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幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)  作者: 雪月 桜
第1章 スタートダッシュ:CASEカナ

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情報共有と宣戦布告

「完全勝利っ!」


事前の取り決めを律儀に守り、大人しく去っていく暴漢たちを見送って、カナは勝利の歓声を上げた。


そこへ、みのりんが横から声を掛ける。


「いや、信じてはいたけどさ、相変わらず無茶苦茶だね、カナちゃん」


「おおう!? みのりんじゃん! すまねーな、遅れちまって! って、そっちは、さっきの兄ちゃん!」 


「ど、どうも。先ほどは、お世話になりました」


唐突に登場した、みのりんに驚いた様子のカナだったが、その隣のラックを見て表情を安堵に変える。


そして、嬉しそうに、こちらへ寄ってくると、ラックの肩をバンバンと叩いた。


「いやぁ、あんた無事だったんだな! いつの間にか消えてっから、ちゃんと逃げられたんだとは思ってたけど、実際、何もなかったみたいで安心したわ!」


「は、はい! 本当に、ありがとうございました! あの、僕はラッカードと申します。先ほど、みのりんさんにも自己紹介しましたが、カナさんも気軽にラックと、お呼びください!」


「おう、ラック! また何か因縁でも付けられたら、遠慮なく呼べよな。力なら貸してやっから!」


さほど身長の変わらないラックと、気安く肩を組んで、カナが頼もしく宣言する。


そんなカナの態度に、ラックは顔を赤く染め、慌てた様子で距離を取った。


年の近い異性とのスキンシップは、真面目そうな彼にとって刺激が強いのだろう。


「い、いえ大丈夫です! 僕も、いつまでも弱いままでは居られませんので。……それより、何かお礼がしたいのですが」


「礼? 礼なら、さっき言ってくれたろ? 言葉以外のもんは要らねぇよ。それより、みのりん! 早く冒険に行こうぜっ!」 


そう言って、慌ただしく、みのりんの手を掴んで走り出すカナ。


当然、みのりんも、強制的にダッシュを余儀なくされる。


「あっ、ちょ、引っ張るな~! ラックさん、またねー!」


「えっ、あの!? 待ってくださいぃぃぃー! 何か、お礼をぉぉぉー!」


呆気に取られた様子のラックを置き去りにして、二人は街の雑踏に紛れていった。


……。


…………。


………………。


「で、なんで私は、散々引き回されたあげく、カナちゃんに奢る事になってるのかな?」


「堅いこと言うなって! まだゲーム始めたばっかで、金がねぇんだよ。それに、冒険前の腹ごしらえと、情報共有は必須だろ?」


場所は第1層の、いつものオープンカフェ。


二人は空いている席を適当に確保して、注文したドリンクと軽食をつまみながら、雑談を交わしていた。


「なら素直に、お礼を貰っておけば良かったのに~。商人さんって言ってたから、結構お金もってたはずだよ?」


「ヒーローは人助けで金や物を受け取らねぇのさ。報酬は笑顔と言葉だけで充分だ」


「はぁ……相変わらずだねぇ」


カナの主張に溜め息を吐きつつ、みのりんは自分のお金で注文したメロンソーダに口を付ける。


パチパチとした感覚が現実よりも強く、口の中に広がり、なんとなく気分がすっきりした。


ちなみにカナは、みのりんの金で注文した、サンドイッチとハンバーガー、ホットドッグにホットケーキをガツガツと喰らい、コーラで喉を潤している。


見ていて気持ちの良い食べっぷりだが、自分の奢りなので、みのりんは複雑な気分だ。


そうして一息ついてから、みのりんは、まず先程の戦闘を振り返ることに。


「最後のアレってさ、やっぱり私が教えた奴だよね?」


「おうさ! 地面が簡単に掘れ過ぎたせいで、奈落に落ちたって聞いたからよぉ。どんなもんかと思って、俺様も少し試してみた訳よ。したら、マジで簡単だったわ。どーやら、地面を掘る時だけその場所が砂に変わるっぽいな!」


【ネバーランド】の大地は、基本的には硬い土に設定されている。


もちろん、最初から砂になっているエリアや、沼になっているエリアもあるが、それはごく一部。


しかし、普段どれだけ硬い大地でも、プレイヤーが【掘る】と意識して、該当するアクションを行えば、簡単に掘ることが出来る仕様となっている。


具体的には、力が加わった部分のみ、形状が土から細かい粒子の砂に変わるのだ。 


それを知っていたカナは、デュエルの時に、この仕様を利用したと言う。


つまり、勝負を持ち掛けたとき、既に自分に有利なフィールドを整えていたのだった。


「勝負事になると、本当に抜け目ないな~。普段は脳筋なのに」


「おいおい、みのりん。俺様は脳筋じゃねーって、いつも言ってるだろ? ……俺様の筋肉は魂まで染まってるからな! 脳筋じゃなくて、魂筋(こんきん)だぜっ!」


「ホント好きだよねぇ、そのフレーズ」


ちなみに、最初は下ネタ的な読み方だったのだが、それを聞いた、もう一人の友人が、ガチギレしたため、渋々、呼称を改めたというエピソードがある。


その友人——シオンとカナは何かと対立することが多く、またカナが折れることは滅多にないので、この件は珍しいパターンだ。


まぁ、自分でも、さすがにどうかと思っていたのかもしれない。


そこまでして、【魂まで筋肉】のフレーズに拘る理由も、良くわからないが。


「まぁ、それはそうと、悪かったなぁ。遅れちまって。少し散歩するだけのつもり、だったんだけどさぁ」


「まぁ、カナちゃんの遅刻癖には、もう慣れっこだし、気にしないよ。それに、いつもトラブルで困っている人を助けてるからね」


「わりぃな。どうも俺様は見て見ぬふりって奴が我慢ならなくてよぉ」


そう、カナが遅刻する理由は、本人の好奇心やトラブル体質に加えて、人助けをしていることが挙げられる。


だからこそ、シオンや他の皆も、注意こそすれ、カナを見限ることは無いのである。


「でも、トラブルに巻き込まれそうなら、連絡くらいしてよね。手伝えないでしょ?」


「いやー、俺様が俺様の勝手で首を突っ込んでんのに、ダチに頼るのはなぁ」


「じゃあ、私も、私の好きで勝手に力を貸すけど、問題ないよね~? っていうか、頼るのが嫌なら、ここの料金は自分で払うの?」


「そ、そりゃあ今は無理だけど、後で返すぜ? なんなら利子つけたって良い!」


「いや、利子とかは別に良いけど。じゃあ、代わりに今度からは、きちんと相談すること。約束できる?」


「くっ……お前は俺様のオカンかよ。わーった、次からは、みのりんにも声を掛けるよ」


「私だけじゃなくて、皆にもね? ネネちゃんも、シオンちゃんだって、カナちゃんのことが大好きで、心配してるんだからさ」


「だ、大好きとか……バッカじゃねーの」


いくら口で強がってみても、顔も耳も真っ赤に染まっているので説得力はない。


カナは好意をストレートにぶつけられると、途端にしおらしくなる傾向がある。


そんな時のカナは、ネネとはまた違った女の子らしい魅力に溢れているので、みのりんのお気に入りだ。


『はぁ……ツンデレって、萌えるよねぇ♪』


カナの頭をヨシヨシと撫でたい衝動に駆られる、みのりんだったが、カナが嫌がるのを知っているので、泣く泣く堪えた。


たまに、カナが目の前で眠っている時は存分に撫で回せるので、それまでの辛抱だ。


「な、なんだよ、その微笑ましいものを見るような顔は!? そんな事より、こいつを見てくれ!」


そう言って、カナはメニュー画面を開いて、みのりんに突き付けた。


—————————————————————

称号一覧


【修羅】

効果:他プレイヤーやNPC、

   または人型のモンスターと戦闘時に、

   全てのステータスが2倍になる。

   その他の敵との戦闘時には、

   全てのステータスが半分になる。


獲得条件:モンスターと1度も戦闘せずに、

     累計100人以上のプレイヤー、

     またはNPCと戦闘する。


【武装放棄】

効果:武器と防具を装備していない時、

   機動力が2倍になる。


獲得条件:武器・防具・アイテムを使用せずに、

     敵を100体倒す。


【ステゴロ上等】

効果:素手で、かつMPが最大値の時、

   攻撃力が2倍になる。


獲得条件:素手で、かつMPを消費せずに、

     自分よりレベルが高い敵を、

     100体倒す。


【要塞】

効果:HPが50%以上の時、防御力が2倍になる。


獲得条件:自分よりレベルが高い敵100体と、

     戦闘してもHPが50%を切らない。

     (回復手段の使用で計測リセット)

—————————————————————


「うわぁ……」


カナが見せてきたのは、恐らく、先程の暴漢たちとの戦闘で得た称号だろう。


その内容に、みのりんは思わず呻き声を漏らした。


「な、なんだよ?」


「いやぁ……なんて言ったもんかと」


実質、一度の戦闘で、4つも称号を獲得したこと。


その称号の内容が、ぶっ飛んでいること。


色々と言いたい事はあるが、取り敢えずドン引きしたのは間違いない。


「これって、アレだろ? みのりんが奈落に落ちて手に入れたっつー奴だろ?」


「うん、まぁ種類は違うけどね。普通にプレイしてたら満たせないような条件を達成すると、手に入るみたい」


「ふーん、武器を使わねぇって縛りプレイをしてる俺様には、ありがたいな! あんまり便利すぎると縛ってる意味もなくなるけどさ」


「すごい、極端な能力ばっかだよねー。カナちゃんでないと使いこなせないと思う」


「だよな、だよな! 俺様も、そう思ってたんだよ! つー訳で、みのりん、勝負しようぜ!」


「…………はい?」


テーブルから身を乗り出したカナの唐突な宣戦布告に、みのりんは間の抜けた声を漏らしたのだった。

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