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第5話 二人の始まり

こんにちは、市九郎です!

第5話、お楽しみください!ではっ!

 第5話


 朝靄が立ち込める、まだ薄暗い森で目を覚ました俺は、一人考えていた。

 あの時、宿場村で自分を支配した謎の感情。

 微かに、しかし確実に感じた感覚。

 あれは飢えだ。

 空腹とは別の、身体の底から湧き上がる様な飢え。渇望と言い換えてもいい。


 「魂の……渇望……」


 そんな言葉が流れ出る程、強烈に意識の底にへばりついている。

 ソニアによれば、村人達が逃げた後、俺は木に齧り付き、しばらく暴れて倒れたらしい。

 もしもあの時、村人が逃げずに近くにいたら……

 そんな恐ろしい想像が膨らむほど、激しい衝動だった。


 「どういう事なんだ……父さん……俺に何が起こったんだ……?」


 頭を抱える俺を他所に、ソニアは深く眠りの泉に潜っている。

 安らかに、無音で眠る彼女を見ていると、自然と心が落ち着いた。


 「……んん……ディア……?」


 俺の視線に気付いたかの様に、ソニアは静かに目を覚ました。


 「おはよう、ソニア」


 ソニアの目覚めと共に、森にも朝の空気が流れ込み、柔らかい光が差し込み始めた。


 「おはよう……んっ……はぁ! こんなにぐっすり寝たの、いつぶりだろう……」


 大きく伸びて上体を起こしたソニアは、久方ぶりの熟睡の余韻に浸っている。

 そんな彼女を見ていると、暗い心配事は夜と共に退散したようだった。


 「顔を洗ったらパンを食べよう。少ししたら出発だ」


 リンガー王国まではおおよそ3日程度の旅だ。

 一人旅ではないから、仲間の事も考えて計画を立てなくてはならない。


 「村の外へ出るのって、初めて」


 朝食の最中、ソニアはそう言った。


 「そうなのか。外には面白いものが沢山あるんだ。リンガーに着くまでにいくつか街を通るから、案内するよ」


 「ほんと? 楽しみ!」


 食い気味に返事をしたソニアは、早く行こうとばかりに、パンを頬張った。

 見たところ、歳は自分とそう離れてはいないはずだが、ソニアはやけに幼く見えた。外見は年相応だが、言動には時々、幼さが垣間見える。


 「じゃ、そろそろ行こうか」


 身支度を終えて声を掛けると、いざとばかりにソニアも立ち上がった。


 「うん! 色々教えてね、ディア!」


 澄んだ瞳に吸い込まれそうになった俺は、大きく頷く事で視線を逸らした。


 「ああ、旅のはじまりだ」


 俺たちは森を抜け、リンガー王国へ向けて出発した。

 数時間後、ちょうど正午を過ぎたあたりから日差しが強くなり、ソニアの歩くペースが落ち始めた。


 「ううー、暑い……ずっと森で暮らしていたから知らなかったけど、日差しってこんなにも暑いのね……」


 今は夏季の真っ盛り。オーズ王国周辺の夏季は暑い事で有名だ。日陰で生活してきたソニアには、かなり堪えるだろう。


 「もう少ししたら村がある。そこで少し休もう」


 旅人が多く通る道には、小さな宿場村、そして大小様々な規模の商業都市が点在している。

 

 「次の村までもうすぐだ。あと少し頑張……」


 励ましの言葉をかけようと振り向くと、ソニアがヘナヘナと座り込んだ。


 「うー、少しだけ休まない?」


 休むと言っても、ここには日陰も何もない。

 かと言って、無理に歩かせるのも危険な暑さだった。


 「仕方ないなぁ……少しだけだぞ」


 「え……ちょ、うわぁ!」


 へたり込むソニアを背負うと、俺は再び歩き始めた。成果は無いにしろ、これまでの旅で、足腰には自信がある。


 「へへ……優しいね、ディア」


 耳の後ろでソニアが呟く。


 「暑いから、顔近づけないでくれ」


 「もー、冷たいなぁ」

 

 ソニアが軽く後頭部をこづいてきた。


 「態度だけでも冷たくないと、溶けそうだよ」


 そんな会話をダラダラしつつ、俺とソニアは最初の村に到着した。


 「すごい賑やかな村だねぇー。色んな種族の人がいるよ」


 早々に背中から降りたソニアを追いつつ、予想よりかなり軽かったソニアの感覚を、俺はその後もずっと覚えていた。


 つづく

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

自分の書いた文章を、話数毎に見てくださる方がいるのは、とても不思議で、嬉しいですね。

ディアとソニアの旅は始まったばかりですので、お楽しみに!

ご意見、ご感想、ご指摘等、お待ちしております!

ではっ!

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