第38話 管理権限レベル5
静寂が、完全に定着した。
しかし、ダンジョンが消え去るわけでも、モンスターが消えるわけでもない。
コアが破壊されたダンジョンは、管理されないダンジョンとしてやっていくことになる。
名有りの幹部だけは、コアと共に消えるそうだ。
マスターと一緒だな。
部隊は自然に動き出している。
怪我人の回収、装備の確認、周囲警戒。
誰も大きな声を出さない。
勝ったというのに、その動きは予想以上に忙しい。
これも現場に来ないとわからないことだな。
その最中、意識の奥がわずかに揺れた。
視界の端に、いつものUIが浮かぶ。
【DP獲得:+400,000】
【管理権限レベルアップ:5】
【戦争支援パック2:開放】
【次回管理権限解放条件:敵コア破壊×3】
獲得DPが多い、何故かはわからない、しかし今回の敵はどこか手慣れていたように感じる。
もしかしたら既に権限レベルを上げていたマスターだったのかもしれない。
それにしても、戦争が始まってから、DPがインフレしすぎだろう。
探索者一人で1000DP、対してダンジョンを壊せば40万DP。
命の価値が安すぎる。
……いや、この40万DPもダンジョンマスターの命の値段か。
考えないようにしていたが、相変わらず酷い世の中だ。
表示が切り替わり、メニューが再配置される。
戦争支援パック2。
増えた項目が、いくつか目に入った。
見慣れない文字が追加されている。
【ダンジョン分割】
意識すると頭に説明が差し込まれてくる。
ダンジョンを分割するらしい。
ぽんこがいないから解説が足りない。
まあ、帰り道も数日ヒマだ、ゆっくりと確認しよう。
次に、コア関連の項目を見る。
そこには、はっきりとした表示があった。
【ダミーコア】
文字通り、ダミーのコア。
本物そっくりで外見からは判断がつかない、ただし地図の位置はごまかせないようだ。
これも色々と条件や機能があるようなので、確認が必要だな。
最後に、掲示板。
これまで使っていたものとは、別の項目だ。
【住人掲示板】
開いた瞬間、流れてくる文の調子が違うのが分かる。
戦況の整理でも、探り合いのやり取りでもない。
生活の延長にある声だ。
「……なるほど」
小さく呟いて、スクロールを止める。
今は、眺めるだけでいい。
画面を閉じると、新しく増えたメニューが並んで残った。
【ダンジョン分割】
【ダミーコア】
【住人掲示板】
どれも、単体で完結するものじゃない。
使い方次第で、形が変わる。
「……大分、複雑になってきたな」
独り言のように言って、少し考える。
「運用が、勝負を分ける」
前線を見ると、アニがこちらを見ていた。
何も言わない。ただ、次の判断を待っている。
俺は軽く頷く。
「戻るぞ」
戦争は終わっていない。
ただ、盤面が一段、増えただけだ。
そう思いながら、俺はダンジョンを後にする。
また例の担架のような籠に乗せられ、担がれる。
行きで大分慣れたので、もう違和感もない。
さて、ダンジョンにつくまで数日間、新機能の確認と洒落込もう。
まず、一番気になるのは掲示板。
話には聞いていた、住人用の掲示板、確か教会に置いてある石版から誰でも書き込めるとか言っていたはずだ。
はじめて触れる、この世界の人間の生活。
何か情報があればいいが、なくても構わない。
無性に人間の痕跡に触れたい気分だった。
そして、掲示板を開く。




