1/49
1 守られなかった約束
「いつかまた、此処に帰ってくるよ」
「本当?」
「うん、約束する」
「ふふっ約束」
いつも遊んだ夕日の見える丘で、ユーリスは私に小指を差し出した。
約束の印にゲンマン。
絡めた私の小指にユーリスはそっと唇を当てた。
王子様の様な容姿のユーリスは、その大人びた仕草もとても似合っていて、上目遣いに私を見るその瞳に、いとも簡単に私は初恋を捧げた。
その約束から8年。
初めて届いたユーリスからの手紙。
『収穫祭に一緒に行こう』
1行だけのその手紙を私は胸に抱いた。
(もう少しだけ頑張ろう。だってユーリスが収穫祭に来るんだもん)
ユーリスが去ったあと、私の周囲はとても様変わりした。
本当は収穫祭前の喧騒に紛れてこの領地を出るつもりだった。
でもユーリスがやってくるのだ。
一目だけでも会いたい。
私はその日を指折り数え、とてもとても楽しみにしていた。
だけどユーリスは来なかった。
私の住む領地で行われる収穫祭は3日間。
3日間、夜が明けきらぬ早朝から、星だけが瞬く夜中まで、門の前で待つ私に声を掛けてくれる人は現れなかった。
初恋の人との約束は、守られる事なく、私は予定より3日遅れで領地を旅立った。




