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8-1

  

  

「やっと会えたっ」

 桧垣と東山が荒い息で『6』の左昇降口から走り下りて来た。

「何があった? ってか誰?」

 合流してすぐ東山が、壁にもたれて眠っている米澤とそばに置いた血濡れのティッシュを見て青くなった。

「A組の米沢君。6番ホームで何かに襲われたんだって」

 美香子はそう言いながら米澤の頭を指さした。

 ヘアバンドの隙間から見えるうっすら血の滲んだハンカチに、東山の顔色がいっそう青さを増した。

「さっきどこかで悲鳴が聞こえたような気がしたんですが、彼だったんですね。魚住さんたちに何かあったのかと思って、必死で捜したんです――ホームや地下通路を何度も行ったり来たりして――でも全然見つからなくて。出会えてよかったです」

 東山がこくこくうなずく。

 桧垣が米澤を起こさないようそっとしゃがみ込み、ヘアバンドに押さえられているハンカチを少し(めく)った。

「襲われたって、動物に噛みつかれたのかと思ったんですが、ハンマーで殴られたような痕ですね」

「ゆ、幽霊が物理攻撃?」

 東山の震え声に花織が反論した。

「なんで幽霊だって決めつけんの? 怪物(クリーチャー)だよ、怪物。異界は怪物って決まってんの。触手でぶん殴られたんだよっ」

「『異界は怪物』っていうのも、決めつけじゃない」と美香子はぷっと吹き出した。

「幽霊にしても怪物にしても、ここには何か得体のしれないものがいるってことですね。警戒しなくては」

 桧垣の言葉に美香子たちはうなずいた。

「あ、そうだ。さっきママと連絡が取れたの。相変わらずひどいノイズで聞き取りにくくて――」

 美香子がスマホを掲げて見せ、

「すぐ中断されちゃったけど――

 でね、現実世界では地下通路が崩落してるんだって」

「え? どういうこと? あ、いってえな」

 前のめりに一歩踏み出した東山が花織の足を踏んで頭を(はた)かれた。

「痛いのはこっちだよ」

 二人の小競り合いを横に美香子は桧垣に説明を続けた。


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