暫時の決着
どうだ?
感触からして、確実に効いたハズだ。
さっと体を離し、魔物の周りをゆっくり回りながら警戒する。
ヨシタカも、俺に習うように同じ行動をした。
一応の警戒はしているが、倒したと確信している。これで立ったら本物の化け物だ。
丁度魔物の前に回り込んだ。魔物は片膝立ちで頭を垂れたまま、動く気配が無い。
気絶したか?
そっと魔物の顔を覗き込んだ。
ギラリ
魔物の眼が、黒く鈍く輝く。
「うわ…」
俺は思わず尻餅を着いてしまう。
魔物が俺を睨んだ。
「貴様等…」
魔物の鼻と眉間には深々と皺が寄り、眉を逆立て、尖った犬歯を覗かせる。
顔が、醜く、怒りの表情を浮かべた。
「殺してやるっ!!」
俺を睨みながら、ゆらりと立ち上がる。
今までに無い圧倒的な眼力で見下ろされた。
ダメだ…殺される…。
ダメージ的には、決定的に勝っている。
でも、理屈抜きにそう感じた。いや、確信してしまった。
背負ってるモノ…覚悟の量が違いすぎる…。こんな奴、勝てる訳が無い…。
魔物が、ゆっくりと片足を上げた。
踏み殺すつもりか…
恐怖に駆られ、ただ見ている事しか出来ない。
ああ…終わりなんだな…
不思議と、何処か客観的にそう思っている自分も居た。と…
「!?」
魔物の軸足までが宙に浮いた。
「な、何だ!?」
魔物が声を上げた。驚いている。
魔物の腹部に回された腕。胴体をガッチリとホールドし、持ち上げている。
ヨシタカっ!
「そんじゃ、トドメな」
笑いを含んだ声。トドメの宣言までしている。
顔は見えないが、きっと唇の片端だけ上げて、不敵に笑っているんだろう。
「は、離せ!」
魔物がヨシタカの腕を振り解こうと暴れ、叫んだ。
「頼もしい奴だ」
思わず口から漏れた。自然と笑みを浮かべていた。
そして
「喰らえぇ!」
ヨシタカが勢いよくブリッジをした。魔物の胴体をホールドしたまま…
「グアァァァッ」
もちろん、魔物はヨシタカを中心に後方へと投げられる。
ジャーマン・スープレックス
魔物に受け身などとれるハズも無く。
ガンッ
遠心力が乗ったまま、後頭部を地面に激しくぶつけた。
雪がクッションになる事など、全く問題になっていない、鈍い打撃音だった。
「ふぅ…。よっこいせ」
魔物の下になったヨシタカが、魔物を横に転がして脱出する。
「説得力、十分だろ?」
立ち上がって、魔物を踏み付けて笑う。
魔物は、ピクピクと体を痙攣させていた。
「ああ…スゲェな」
俺も立った。
本当、お前が居てくれて助かったよ。ヨシタカ、ありがとうな。
心の底から思った。でも、口には出さない。
「まぁな」
ヨシタカが、得意そうに笑った。
そうだ、幸灯!
不意に思い出す。
いや、忘れていた訳では無いが、魔物との戦いに集中していた。
「幸灯は…」
ヨシタカから視線を外し、幸灯を探してみる。
居た。
逃げなかったらしく、その場にうずくまって居た。怯えたように、ガタガタと震えている。
「幸灯、もう大丈夫だ」
急いで幸灯に歩み寄った。
*
と、真希は行ってしまった。
「幸灯、寒いだろ?」
真希があの子に上着を掛けてやっている。
俺は邪魔そうかな?なんて、軽く肩を竦めた。
帰るか…
今は体を動かした後だから良いが、すぐに汗が凍るほど寒くなるだろう。
真希とあの子の熱々ぶり(死語か?)を見せ付けられると、余計に寒くなりそうだしな。
「そんじゃあな」
二人に手を振り、魔物から離れて鞄を拾いに行った。
げ…
未だに降り続ける雪は、俺の鞄の上にも容赦なく積もってくれた。
水、中まで染みてないだろうな?
手に取り雪を払った。
久々に、珍しく!課題なんてやったんだ。濡れて全部パァになんかなってないだろうな?
中を確認しようと、鞄を開けた。
「ヨシタカ!後ろ!」
えっ…?
首筋に走る鋭い痛み
やけに熱い
えーっと…状況が掴めないんだが…?
目の前に広がるのは…
何かを叫ぶ真希
顔を蒼くした少女…
真っ白な雪…
真っ暗な闇……
光る…月……
焦点が合わなくなってきて、全てが霞掛かってきて、全部溶け合って…
もう、何が何やら…?
ヤベェ…気持チ良クナッテキタ……
読んでいただき、有り難うございます!
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新たに気合いを入れ直し、更新していきたいと思います!
もう、4月になってしまう…orz




