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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
十九章

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彼女にとっての戦い。

今日もアクセスありがとうございます。

 しかし、重ねて残念なことに記憶がない。

 いったいいつ? むしろ、どうしてそう思ったのだろう?

 顔を赤らめながらも、魚のように口を開け閉めしてみせるクリス。



 楽しそうに尋ねるシルビアと目を合わせること十数秒。

 クリスは俯き、羞恥に唇を震わせながら口を開いた。



「――シ、シルビア様は何を仰っているのでしょうか……?」



 精一杯に繕った。

 だが、顔を上げられないところに彼女らしさが募る。

 とはいえ、俯いていると、例の葉や根が見えて、



「えぇぇええ……ど、どうして……!?」



 と、唐突に驚いてみせる始末だった。



「ふふ、本当に可愛らしい。ほら、落ち着いて」


「は、はい……お見苦しい姿を……」


「気にしないで。それじゃ、もう一つだけ調べてもいいかしら?」


「……はい?」



 すると、シルビアはおもむろにクリスのシャツに手を伸ばす。

 ボタンを一つだけ外し、胸と胸の間辺りへ手を当てた。



「こうして葉を出せたことで間違いないと思ったけど、やっぱり、アイン君と繋がりが出来てるわね」



 それも数秒にも満たない時間だ。

 彼女はすぐに手を放すが、その手のひらにはうっすらと緑色に光る――オーラのような何かが握られている。

 相変わらず、シルビアというエルダーリッチは不思議なことをする。



「シルビア様ッ!? い、一体何を……って、これは……?」


「可視化したアイン君の魔力――の断片かしら。綺麗な色してるでしょう?」



 深海をじっと見つめた時のような感覚。

 空を渡る雲を見つめた時のような感覚。

 なによりも、アイン本人を見つめるときのような感覚。



 それら全てを凝縮したような、安心感を抱かせる暖かな光だ。

 淡い緑の奥には、エルフの里にいるような心の落ち着きを思わせる。



「……すごく綺麗、です」


「えぇ、だってあの子の魔力だものね。――それで、いつ交わったのかしら?」


「ッ――で、ですから、私には交わった記憶なんて……あ」


「あらあら。覚えがあるのね」



 シュトロムを出てすぐだ。

 思い当たる節はあれしかない。残念なことに、あれしかないのだ。

 あれだけで根付いた? 事故で? 勝手に根付いてしまった?

 切なさや不安など、多くの感情に苛まれてしまう。

 今考えるべきことが多すぎたのだ。



「ほ、本当に根付いてるの……?」



 慌ててステータスカードを取り出し、エルフと書かれているはずの欄に目を向けた。

 すると、何よりも確実なその証拠が記載されている。

 クローネと同じ、ドリアードの文字がそこにはあった。



「……シルビア様……わ、私……どうしたら……」


「あ、あらら……別に泣かせたかったわけじゃないのだけど……」



 クリスは唇をぎゅっと閉じ、上目遣いに涙目でシルビアを見る。

 やがて、一筋の涙が頬を伝ったところで、シルビアはクリスの肩を抱いた。



「もう……どうして泣いてしまったの?」


「勝手にこんなことになって……嫌われたりでもしたら……」


「き、嫌われる? うぅーん……アイン君がスライムに負ける方が、よっぽど確率が高いと思うけど」



 なんとも言えない苦笑を浮かべたシルビア。

 だが、不安な気持ちは他人が考えるよりも強く、アインを命懸けで助けようとした彼女(クリス)らしさがあった。

 彼女はシルビアに目元を拭われると、少しずつだが落ち着きを取り戻す。

 もしかすると、彼女の魔法か何かで落ち着かされたのかもしれないが、



「あの子がそんな男の子じゃないって分かってるでしょ? まだ幼い時、命懸けでクリスさんを海龍から救ったこと、忘れたのかしら?」


「わ、忘れてません……!」


「まぁ、あの時は私が作った剣もあったけど、これ自体はあまり関係ないものね」



 城に収められていた一本の短剣。

 例の黒い短剣は、アインが海龍を倒す際に砕け散ったが、それがシルビア製なことを忘れてはならない。



「そんなことよりも、クリスさん? 根付いたきっかけは何だったのかしら?」


「……事故です。事故だったんです」


「事故? 事故で身体を重ねたとでもいうの?」



 行きずりのようなことはあり得ない。

 そう思っていたからこそ、シルビアは驚いた。



「ち、違います! だから、重ねて何ていないんですってば……!」


「それなら何があったのかしら?」



 シルビアに手を取られると、やはり落ち着ける。

 明らかに彼女の優しさが作用しているようで、むしろ、涙を流す前よりも自分らしくなれた。

 ――だから、クリスは落ち着いて彼女に語る。

 先日、シュトロムを出て、水列車の中で何があったのかを。



「――ですから、本当に事故だったんです……」


「あ、あらあら……そういうことだったのね」



 しかも自分の不注意で起きた事故。

 後ろ向きすぎて、罪悪感が募るばかりだったが、



「でも、それならちょうどいいじゃない」



 艶めかしい黒髪と相まって、クリスがうっとりするような笑みで言ったのだ。



「ちょうどいい……ですか?」


「どうしたいのかハッキリさせましょう? アイン君とどうなりたいの?」


「……そんなの」



 ――決まっている。



「もっと、お近づきになりたい……です」


「そうよね。エルフの気が長いのは知ってたけど、貴方はその想いにいつ決着をつけるのかなって、私だってやきもきしてたんだもの」



 アインと出会って約十年。

 最初はオリビア似の男の子という印象で、学園に通いだして大人びてきた。

 やがて、海龍の時には命を救われ、意識を始めたのはそのころからだ。

 年齢差はあるが、そんなことはそう気になりやしなかったのだ。



「でも! もう、アイン様にはクローネさんが……!」


「次期国王なのに娶るのは一人なの? 現国王がそうだったからって、過去の王族やアイン君がそうとは限らないでしょう?」



 それどころかシルヴァードが特殊だと言える。

 国王の妃が一人だなんて、先行きを思えば最善の選択にはならないからだ。

 


「……それは、そうですけど……」


「むしろ、民からしたら妃が一人っていうのも不安に感じるのだけど、そうね……」



 唇に手を当て考えるシルビアは、あまり間を置くことなく意見をまとめた。

 クリスがどうするべきか、それを賢者のように提示する。



「あの二人――アイン君とクローネさんは筋を通す性格かしら。王族としての役割は理解してるはずだけど、だからといって、なぁなぁにして妃を増やすーなんてことは絶対にしないと思うの」


「……はい。私もそう思います。お二人の心は強く結ばれてますから」


「だからクリスさんもこの先を望むなら、ある種の筋を通す必要があるかしら」



 ようは、こそこそせずに堂々とすることと、クローネに対し、この思いを打ち明ける必要もある。

 一方のクリスとしても、横やりをいれるような真似はしたくない。



「シュトロムに帰ったら言っちゃいなさい。クローネさんに、私もアイン君が好きだって」



 アインに対して何か行動を起こす前に、クローネへ話せと言った。




「ッ――!?」


「あの子(クローネ)も昔から器の大きな女の子よ。王族という特殊な立場にあっても、クローネさんなりに賢く考えるはずだもの」



 だから新たな一歩を踏み出せと、シルビアは背中を押してくる。



「このままでいるのは辛いでしょ? きっとアイン君、長生きどころの話じゃないわよ? 共に居るなら、そんな生き地獄はやめておいた方がいいと思うけど」



 根付いたという事実に基づき、クリスがアインから離れることはないだろう――という前提のもとで話すと、シルビアが言うように生き地獄だ。

 いずれは慣れるかもしれないが、そこにクリスの達成感や満足感はない。



「……」



 だから彼女は静かに頷いた。

 気持ちを露にすること、それを一歩とするのなら、これは間違いなく初めての一歩だ。

 ――だが、



「というより、みんなにバレてるのだから、隠すも何もないと思うわよ?」



 自分としては秘密にしていた話。

 それが、実は周知の事実だと言われて慌てふためく。



「――は、はぇッ!?」


「当たり前でしょう? 今の今までのことを思い返してみて? ただの忠犬というには度が過ぎてるもの」


「もしかして、クローネさんたちにも……ッ!?」


「そんな当たり前のことを今更言われてもね……。私もカインとはゆっくり進んだけど、貴方も似たようなものなのかしら……」



 最後にこの事実を告げられて赤面し、両手を顔に当てて悶絶した。

 それどころか、自分の気持ちを知っているであろう相手に対し、そんなことを宣言するなんて思ってもみなかった。

 しかし、帰ったら一対一で話せる時間をとりたい。クリスはそう心に決めた。



 ――結局、アインが帰ってくるギリギリまで、気持ちを落ち着かせることはできなかったのだった。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魅力ある主人公に異性が集まるのはしょうがないと思うんですが、周りからモテるのはしかたないと思うのですが、 重婚となると選ぶのは主人公なのでとたんにクズ男化するというか… 個人的な気持ち…
[良い点] えーっっ!まさかの展開にびっくり!クリスまで! クローネの器が大きくて良かった、、 日本の大奥同様、私なら耐えられない( ¯−¯٥) アイン、罪な男だぜ、、
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