第百五十五話 飛び出していけ、最後のスティント
レースも残り1時間を少し割る程度にまでなってきた。アクシデントに巻き込まれた莉緒も、復帰直後はおぼつかない走りを見せていたが、周回を重ねてくるたびに元のペースを思い出したようで、この数週はかなりいい走りを見せていた。とりあえず、ユリが危惧していたトラウマにはならずに済みそうだ。
それから暫くして、ユリはレーシングスーツをしっかり着なおして、ヘルメットを被ってこちらに戻ってきた。ヘルメット越しに見える目は明らかにギラついていた。
「さあ、そろそろ交代の準備をしましょ。私の準備は出来ているわ」
ユリの声と同時に皆は頷き、次のスティントに向けての準備が始まった。
現在順位も総合で8位、クラス順位としては6位とまあまあな所で留まっていた。
なんとここで、どうせ最後のスティントになるから・・・という事で、なんと新品タイヤを導入する事にしたのだ。
正直勝ちを狙うには今の順位だと厳しいけれど、最後に見せ場を作れたらいいじゃん?とはユリの談。でも、ここ一番の速さでは他を寄せ付けないくらいの速さを持つユリなら、きっと最後のこのスティント、見せてくれるような気がしていた。
頑張れよ、ユリ。
いよいよ、最後の周回を終えた莉緒のクルマがノーズをこちらへと向け、ピットロードへと進んできた。
「っしゃあ!みんな、最後に一つブチかましにいくぜえ!!」
ユリの叫びに同調するように、チーム皆で「おーーーっ!!!」と答えた。
いよいよ最後の戦い。その火ぶたが切って落とされようとしていた。




