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勇者、魔王Lv1を拾う。  作者: あびす
第1章 勇者が人族に肩入れしない訳
2/2

01 勇者、ボロ服少年に出会う。

投稿が遅れてすみません!

毎日投稿とかはできませんと予め言っておきます!





「おいクソガキ!」

「はっはい…!」

「1人だけ通行料出さないでごまかせると思ってんのか?」

「えっ!?通行料……?」


 ここは、シュリカスの谷底にある、街道。


 俺を勇者として召喚した正教会の総本山がある『プロシカス連邦国』と、世界一の大森林である『シュリの大森林』を結ぶ、唯一の国交路である。


 因みにシュリカスと言う谷の名前は、プロシカスとシュリを合わせただけの安直なものだそうだ。




 そして俺、球磨川(くまがわ)トモキは、シュリの大森林でゴブリン討伐を任された帰りだった。


「まったく。なんで教会の奴らは勝手に俺のことを召喚しといて、挙句の果てにゴブリン討伐をしろとか命令してきたんだ?」


 『魔王を倒すための訓練だ!』とか言っていたが、完全に繁殖しすぎて被害が出始めた厄介者の退治が目当てではないか。

 

 俺は、数人で揺られる荷馬車の中、国にうまく利用されただけの現実に呆れ果てていた。


「早く通行料出しやがれ!」

「すっすみません!お金持ってなくてっ!」

「はぁ!?金持ってねぇのに悠々と国に入ろうってか?」

「いやその……入国するのにお金がいるって知らなくてっ」

「お客さん、お金も持ってないのにこの荷馬車に乗ったんですか!?」


 いくらシュリの大森林とプロシカス連邦国が近いからと言って、徒歩だと数週間はかかる。

 そのため、大移動に荷馬車はつきものなのだ。


「お前は国に入れないに決まってるだろ!」

「……はい、ごめんなさい」

「国の入国に関してはそれでいいとして、馬車での運搬料はどうしてくれるんですかお客さん!」

「いや……その、本当にごめんなさい」


 それにしても、荷馬車に揺られる一人旅は良いものだなぁ。


 深い谷底にまで差し込む明るい太陽。

 馬車で共にひと時を過ごす一期一会の出会い。

 そして巨乳美少女と恋に落ちたりして――


「大体、おかしいと思ったんですよ。こんなボロ服のほっそりした人が長距離の荷馬車に乗り込むほどのお金があるわけないんです!」

「すっすみませ――




「あの、うるさすぎないですか?」


 さっきから何なんだ金のもめ事は。


「せっかく人が討伐案件を終えてのんびり帰りながら、あぁ……国に無理やり命令されたけれども何だかんだ言って楽しかったなぁとか一人感慨深くなっていたって言うのに」


 同馬車内に居た十人程度の客がずっと我慢していたことを俺が言ったからだろうか。

 乗客は全員が一斉に俺のほうを向いた。


「全く、何で先に金を払った多数の乗客が1人のために30分も待たなきゃいけないんですか」


 そう、この馬車は、只今道の端にて、国の門番をする騎士に封鎖されていた。

 当然ながら、その30分で他の馬車は次々に国へ入場していく。


 俺はその30分で灼熱の檻と化した馬車にいることに、もう我慢ならなかった。

 

「そうだよな冒険者よ!全く。おいお前、国に入るのは諦めろ!」


 俺の言い分に都合が良いと思ったのか、国の騎士がその声に便乗してボロ服の人を追い詰める。


「そうですが冒険者さん。ここまで運んだ代金は奴隷に落ちてでも働いて払っていけなければならないのです!」


 一方で馬車の運転手は、『それは重々承知してるがお金は払ってもなわなければ』と反対の意を示している。


「……ごめんなさい」


 それに対し、ボロ服の人はまたもや謝った。


 だけど、俺が言いたいのはそういうことじゃないんだよな。



「違いますよ。そういうことではありません」

「「え?」」


 俺は勇者として召喚された。

 この世界ではどうなのか良くわからないが、勇者は()()()()()()べきなのではないか?


「俺は、何で金も持っていない貧相な人を、大の大人が2人でいつまでも問い続けてるんですか?と聞いているんです」


 騎士と馬車師は、目をまん丸くして俺のほうを呆然と見た。


「へっ?」


 自分が肯定されるなんて予想もしていなかったのだろうか。

 先程まで俯きだったボロ服の人が思い切りこちらへ振り向いた。


 霞んだ赤色の長いぼさぼさな髪。本来は輝いているであろう黄色い瞳は色を失っている。まるで死人のようだ。

 フード付きのかなり長い灰色の布物を着被っているようで、服に関しては確認できない。

 そしてその布物は、国へ入場するこの場において場違いなほどボロボロだ。


 身長はあまり高くない。

 やせ細っていて胸もないのを見ると、恐らく美声で美人顔の()()()と言ったところだろう。



 まぁ、とにかく。



「お金を持っていない子からすら代金を搾り取ろうとするほど、この国の騎士と馬車師はケチなんですね」

「何だとテメェ、たかが冒険者が国家騎士に対して言っていいことと悪いことがあるだろーが!」


 挑発気味の一言を放つと、騎士さんは急に激怒りになられた。

 騎士までとは行かなくても馬車師も頷いて反抗の意を示している。


「素直に俺らの味方をしておけば良かったのにな!実力の差、見せてやるわ!!」


 騎士はそういうと、己の左腰に提げている鞘から何とも洋風なロングソードを抜き出した。


 俺もこのような剣は持っている。

 ……いや、何ならこの剣より良いものを教皇から貰った気がする。


 けれどもやっぱり、いつ何度見ても、剣は男のロマンだよな!



 しかし困ったものだ。


 俺は勇者だが、まだ弱い。

 具体的に言うなら、ゴブリンの群れを討伐後に出会ったワイバーンに何とか勝てたぐらいだ。


 因みにワイバーンと言うのは、竜の劣化族のようなもので、魔族(知恵ある魔物)ではなく魔物(知恵なき魔族)に分類される。

 種類もいくつかあり、炎、水、葉、地……など、他にも様々だ。


 この魔物が強いのかと言われたら……正直なところ良くわからない。

 けれども、将来魔王を倒す俺にとって、決してつまずいてなどいけない序盤の敵なのは間違いないだろう。




 この騎士がワイバーンに勝てる力を持っているのかはわからない。

 国家に勤める騎士のため、それより遥かに強い可能性もある。


 それに、対人戦ならば有利なのは明らかに俺ではなく騎士のほうだ。


 だからこそ、俺は別の手段に出て戦いを回避することにした。



「まぁまぁ騎士さん、刀をお収めください」

「はぁ!?今更ビビってんのか糞野郎が!」

「いえそんなことはありませんよ。それよりも、このカードを見てください」


 俺はそう言うと、冒険者が旅の際に良く着る青と黒が混ざったコートから、輝くカードを取り出した。

 プラチナに輝くカードである。


『        冒険者カード


  名 前:球磨川トモキ

  歳・性:16歳・男

  ランク:F

  レベル:プラチナ

  権 限:勇者権限により、

      ギルドマスターに続く上位権限を許可。 』



「……っ!」


 カードを見るなり、騎士さんは大きく目を見開いた。


「なるほど……!これはこれはご無礼をお見せしてしまい――

「あぁ別にいいですよ。もし俺が騎士さんの立場でしたら、絶対に剣を交えてしまいますし」

「何と寛大な心!流石は異世界から召喚されし()()()です!」


 『勇者』。その言葉に一瞬ボロ服少年は


「えっ!?」


 と大きな声を上げたが、すぐに目を俺からそらし、チラチラとこちらを伺い始めた。


 ……一体何なのだろう?



 まぁいいか。


「かしこまりました。勇者様の言う通り、そちらの方の入国料は取らないということに致します」

「あーそれなんですけど……流石に何も払わないのは国にとっての損害になるので、この人の分も俺がお代を出すことにします」

「わかりました」

「馬車師さんも、俺がこの人の運搬料を出すということでよろしいでしょうか?」

「勿論です勇者様!」



 こうして俺は、プロシカス連邦国へ戻って来た。




   ☆色々な設定☆



①中世ヨーロッパ風の世界観。

②魔法が存在し、奴隷制度、王国制度、帝国制度などがある。

③人属領と魔族領、亜族領とがある。

 人族と亜族vs魔族と言った形で、土地や資源を求めた戦争が止まない。

④魔族は魔族領のみ、魔物は世界のいたるところに存在する。

⑤人族は主に正教会の始祖神教(ビギニング)信者。

⑥人族の勇者は、始祖神教(ビギニング)の総本山で召喚される。

⑦魔法はあるが、スキルと言った個人特有のものは()()存在しない。



⑧冒険者カードについて


・冒険者カードとは、冒険者ギルドのメンバーが全員持つカード。

・冒険者ギルドは、魔族領以外全世界共通で、幅広いクエストを用意している。

 迷子の猫探しからモンスター討伐まで何でもこなす、いわば何でも屋。

・冒険者カードは、世界各地にある冒険者ギルドで更新できる。

 更新すると、ランク、レベル、年齢などを更新できる。

・ランクとは、そのカードの持ち主の実力に合うクエスト(ミッション)を区別する。

 良い順に、SS→S→A→B→C→D→E→Fランクがある。

・ランクは冒険者になってからの年月にも比例するため、トモキはFランク。

・レベルとは、その人の権力を示す。

 侯爵や騎士、ギルドマスターや勇者、王族など、様々な位により変わる。

 良い順に、プラチナ→ゴールド→シルバー→ブロンズがある。

 勇者や王族はプラチナレベル、一般の冒険者はブロンズレベルである。

貴重な時間を自分に下さり、有難うございました!!

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