾンビにさせられる。本体は地下茎」

 すかさずデネボラが鑑定した結果を伝えてくれる。

 やっぱ便利だな鑑定。【モンスター知識】を取ろうかなあ。


「ああいう動かない的ならこっちのものだ。デネボラ、アレキサンダー。後退しながらゾンビは各個撃破してくれ」

 俺はその場から大きく後ろへ跳ぶ。

 デネボラは頷くことで、アレキサンダーはぽよんぽよんと跳ねることで返答する。

 アレキサンダーに伝えればグリースやツイナもその指揮下に入るから、その都度命令を飛ばさなくて済む。

 シラヒメはグリースを抱えると俺のいるところまでバックしてくる。

 アレキサンダーはゾンビを2体まとめて火炎放射で潰し、ツイナはファイヤーボールでデネボラはファイヤーランスで始末する。

 そしてすぐにその場を離れる。

 こちらの準備は終了。アレキサンダーたちが離れた瞬間に俺の最大火力を落とすだけだ。


「【城落とし】」


 灰色ラフレシアの真上に出現したのは上下を逆にした城である。

 鋭角の塔が幾つも目立つノイシュバンシュタイン城だ。一際大きい尖塔が動かない的である灰色ラフレシアを刺し貫き、周囲の廃屋を押し潰しながら大地に突き刺さった。

 大地を揺るがす轟音と爆風が砂煙を生じさせ、茶色い砂塵の津波が俺たちに迫る。

 アレキサンダーが体を変型させて俺たちの前に壁として立ち塞がり、ツイナが水のドームを作り出して全員を包み込む。


 ゴウゴウ、ガリガリ、バチバチと様々な騒音と地響きのような振動が収まったのは、城落下から10分くらい経過した頃だろうか。

 アレキサンダーが元に戻り、濁った水になったドームをツイナが解除して外に出てみれば。


 廃村だった真ん中に逆さまになって突き刺さる城。

 基礎を残してほとんど吹き飛んだ村の家屋。

 村の周りにあった木々は、放射状に倒れている。村を中心にしたドーナツ状に、幅5~60mはあるか?


 あとはゾンビメーカーが倒されたことを示すログとドロップ品であった。

 出会うのは敵。

 2巻編集作業につき、更新が途絶える可能性もあります。

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