タコ焼きは同じようで、みんな違うものだ。
無敵に最強の魔王は、今日も平和に暮らしている。
ただ玉座がある、ギリシャ神殿かと思うような空間。 周りを見ても何も無く、外の景色さえ見えない、途轍もない広い空間。 一キロメートルか、もっともっと広く感じるその場に、二人の男が存在していた。
一人は玉座に座り、顔が傷だらけの王の様な男だった。 もう一人は、貧相な男で、玉座に座った男を見つめて立って居た。
「あの、ここは何所でしょうか?」
「気が付いたか? お前は死んで、今此処に居る。 これから魔王退治に出書て貰う。 お前には一つ武器をくれてやるから、全力で頑張れ。 もし失敗したら地獄行きだからな。 質問は許さん、さっさと行け」
「え? 何処に?」
質問をしようとした貧相な男は、何処かに転移され、この場から消えて行く。 玉座に居た王は、手をパンと叩くと、メイドが現れて、豪華な食事が並べられた。
「さて、今回は勝てるかな?」
その王は、退屈がてらに、その男の旅の行く末を見続けていた。 そんな王に、メイドは質問を投げかけた。
「あの、神様、ご自分で行かれれば、勝てるのではないのですか?」
「なぜ俺がそんな面倒な事をせねばならぬのだ。 適当に人間でも送って、楽しんで見ていたほうが面白かろうが。 この俺の時間は、悠久にあるのだからな。」
「そうでございますか。 では二十八万、九百、二人目の挑戦者に、幸運でも祈っておきましょう。 あの魔王を倒せる様にと」
「ふん、そうだな。 簡単に死なれたら楽しめぬからな。」
グラスの酒を飲み干し、顔をしかめている。
「しかし、この酒は不味いな。 別の酒を持ってこい」
「畏まりました」
神の食事が続いている。
そして飛ばされた男はというと、知りもしない世界に飛ばされ、冒険を続けていた。 そんな彼も、いつしか仲間も増え、その強さを発揮しだした頃。 魔王の噂を聞いた彼が、その冒険を諦めた。
仲間と適当に冒険して、金を稼いで暮らしているらしい。
かくして、二十八万、九百、二人目の挑戦者は失敗に終わり、次の挑戦者が玉座の間に呼ばれた。
「お前にはこれから、魔王退治に出書て貰う。 能力でもくれてやる。 質問は許さん、さっさと行け」
二十八万、九百、三人目の男が再びあの世界へと転送された。
「中々勝てませんねぇ神様。」
「まだ始まったばかりであろう。 後五百万人ぐらいは楽しませて貰わないとな。 だがその前に、魔王が死んでしまうかもしれないがな。 まあその時は、別の魔王で遊べばいいことだ。 ふぁはははは!」
そんな神の事なんて、全く興味がない魔王は、タコ焼きというものを頬張っていた。 屋台で出ていたその料理に、舌鼓を打ちつつ、幾つもお替りをしている。
「うむ、トロトロでハフハフだな。 この味も良いぞ!」
「へい。 ですがお客さん、タコ焼きはこの一種類とは限りませんよ。 硬めの野菜たっぷりの物や、味も千差万別というやつですぜ。 別の味も、試してみやせんか?」
キラリと光る大将の目は、挑戦的だった。
「よかろう。 では全部持ってくるが良い!」
「毎度!」
タコ焼きで腹を満たした魔王は、満足していた。
アルザード・ジューダス・ジェイドレッド(魔王)
タコ焼きハフハフ
何処かの誰かが勇者を諦めたとしても、魔王には関係のない話




