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第八十三話 ヤマネコたちが築いた縁。

簡単な説明や注意事項の確認をした後、担当の人に連れられ、私たちは工場をゆっくりと見回った。順路は、プレス・溶接工程、組み立て工程、検査工程、と言った感じであった。


最初のプレス工程では、巨大なプレス機に平たい鉄板が流し込まれ、サイドパネルやルーフや様々なものが形作られていく。いわば、骨と皮がこの場で形作られると言ってもよかろう。


その後は作られたパネル類がラインを流れ、いよいよ溶接機や一部手作業によって溶接されていく。溶接機から飛ぶ、赤い光をまとって、徐々にパジェロ、そして同じくここで製造されるデリカなどは徐々に骨格を完成させていく。その後の塗装工程は諸事情で除くことが出来ず、ビデオで説明をしてくれた。


組み立て工程ではまず、隣の別工場で作られたシャーシ(土台部分)とボディがドッキングされるのだが、上から吊るされて運ばれてくるボディと、その下を伝うように運ばれてくるシャーシがなんとたった約86秒でドッキングされていく様は圧巻であった。


更に特筆すべきなのは、パジェロ製造の場合、縦置きエンジンレイアウトのパジェロと、横置きエンジンレイアウトを採用するデリカの全く設計の違う二車種が同じラインを流れている所である。通常、ここまで構造が違うと分ける場合が大半なのだが、それを同じところでこなしてしまうところがここの面白いところなのだ。


この工程を経た後、次は内装やタイヤ、バンパーを装着していく。ここまで来るともう完成形になってきたと言ってもいいだろう。指示書を見ながら、職人さんが一台一台、装備を取り付ける。もはやパジェロは海外専売モデルになって久しいということもあって、日本国内向けでは見られなかった部品も沢山あって私たちは二人して大喜びをしていた。


・・・・とまあ、ここまで淡々と語ってしまっている私であったが、その傍らふーりん先生は黙々と写真撮影、そしてインタビューをしていた。以前までコミュニケーションを非常に苦手としていたふーりん先生、いつの間に成長していたんだなあ・・・と思った瞬間だった。


その後、検査工程などを見学し、またホールのようなところに戻って、少し編集作業のようなものの手伝いをして、その後は社員食堂で昼食を取りながら、私とふーみん先生で二人語らった。


「いやあ、ほんと興奮モノでしたね・・・・ラインにあんなに沢山のパジェロとデリカ・・・堪りませんでした。 私たちのパジェロもこうして生まれてきたんだなって」



「ほんとそうですね!! まず日本じゃ見れないような仕様も沢山ありましたし・・・わたし、こっそり一台引っ張ってきたいなとか思っちゃいました」


「ふーりん先生ならできるんじゃないですか?(笑)・・・・・・とまあ、冗談はさておいて。ふーりん先生、こういう仕事も受けるようになったんですね」


そう言うと少し照れたように頬を赤らめてふーりん先生はこう答えた。


「は、はい・・・・そうなんですよ。・・・・実は、篠塚さんから運転を教えてもらってから、お仕事の打ち合わせとかもパジェロでいくようになったんですけど、そうしたらたまたまクルマ好きのクライアントさんと会う機会があって、折角なら車系の雑誌の編集部とツテがあるから、そこでも仕事をしてみないか?って。 それでまあ、今回の取材もその一環で。」


「そんな事があったんですか!! ふーりん先生やりますね~!!」


「いえいえそんな・・・こうして色んな人と会うことなんて今までなかったし、少し前の自分なら絶対ありえない仕事でしたから、今でも不思議な気持ちですよ。 ・・・ただ、何となく好きなクルマを持つようになって、そして篠塚さんに勇気を持って話しかけて、そして運転を教えてもらって・・・・こうならなければ、私はきっとここまでアクティブにはなっていないです。改めて、ありがとうございます!篠塚さん。私に手を差し伸べてくれて。」


ペコっとふーりん先生は頭を下げる。


「そんな頭下げることないですよ、ふーみん先生!私なんて、ただ運転教えて少しお節介しちゃっただけなんですから・・・・」


「でも、それがなかったら、私はずっと殻から出ることはできなかったはずです・・・・だから本当にうれしいんです。 だから、本当にありがとうございます。」


ふーりん先生は、改めてペコっと頭を下げた。


私のしてしまったことはほんと些細なこと・・・というか、下手したら悪影響な物なのかもだけれど、正直ここまでストレートに言ってくれるとうれし・・・はずかしい。



ちょっとテレを隠しながらも、私は小さな声で


「ど、どういたしまして・・・」


と言った。



その後、改めて質疑応答などを終えて、私たちはパジェロ製造を後にした。次くるときは、入院してる自分の相棒を連れて・・・そんなことを願いながら。


後日、ふーりん先生が書いた記事の載った自動車雑誌が手元に届いた。 開くと、ふーみん先生らしい優しくきれいなイラストと、そして写真の入り混じった素晴らしい記事がそこにはあった。


ふーりん先生の書いた記事はパジェロ乗りの間で話題となり、雑誌は飛ぶように売れたんだとか。


続く。


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