第4話 物語の始まり
こんにちは、市九郎です!
少し遅くなりましたが、第4話、よろしくお願いします!ではっ!
第4話
「全く、ビックリしたよホント」
火を熾しながら、俺は素直な感想を述べた。
「4日前から何も食べてないなんて、よく泥棒する体力があったもんだよ。はいこれ」
オーズ王国の旅人は、非常食として保存がきくパンを携帯している。麦が特産の国ならではだ。
「生きて……いけないから……」
少女が当たり前のように呟いた言葉に、ハッと気付く。
泥棒をする体力があったんじゃない。しないと生きていけないんだ。
俺は、自分の世間知らずを恥じた。
「そうか……まぁ、とりあえず食べなよ。うちの国の麦は美味いんだよ」
俺はパンと一緒に、小川の水を汲んだコップを手渡した。
「……あなたは……誰……?」
そういえば、まだ自己紹介もしていなかった。
「ああ、俺はオーズ王国の旅人なんだ。両親を探す旅をしてる。あの短剣も、父さんのなんだ」
話を切って、目で少女の番だと伝えた。
「私は…………」
そこまで言って、少女は黙ってしまった。
「どうしたんだ? 具合が悪いのか?」
少女は首を横に振った。
「分からないの……何も……村の人には、ドブ娘って……呼ばれてた。それが、私の名前なの?」
心底呆れた奴らだ。同じ人間とは思えない仕打ちの数々。でも、これも王国の外では普通なのかもしれない。
「そうか……君の名前は決してそんなじゃない。見たところ、君はエルフ族だ。耳が俺より長くて、髪の色も違うだろ?俺は人族なんだ」
初めて聞くであろう自分の情報に、少女はどう反応すべきか分からない様だった。
「なぜ分かるの?」
少女は不思議そうに聞いた。
「エルフの国、リンガー王国は、俺の故郷のオーズ王国の隣国なんだよ。交易も盛んだから、オーズ王国内でもよくエルフを見かけるんだ」
「そうなの……」
この少女は、これからどうするんだろう。
自分の事も、世間の事も何も知らずに、この先生きていけるのだろうか。
「君は、これからどうするんだ?」
少女は困惑顔になりながらも、答えた。
「分からない……でも、私と同じ種族が住む国があるなら……行ってみたい」
恐らく、これは少女にとっての、初めての願いだろう。泥と暴力に満ちていた人生に差した、光の筋。未来への転換点。
「多分、リンガー王国はここから遠くない。昨夜の宿場村から、ここはそう離れてないだろ?」
ボロボロの少女が育ち盛りの男を運べる距離だ。きっとそう遠くないだろう。
「うん……今の体力なら、すぐに戻れるはず」
なら、俺がこの少女にしてあげられる事は一つだ。
「君が嫌でなければ、リンガーまで一緒に行かないか?装備の調達も必要だしさ」
少女の顔がパッと明るくなった。
「い……いいの……?」
こっちの顔の方が、ずっといい。
「ああ、もちろんだよ。短い旅だけど、よろしくな」
満面の笑顔で、少女は頷いた。
この純粋さは、悪用厳禁だ。
「一緒に行くんだから、呼び名を決めないとな。何がいいかなぁ」
小川の側で、互いを知り合った。澄んだ水の様な瞳の少女。
「ソニア……君は、ソニアだ」
人族が祀る水の女神ソニア。その瞳に見つめられた者には、水精の加護が与えられるという。
「ソニア……ふふっ、綺麗な名前。……ありがとう」
初めての、旅の仲間。俺の心は、未来への希望で満ちていた。
「……あなたの名前は?」
ソニアの声で、我に帰った。
「俺の名前……俺はディア。カルディアクス・アシダムだ。長いだろ?」
ソニアは思案顔になった。
「ディア……でいいの……?」
他人を初めて名前で呼ぶのだろう。誰でも初めては慣れないものだ。
「ああ、いいよソニア。よろしくな。早速、明日の朝出発しよう。きっと楽しい旅になるよ」
と、ソニアの顔が急に曇った。
「どうした? 腹でも痛いのか?」
ソニアは言いづらそうに口を開く。
「その……ごめんなさい……大事な剣を……盗んだりして……」
なるほど、気にしてたんだな。
「もういいさ。気にしてないよ。でも、もう盗みはダメだ。腹が減ったら俺に言うんだ」
「うん。もう泥棒はしない」
「ああ、約束だ」
ソニアと俺は握手を交わし、来たる明日に備えて、眠ることにした。
つづく
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
エルフの少女ソニア、主人公ディア。やっと名前が明かされましたね。遂に物語が本格始動します!
ご意見、ご感想、ご指摘等、お待ちしております!
あと、もし登場人物の見た目を想像するならこんな感じ!というご意見がございましたら、是非お寄せください!完全に作者の興味本位です!ではっ!




