勇者という御馳走。
圧倒的最強であるが故に魔王は退屈なのだ。
何時もの様に馴染みの店に入った俺だが、この日は何時もと違う感じがしていた。
頼んだ料理は出て来ず、俺の前にはむしろそれ以上の料理が並べられた。
「如何したんだ親父? 今日はえらく豪勢だな。何かあったのか?」
「ああ、実はな、俺の娘が可愛いいいいいい孫を生んでくれたのよ! だからな、今日入った客には全部無料で出してやろうと思ってな。それにあんたは特別だ。目いっぱい作っておいたから、ジャンッ、ジャン食ってってくれ!」
「ほう、そいつは目出度い。俺からも何かプレゼントをしてやらないとなぁ。 …………ふむ、では貴様の娘にはこの剣をプレゼントしてやる。これは極上の物だぞ? 俺の加護も掛けられていて、滅多な事ではその娘を気づ付ける事は出来ない。まあその娘が成長してから売るなり使うなり好きにするが良い。ただし、お前が無駄な借金の為に売り飛ばすのは許さんからな? その時は罰を受けて貰うことになる。どうだ理解したか?」
「俺がそんな事をすると思うのかぃ? 一度はそうした事に手を染めてしまったが、孫の為とあっちゃあ絶対にそんな事はしないんだ! 絶対だ!」
「そうか? ではそれを期待していよう」
それから十七年の時が流れ、魔王城に一人の勇者が現れる。
世界中でたった一人だけ資格のある女。
そう、あの店の親父の孫だ。
俺のプレゼントした武器の効果もあり、俺の力も効果が無いとは皮肉なものだ。
「この城の最初の客だ、精々楽しませてもらうとしよう。さあ来るが良い勇者よ! 俺は最奥で待ち構えているぞ! ふははははははは!」
俺はこのあと何度もこの女と戦うことになる。
ただ退屈を紛らわせるために。
終わり
アルザード・ジューダス・ジェイドレッド(魔王)
魔王にとっての極上の御馳走とは…………
一応ENDということで。




