穴の謎と少しの和解
「……なるほど、みのりんさん達が天井から降って来たのは、そういう経緯だったんですね。あれは本当にビックリしましたよ」
「いやぁ、私も確信は無かったからさ。実際に床を撃ち抜けた時は驚いたな〜」
人型兵器の討伐に成功した、みのりん達は、そのまま部屋に残り、雑談に興じていた。
何故、さっさと先に進まないかというと、消耗した体力や精神力を回復し、万全の態勢を整えるためである。
恐らく大丈夫だとは思うが、万が一、この先に第2、第3のボスが待ち構えていた場合、あっさりと全滅してしまう事になる。
その可能性を考慮した、みのりん達は、一時の休息を取って英気を養うと共に、これまでの互いの冒険について報告し合っていたのだった。
そして、今は、みのりんがラックの窮地に駆け付けたカラクリを説明し終えた所だ。
「それにしても、まさか、各層の小部屋に空いていた謎の穴が全て繋がっていたとはね。しかも、それが、ボスの部屋に通じる隠しルートを示していたなんて……。普通なら、まず見落として気付かないよ」
呆れと尊敬が入り混じったような口調で、ベイドが苦笑する。
そう、みのりん達が第一層から見つけていた、【謎の穴】。
それが、ボス部屋に通じるカギとなっていたのだ。
ちなみに、この上の階層、つまり、みのりん達が降りてきた階層の床には穴が無かった。
代わりに、天井から差し込む光が床の一部を照らしていたのだ。
その部分を良く観察した、みのりんは、周囲の床と少しだけ色が違う事に気付いた。
そして、今まで続いていた光の通り道が途切れた理由を考えたのだ。
その結果、『この床だけは他と違って貫通することが出来るのでは?』という結論に達した。
それで実際に試してみたら、予想通り、階下に降りることが出来たという訳だ。
「そんな秘密に気が付くなんて、流石、みのりんさんです! ……というか、みのりんさん達が通ってきたルートは何かと頭を使う仕掛けが多かったようですね。その穴もそうですけど、痺れ薬を塗った毒矢の話もありましたし。僕達のルートは、ひたすらモンスターとの戦闘でしたよ……」
ここまでの、道のりを思い返しているのか、ラックが遠い目になった。
どことなく瞳から光が消えている気がするが、まぁ多分、気のせいだろう。
「あー、なるほど。それで、私達のルートはモンスターが少なかったのかな? ベイドさんを背負ってる時も全然、襲って来ないから不思議だなって思ってたの」
「そういや、お前、みのりんにおんぶして貰ったんだっけ? ププッ、騎士様ともあろう者が、だらしねぇなぁ」
カナがここぞとばかりに、ベイドをからかうが、当の本人は涼しい顔だ。
「フンッ、身を挺してレディを庇った結果なのだから、恥じることなど何もないね。それに、僕は麻痺が抜けるまで休めば良いと言ったんだ。それじゃあ競争に負けるからと無理を押し通したのは彼女だよ」
「チッ、口の減らねぇ野郎だぜ」
「君にだけは言われたくはないけどね」
相変わらず、水と油のように相容れない二人だが、初めて会った時に比べれば、随分と棘が抜けた態度に見える。
タイプは違えど、戦闘において己の価値を示す二人だ。
背中を預けて戦ったという経験が、二人の関係に良い影響を及ぼしたのだろう。
となれば、残る問題は、あと一つ、いや二つだけ。
それも、このダンジョンの攻略が終わる頃には解決するはずだと、みのりんは頬を緩めていた。




