第四十七話 ポルシェキラーと白虎、いざ対峙す。
二人で困惑しながら立ち尽くしていると、ユリは恐る恐るこう言った。
「何よ賭けって・・・・。アタシも忙しいから早く行きたいんだけど。」
「賭けレースよ。賭けレース。この横浜環状を先に一周してゴールした方の勝ち。負けた方は勝った方の言う事をなんでも聞くってのはどうかしら?」
「・・・何それ・・。まあ、やってもいいけど・・・・。別にでも勝負したいなら別の日でも、リドっちゃんのセリカが出せる日でもいいじゃない。 ってかお仕事サボってて大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。上の人に何か言われても、今日はたまたま獲物があんまいませんでした、とでも言っとくから。ここで会ったが100年目、じゃないけど、とにかく私は今ユリと走りたいから。」
芹香は毅然とした態度でそう言い切って見せた。警官としてやってることはどうなんだという事は置いといて、今日この日だからこそ一緒に走りたい、という気持ちは元走り屋だった私もなんだかわかる気がする。
ユリは下を向いて少し呆れたようなフッっとした笑いを浮かべた後、
「じゃ、行くわよ。」
ユリも遂に乗り気になったようである。
「今から出発して最初に当たるジャンクションからスタートね。そこから環状線を先に一周した方が勝ちってことで。」
じゃ、そういうことでと言いながら、マークXに再び乗り込む芹香。私たちもそれに合わせるようにシビックに乗り込んだ。そして、二台の猛獣はそれぞれ心臓に火を入れ、路肩を後にしていった。
ここからインターチェンジまでは暫くあったので、ユリと話をしていた。
「しかしあんな知り合いいたんだねえ、ユリ。しかも現役の警察官とか。」
「アタシもめちゃくちゃ驚いたわよ。・・・あの子も走り屋時代めちゃくちゃ速かったのよねえ。」
「そうなの?」
「うん。あの子、地元が神奈川の方だったから、一緒にヤビツとかよく走りに行ったんだけど、それはもうたまげるほど速かったわね。あの狭いヤビツをラリードライバーみたいに切り返していく様は凄かったわ・・・。さながらカルロス・サインツみたいな感じだったね。」
「そんな凄い子なんだあの子。・・・・あのマークXの覆面もなんかスーパーチャージャー仕様みたいだし、なんかタイヤも気合が入ったの履いてたよね・・・ポテンザのRE71Rだったと思う。」
「そんなの履いてたのアレ!?・・・・パトカーでそんなハイグリとかありなんかなあ・・・。」
・・・・一方その頃、マークXの車内では、芹香と、もう一人の女性隊員が会話を繰り広げていた。
「・・・・芹香先輩、本当に大丈夫なんでしょうか?下手すりゃ上の人に・・・・。」
「大丈夫よ。厄介なやつ追いかけまわすのに時間かけ過ぎたとでも言っておけば。どうにでもなるわよ。」
「はあ・・・・。ちなみに、あの背が低い子が先輩の想い人、なんですよね?」
「そうよ・・・あの子をやっと・・・やっとモノにするために今まで準備してきたんだから・・・・。この勝負、必ず勝ってユリを絶対にモノにして見せるんだから。」
芹香は不気味な笑みを浮かべながら、マークXを走らせていた。
続く。




