入れ替わり
「別々に?」
「はい、しばらく私は調薬に専念しようと思うので、みのりんとは別行動で行きたいと思います。あと、一人で、やり遂げたい事があるので」
ネネの羞恥から始まった大騒ぎが落ち着きを取り戻した頃、二人は【魔女の家】で今後の方針について、話し合っていた。
ちなみに、トーシローは、ネネの調薬に競争心を煽られたようで、自分の調薬に取り組んでいる。
「やり遂げたい事って?」
「今は、まだ内緒です。無事に達成できたら、お話し、しますねっ」
明るい笑顔で、そう告げるネネだったが、みのりんには少し懸念があり、顎に手を当てて考えてしまう。
「うーん、あの状態のネネちゃんを放っておいて良いものか……」
調薬中のネネの様子を考えると、別行動は少し躊躇われた。
そのうち、悪魔に魅入られてしまうのではないかと、オカルトチックな想像が頭に浮かぶ。
それに、ネネが毒ばかり作ってしまう質なのは、既に実証済み。
となると、ユニークアイテムが出来上がった際には、自分で治験をする事になるだろう。
ここなら、トーシローもいるし、解毒の薬も一通り揃っているとはいえ、心配なものは心配だ。
「だ、大丈夫ですから! ちゃんと毎回、キャプチャー機能で撮影して、確認しつつ、矯正していきます!」
恥ずかしい話を蒸し返されて、再び顔を赤く染めたネネは、拳を握って力説する。
取り敢えず、自分でもアレはどうかと思っているようで、対策も考えているようだ。
「……そうだね。可愛い子には旅をさせよ、って、お父さんも良く言うし、可愛いネネちゃんにも、冒険は必要かも。それに、私がネネちゃんの成長を邪魔しちゃうのは気が引けるし……分かった。しばらくは、別行動でいこっか!」
しばし、ネネの提案を吟味した結果、そのような結論に至る。
いくら心配とはいえ、自分が四六時中、横に張り付いている訳にもいかないし、試行錯誤や冒険というゲームの醍醐味を奪うのも忍びない。
そんな感じの思考に至った、みのりんは、笑顔でネネを送り出すことにした。
内心では、心配の他に寂しさもあって、少し泣きそうだったが。
「何だか保護者目線っぽいのが気になりますが……。それで、お願いします。それと、みのりんも、私がいないからって、ハメを外し過ぎないように気を付けてくださいね。無茶は程々に」
人には、そう言いつつ、ネネも保護者っぽい眼差しで、みのりんを注意してくる。
「ん? 無茶なんて、したことないよ。ダイジョブ、ダイジョブ!」
しかし、みのりんには無茶という自覚がないため、この警告は不発に終わった。
客観的に見れば、ネネよりも、みのりんの方が危なっかしいので、気に掛けること自体は間違っていないのだが。
「……激しく不安です」
こうして、互いに少しの心配を抱えながらも、二人は一時、別々に行動することに。
そして、みのりんは昨日に引き続き、山で狩りに勤しむ事にした。
ネネとトーシローを救出するときは、使い慣れた魔導銃を使ったが、せっかく掴んだ弓の感覚も大事にしたいので、今は弓を装備している。
当然、ステータスも、それ用のものに調整済みだ。
「さーてと、んじゃまぁ、取り敢えず、昨日ゲットした称号でも試してみますかっ!」
みのりんが言っているのは、【怨念】という称号のこと。
同じ場所に2度続けて攻撃を当てることで、呪いLv.3の状態異常を付加する効果を持つものだ。
そして、呪いLv.3の状態異常は、全ステータスを5%ダウンさせる効果がある。(上限は50%)
時間経過による自然治癒はしないため、解除にはアイテムか魔法が必要になる。
ちなみに、時間経過で自然治癒するタイプの状態異常を重ね掛けした場合は、回復に必要な時間のタイマーがリセットされる。
例えば、毒の状態異常はLv.に関わらず100秒で自然治癒するが、あと1秒で自然治癒というタイミングだろうと、重ね掛けされれば、自然治癒するために再び100秒の時間が必要になる。
そして、時間経過による自然治癒がないタイプの状態異常は、重ね掛けすると効果が累積する。
例えば、呪いLv.3の状態異常を2度、掛けると全ステータスが10%ダウンする(ただし、上限あり)。
これが、このゲームの状態異常の仕様となる。
「……ふっ! ……はっ!」
昨日は樹の枝の上から、隠れて狙撃していたが、今日は敢えて敵の前に姿を晒し、正面から射抜いていく。
理由は単純で、いくらシステムによるサポートが有るとはいえ、同じ場所に2度続けて攻撃を当てるのは難しいからだ。
離れた場所から、隠れて放つなら尚更である。
そこで、敵を正面に引き付け、自慢の機動力で後退しつつ距離を調整し、狙いやすい顔を目掛けて矢を放つ。
みのりんは、何度か試行錯誤を重ねた結果、この戦法に落ち着いた。
「うーん、敵対してるモンスターのステータスは覗けないけど、機動力は見るからに落ちてるね! まぁ、20発も当てたから上限の50%まで効果が出てるし、そりゃあ遅くなるか」
ちなみに、今は称号の効果を検証するため、攻撃力のステータスは1まで落としてある。
そこで浮いた分は、機動力と技術力に割り振った。
今回はMPも必要ないので、かなりのポイントを、この二つに割いている。
「……ところで、これって距離が離れたら解除されるとか、数が増えすぎたら解除されるとか有るのかな? その辺は図書館の資料にも書いて無かったけど」
図書館の資料には各、状態異常の効果は書いてあるものの、細かい仕様までは載っていない。
その辺りは、プレイヤー自身で検証しろ、という事だろう。
誰かに与えられた情報を当てにするのではなく、自分で情報を集める大切さを教えたいのか、はたまた、ただ面倒で省いたのか。
出来れば、前者であって欲しいところだ。
「よし! 手当たり次第に呪いをばら蒔いて実験だ!」
冷静に考えれば、かなり物騒な発言だが、ここはゲームの世界で、かつ、みのりんなので、今更だろう。
それから、みのりんは数時間かけて、森中のモンスターに呪いを振り撒いた。
その結果、どれだけ離れようが、どれだけ多くのモンスターを状態異常にしようが、勝手に解除されることはなかった。
やはり、このタイプの状態異常を解除するには、アイテムか魔法が必須という訳だ。
ただし、それは自分が受けた時も同じだろうから、その時には注意が必要だろう。
そんなこんなで、また一つ、この世界に関する知識を蓄えた、みのりんは、意気揚々とログアウト——しようとして、聞きなれた、あの音を聞いた。
『条件達成おめでとうございます! 称号を獲得しました!』
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獲得称号
☆【パンデミック】
効果:同じ状態異常を付加したモンスターが、
同一エリアにいる場合、
1体につき1%、効果が増大する。
獲得条件:同一エリアの敵100体に、
同じ状態異常を付加する。
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その後、自分に与えられた部屋で寛いでいた、みのりんの元に、一通のメッセージが届く。
送信者の欄には【カナ】の表示が。
そして、件名には【明日から俺様、参戦!】と、書かれていた。
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Name:みのりん
Job:冒険者
Level:20
☆獲得スキル
【不意射ち】【空中ジャンプ】【銃剣】
☆獲得称号
【奈落の住人】【韋駄天】【全身全霊】【蛮勇】
【怨念】【二丁剣銃】【パンデミック】




