ベイドの告白
「前にも言ったことがあると思うけど、僕の家は代々、優秀な騎士を数多く輩出してきた名門の家柄でね。当然、父上も、母上も、兄上も、姉上も、みんな優秀な騎士なんだ」
「ふーん、ベイドさんも騎士になって、商売までやってるし、本当に凄い家族だね」
みのりんの褒め言葉に、しかしベイドは自嘲気味に笑う。
「いや、違うんだ。父上たちは、僕なんかと違って騎士として完成されている。なんせ、最上位職に就いている訳だからね」
最上位職とは、文字通り、この世界における最も高位な職業だ。
多くのプレイヤー、そして、NPCにとっての憧れであり、一つの到達点。
特に、年齢制限があるプレイヤーにとっては、非常に狭き門と言える。
ただゲームを楽しめれば良いというスタンスでは、まず辿り着かない境地である。
「へぇー、家族みんな最上位職に就いているなんて、さすが名門だね。……あれ? でも確か、ベイドさんって」
「そう。僕は、まだ剣士の上位職である騎士でしかない。最上位職なんて夢のまた夢だよ」
どこか投げやりな口調で、理想と現実の違いを語るベイド。
「でも、ベイドさんって、まだ未成年でしょ? 別に気にしなくても良いんじゃない?」
珍しく弱気な態度を見せるベイドに、そんなフォローを入れる、みのりんだったが、背中で首を振る気配があった。
「兄上と姉上が僕くらいの歳には既に最上位職に就いていたよ。父上や母上も同じ。僕だけが、家族で唯一の汚点なのさ」
失望、羞恥、怒り、悲しみ、憎しみ、そして、無力感。
様々な感情が入り混じった、その言葉の重みは、本人にしか理解できないものだろう。
事実、そんな重圧とは無縁な世界で生きてきた、みのりんには、ベイドが何故そこまで自分を貶すのか分からなかった。
「汚点……かぁ。名門の家に生まれると大変なんだねぇ。ひょっとして、それを理由に家を追い出されたりしたの?」
「いいや、まさか。確かに父上も母上も厳しかったけれど、同時に誠実で思いやりのある人達だった。兄上や姉上も、歳の離れた弟の僕を良く可愛がってくれた。……僕が自分の意思で逃げたのさ。家族の期待に応えられない事に耐えられなくてね。それで、自分の強さを活かせる商人になって、生計を立てるようになったんだ。それからは比較的、順調だったよ。騎士でも、この辺りのモンスターくらいなら苦もなく倒せたし。僕には、それなりに商才もあったようだからね。ただ、家族から逃げた罪悪感と劣等感は、いくら商人として成功しても消えてくれなかった」
まるで、自らの罪を告白し、懺悔する罪人ように、ベイドは項垂れている。
みのりんは背中に掛かる重みが、心なしか強くなったように感じた。




