恥と名誉とベイドの秘密
「くっ、まさか、この僕が年下の少女に擁護される無様を晒す事になるなんて……。一生の不覚だ」
薄暗いダンジョン内に、ベイドの悔しげなボヤキが木霊した。
時はダンジョン攻略を開始して数時間が経過した頃合いだ。
「も〜、人の背中でブツブツうるさいな〜。いつまでもウジウジしてると余計にカッコ悪いよ?」
そう、現在ベイドは、みのりんに背負われている。
いわゆる、“おんぶ”されている状態だ。
何故、こんな事になっているかというと、彼の顔色にヒントがある。
今のベイドの顔は血の気が引いて真っ青になっており、全身に緑の斑点が浮かんでいるのだ。
「うっ。た、確かに、過ぎたことを悔やんでも仕方ない……か」
「それに、私を守ってくれたんだから、名誉の負傷って奴でしょ? 気にすることないって」
それは、ほんの数分前のこと。
ダンジョンに仕掛けられたトラップの一つに引っ掛かり、みのりんに危機が迫った時、ベイドが身を呈して、みのりんを庇ったのである。
そのトラップは、前方から矢が飛んでくるというシンプルなものだったが、ただでさえ薄暗いダンジョンな上に、光を反射しない漆黒の矢が放たれたため、避けることが出来なかった。
加えて、ダンジョンのトラップにのみ使用される特殊な麻痺毒が塗られており、ベイドは行動不能に追い込まれてしまったのだ。
そして、その一件に責任を感じた、みのりんがベイドをおぶって移動しているという訳だ。
「……分かった。もう気にしない。それと君も気に病む必要はないぞ。レディを守るのは騎士として当然の役目だからな」
「おお〜。珍しくベイドさんが、まともなこと言ってる! いつもは嫌味ばっかりなのに。やっぱり調子が悪いの? 頭ナデナデしたげよっか?」
「ええい! 子供扱いするじゃない!」
「はいはい、暴れると落っこちるから、大人しくしててね〜」
ジタバタと藻掻くベイドだが、やはり力が入らない様子で、どちらかと言うとモゾモゾに近い動きだ。
とはいえ、そもそも二人には体格差があるので、余計に動かれるとバランスが取り辛い。
ベイドも、それを察したのか、それ以上の抵抗はせず、素直に大人しくなった。
「そもそも、適当な小部屋で休めば良かっただろうに。どんなに強力な麻痺状態でも時間経過で回復するのは一緒だ」
「駄目だよ。それじゃあ競争に負けちゃうじゃん。それに、ベイドさんには大事な仕事が控えてるんだから」
「なんだ、それは? 聞いてないぞ」
「言ってないからね。まぁ、でも全力で攻略に集中してくれれば、勝手に果たされるから、気にしなくて良いよ」
「……さっき言っていたな。僕とチームを組んだのは、ある意味、彼のサポートのためだと。それに関係してるのか?」
「まぁ、そんなとこ」
「……一つ、聞いていいか? 何故、他人のために頑張れる?」
「うーん、別にラックさんのためだけじゃないけど。ラックさんを応援したくなったからっていうのも理由の一つかな」
「応援したくなった……ね。他人に、そう思われるのも一種の才能だな。少なくとも僕には無いものだ」
「えっ、なに? ベイドさんも応援して欲しいの?」
「……少し違うな。だが、詳しく話すと長くなる」
「別に良いよ? 何故か、モンスターも出なくて暇だし」
「……そうか。言っておくが、他言は無用だぞ。僕が他人に、コレを話すのは初めてだ」
そう前置きして、ベイドは語り始めた。




