一本の橋
「今回の依頼はこちらになります。」
協力魔導士本部の受付で、一枚の依頼書が渡された。
ユウマは内容を確認する。
『リーベ川石橋 安全確認依頼』
討伐ではない。
犯罪でもない。
王都近郊にある石橋に異変が見られるため、原因を調査してほしいという依頼だった。
「橋ですか。」
受付係が頷く。
「予測局からの要請です。」
「未来映像で橋の崩落が確認されました。」
「ただ、原因までは分かっていません。」
ユウマは依頼書を受け取った。
「分かりました。」
⸻
予測局。
分析部。
「よろしくお願いします。」
セシリアが資料を広げる。
橋の見取り図。
周辺地図。
そして予測映像を書き起こした記録。
「映像では、荷馬車が橋を渡った直後に崩落しています。」
「橋脚ですか?」
「そこまでは映っていません。」
「橋全体が崩れる映像だけです。」
ユウマは静かに資料へ目を通す。
「現場を見てきます。」
「お願いします。」
⸻
昼。
リーベ川石橋。
近くでは商人達が荷馬車を止め、不安そうに橋を眺めていた。
「昨日から少し揺れる気がするんです。」
商人の一人が言う。
ユウマは橋の上をゆっくり歩いた。
石畳。
欄干。
橋脚。
目立つ損傷はない。
しゃがみ込み、石の継ぎ目へ触れる。
「……。」
違和感がある。
だが、確信は持てなかった。
⸻
「ユウマ。」
後ろから声がした。
レオだった。
「また偶然だな。」
「本当に偶然か?」
「半分くらい。」
レオは笑う。
「市場で聞いた話だ。」
「この橋。」
「最近、荷馬車がやたら増えてる。」
「街道工事の影響で迂回路になってるらしい。」
ユウマは橋を見上げた。
「荷重か。」
「多分な。」
⸻
その頃。
セシリアは予測局で過去の記録を調べていた。
「橋の点検記録……。」
一冊の資料を見つける。
「三年前。」
「橋脚の補修予定。」
しかし、その横には小さく
『予算不足につき延期』
と記されていた。
セシリアはすぐに資料を抱えた。
「これです。」
⸻
夕方。
三人は橋のたもとで再び集まった。
「補修予定が延期されていました。」
セシリアが資料を見せる。
ユウマも橋脚を指差す。
「表面は問題ありません。」
「でも内部へ負荷が溜まっています。」
レオが苦笑する。
「そこへ迂回路で荷馬車が集中。」
「崩れるわけだ。」
三人は顔を見合わせた。
原因が繋がった。
⸻
翌日。
橋は一時通行止めとなり、補修工事が始まった。
予測局の映像で見えた未来は訪れなかった。
⸻
帰り道。
「今回は気持ちよく繋がりましたね。」
セシリアが笑う。
「分析だけじゃ分からなかった。」
「現場だけでも分からなかった。」
ユウマが答える。
「市場の話だけでも足りなかった。」
レオも続ける。
少しだけ沈黙が流れる。
そして三人とも笑った。
「一人じゃ無理でしたね。」
セシリアの言葉に、ユウマは頷く。
「役割が違うからこそですね。」
王都へ戻る道は夕日に照らされていた。
今日もまた、一つの未来が静かに変わっていた。




