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Azikiwe

俺の名前は藤野直人。

社会人一年目、某そこそこ名の知れた企業に就職した新卒だ。

仕事内容は正直クソ退屈だし、先輩の圧で昼飯のメニューすら選べない俺だが――

一つだけ、譲れないものがある。

そう、愛車「シルビア」ちゃんだ。

大学時代からバイト代と生活費を削ってコツコツ貯めて買った、俺の唯一の恋人にして女神。

まあ、彼女にフラれてからはマジで鉄と油の塊にしか愛を注げなくなったんだが……それでもいい。俺にとってシルビアはかけがえのない存在なんだ。

で、今日。そのシルビアちゃんを車検に出してきたわけだ。

……泣きそうになりながら。

だって「数日間シルビアに会えない」って、下手したら社会人のストレスよりキツいからな。

「はぁ……俺のシルビアちゃん、今ごろリフトアップされて下から覗かれてんだろうな……あぁ、想像しただけで胸が痛ぇ」

通行人にドン引きされても俺は気にしない。

お前らにだってあるだろ、推しアイドルとかゲームの嫁とか。俺にとってそれが車なだけだ。

そんなことを考えながら歩いてた、その時だった。

――トラックが突っ込んできた。撥ねられる瞬間、眼の前が明るい光に包まれる。

え、待って、いま流行りのアレじゃね?

俺、異世界転生とかいうベタすぎるルート入っちゃった感じ?

だって、ほら……めっちゃ轢かれそうなんだけど?

「あっぶな……シルビア車検に出してなかったら、俺が死んだあと駐車場で放置プレイ食らってたな。危ねー危ねー……」

いや、危ねーのは俺の命なんだけど?

……なんで俺、死ぬ瞬間までシルビアの心配してんの?

そして俺は、光に包まれて意識を失った。



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