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龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
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新たな決意 

 俺は新たな夢を見て決意した。


 俺一人だけでできることはごくわずかだ。父とアデルが襲われた場所と王都は少し離れている。

 どちらも守るなんて一人では出来ない。


 他者にも協力を求めて未来の為にできる準備をするしかない。俺は頼もしい人達に出会うことが出来た。そしてまだ時間はあるのだ。


 まずは結界と王都の守りだな。魔王復活が原因で王国を覆う結界と王都の結界が破られたことでドラゴンに侵入され、アルバートが王都に辿りついた時には街はかなりの被害を受けていた。


 ドラゴンが現れた時の連携がうまくできていなかったため、攻撃に集中できなくて被害が大きかったのだろう。


 ソピアー王国は女神の加護と王宮魔法師団の結界で長らく平和が続いてきている。


 他の国々と違い他国からの侵略もなく、身近な危険といえば町の外にいる魔物だが、大体の魔物は魔道具で追い払えるので被害も少ない。


 危険度の高い魔物は発見され次第、冒険者や魔法師団と騎士団によって討伐される。


 しかし危険度の高い魔物にドラゴンは含まれていない。ソピアー王国にも生息しているのだが遭遇することは少ない。


 この世界ではある時代から人族と魔族とドラゴンは暮らす地を住み分けてきたのだ。


 ここでいう魔族とドラゴンとは知性と理性を持った対話の可能な種の事で、三種族は長らく交流を絶っている。街の外にいる魔物は魔力を持った凶暴な野獣であって魔族ではない。


 ドラゴンの生息域には他種族は極限られた条件を満たさないかぎり立ち入らないと盟約が結ばれている。


 ドラゴンの生息域と人里との間には境界になる大きな森があるのだが、ソピアー国ではその森も立ち入りは禁止されている。


 森の中には魔物だけでなく魔物と同じくくりの小型のドラゴンや中型のドラゴンもいるからだ。


 生息域の外にドラゴンが居るのは森が境界だからだとか、この先へ進まないようにとの警告だとか言われているが詳しくは知られていない。


 ごく稀に森から人里に出てきた場合、小型のドラゴンならばギルドから依頼が出て上級者や中級者で編成を組んだ冒険者パーティで討伐するが、中型クラスとなると王国騎士団からも討伐部隊が組まれることになる。


 それでも手におえない場合は王宮騎士団と王宮魔法師団も討伐に向かう。だがそれもめったにない事だ。


 そういうわけで、ドラゴンの生息域からも遠く、大規模な討伐部隊の組まれるような魔物が現れることのない王都の人々は災害級の魔物の脅威を知らないし、王都が襲われるなど思ってもいない。


 ドラゴンに王都が攻め入られたとき、騎士団が誘導して避難させようとしても恐怖で混乱した王都の人々は騎士団の指示に従わず散り散りに逃げ惑い、逃げ遅れた。


 逃げ遅れる人々がいては攻撃も思うようにできず被害は広がり、救助の為に人員は割かれ、部隊は王城近くまで後退してしまったのだ。


 王宮魔法師団には結界の強化、王宮騎士団には災害級の魔物が現れた場合の町の人々の避難路の確保、町中での魔物との戦い方を意識してもらう事から始めたい。


 けれどただの子供の俺には軍の事に口出しなどできない。出来ることは勉強中の子供ということを利用してみるくらいか。書庫にそれらしい本がないか探してみよう。


 他にはドラゴンについての本も欲しいところだ。ドラゴンが森から出てくることは稀なので辺境の村へ行かない事にはドラゴンについての情報の入手が難しい。夢で見ていた生活はほんの一部でしかないのだ。




 ふむ、一応我が家の書庫にも騎士団の本やドラゴンについての本はあった。


 騎士になるには、とか騎士になって敵国との戦いの戦術についてなどが書かれている。でも、街中や村などではなくて森の中だったり平原での戦術が多い。


 街や村、城に攻め込ませないための防衛線だったり、敵国に攻め入るための戦術の本はあるが、そこに攻め込まれた時の攻防戦や対策については記述が少ない。


 まあ、今回の目的はそちらにあるので良いといえば良いのだけれどもう少しあってもいいのでは?と思う。


 家が騎士の家系だったのならあったのかもしれないが、我が家は騎士の家系ではない。


 父は王宮魔法師団の所属ではないのだが魔法での防衛に関係する職務についている。

 そして年に数回は国内を視察して回り、ソピアー国全体を覆う結界や街や村を保護している結界の綻びや破損がないかを現地に行き直に確認するのも職務の内だ。


 結界は王宮魔法師団本部や各地の王国騎士団の詰所からも観察できるが、細かいところまですべてを見るには現地に足を運ぶのが一番だと父はいつも言っていた。


 でもたぶん街や村に結界に干渉する者がいないかの確認をするための視察でもあるのだと思っている。


 ドラゴンについての本には生息域、属性、種類について記述されていた。


 人族や魔族と同じく、ドラゴンの生息域もいくつかある。標高の高い山の頂付近、海底、極寒の地、灼熱の地など、人族が暮らすには厳しい地に生息している。


 そしてどの生息域の中にも必ず知性を持った大型のドラゴンが居る。小型、中型のドラゴンよりも攻撃力、攻撃範囲、体力、全てにおいての能力が大きく上回っていてさらに感知能力も高い。


 生息域内に侵入者が居れば確実に感知されるので足を踏み入れたら生きて帰る事は難しいと書かれていた。


 知性はどこに行った?対話可能なはずなのに交渉も出来ないのか? 問答無用に攻撃されるのなら確かに足を踏み入れようとは思わないな。


 アルバートが世話になった辺境の村の先に有るドラゴンの生息域は灼熱の地だった。連なる山脈の麓にはマグマの煮えたぎる洞窟がありその地のドラゴンは主にそこに生息している。属性は火だろうな。


 王都を襲ったドラゴンは火属性ではなかったはずだ。国内のドラゴンの生息域は辺境の村の先だけなのであのドラゴンはやはり結界が破られたことで侵入してきた他の地のドラゴンだったのだろう。


 忘れないようにと記憶を書き写したノートにも思い出せなくて属性は記されていない。属性がわかれば対策も練れるんだけど残念だ。ここは魔法師団の皆様に頑張ってもらうしかない。ドラゴンマニアの団員さんいないかな…。


 とりあえずなんとかそれらしい本は見つかった。持てる策は少ないけれど、これで行くしかない。


 協力者を求めようと決めてから初の登城の日が来た。今日はエリオットと騎士団で訓練に参加して、その後グラード団長に魔法の勉強を教えてもらう予定だ。


 まずは誰に相談するべきかここ数日悩んできた。本来なら父や先生に聞くべきだが、二人ともここ数日は不在なのだ。


 まさか前世の記憶がある事や夢の事を話すわけにもいかないし、どう切り出したらいいものか。


 騎士団の訓練場で軽く体をならしながら切り出し方を考えているとエリオットがやって来た。


「おはようアルバート」


「……あ、おはようエリオット」


 考え事をしていて返事が遅れてしまった。エリオットがかしこまるのは好きではない、友達なんだから敬称を付けないで欲しいと言っているので今は付けていない。


「何か考え事でもしてたのか?訓練大好きなアルバートにしてはめずらしいな」


「うん。ちょっと気になることがあって、誰に聞いたらいいかな?って考えてて」


「ん? 騎士団員や座学の先生にいつも何でも質問しているじゃないか。そんなに聞きづらい事なのか? 何を聞きたいんだ?」


「書庫の本を読んでいて気になったことがあるんだけれど、その事についての本がなくて……」


「アルバートは勉強も大好きだな。勉強も訓練も大好きだなんてめずらしいよ。ま、おかげで僕も楽しめているからいいけど。訓練が終ったらその本見せてよ。持ってきているんだろう?」


 これはいい展開かもしれない。エリオットと一緒ならアスター隊長やワイアット副隊長にも質問できるかも。

 とりあえず今は訓練に集中しよう。


 訓練が終ってエリオットに本を見せて相談する。本には魔物の大量発生によるスタンピードについて書かれていた。いつどこで起こるかは不明。


 発生すれば王宮魔法師団が感知して大規模な討伐隊が組まれるのだがとにかく被害が大きい。


 俺が記憶を取り戻すきっかけになった絵本、英雄の物語の書籍版にもスタンピードの発生があった。スタンピードが起きて港町が襲われるというものだ。


 運良く英雄のパーティが滞在していたので近くに駐留している騎士団と彼らの活躍によって治められていた。



 もし今スタンピードが起こったとして、討伐隊の到着が遅れてしまったり、上位種の魔物が複数体いて苦戦しているうちに討ち逃した魔物が町に侵入してしまったならどう対応するのか。


 前方からは魔物の大群が攻めて来て、背後は海、そんな状況の港町の人達はどこにどう避難したらいいのか。


 これだけでも不吉な質問と怒られるかもしれないのにそれがもし王都だったら……。もちろん結界があるし、王国騎士団、王宮騎士団、王宮魔法師団が侵入を許すはずはないのだが、国内一人口の多い王都だったらどう対応するのか。


 エリオットはそういう想定外の事は絶対に起こらないとは限らないし、起こってしまう前に対策を考えるのは間違っていないのだから質問するのは問題ない事じゃないか。と言ってくれた。


 エリオットはこの後の予定は空いているらしく、一緒にアスター隊長やグラード団長に質問しに行くことになった。


 エリオットには俺が魔力量が多くて、体調が悪くなることがあるためグラード団長にお世話になっていることは話してある。


 アスター隊長とワイアット副隊長はすぐに見つかった。そしてそこにはグラード団長もいた。仕事の話をしているようなので、話が終るのを少し離れたところで待つ。


 その間二人で自分たちなりに街に危機が迫った時の対策を考えることにした。訓練場の地面は土なのでそこに図を描いていて意見を出し合う。


「地上に逃げ場がないなら地下室なんてどうだ?」


「地下シェルターか。それなら安全そうだね。小さな町なら家や宿屋の下に作ればよさそうだけど、王都は旅人や卸業者など外から訪れる人も多いからどうしたらいいのかな?」


「そうだな……城の地下を開放するのもいいかもな。ただ、王都は広いから他にも必要そうだな」


「地下にシェルターを作るにしても地下水路があるところは作れないよね。王都の地下水路ってどんな感じに通っているのかな?」 


 地下水路ってゲームだと入り組んでいて、ネズミ系やスライム系の魔物が居るイメージがあるけどこの実際はどうなんだろう?


「おやおや、なんだか面白そうな話をしているね。私たちも混ぜてもらっていいかな?」


 エリオットと夢中になっているうちにアスター隊長たちの話は終わり、この後授業の約束をしていたグラード団長が迎えに来てくれたようだ。


 そしてそこから俺たちの話していることに関心を向けてもらうことに成功したようだ。





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