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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
十八章

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280/623

バルトへ、龍の情報を得に。

>>>日曜日まで毎日更新します<<<

というのも最近、話が思うように進められておりませんので、進行速度を速めたいと思っております。

少したるんでしまって申し訳ありませんでした。

お付き合いいただければ嬉しく思います。

 翌日の夕方、数時間の睡眠の後に目が覚めたアインは、軽食を腹に入れてから仕事に戻った。

 仕事と言っても、宿の中での確認作業等が主なものとなる。

 リビングに置かれたテーブルの上に、山のように書類が重ねられていた。



「クリスは俺が寝てからも、仕事してくれてたのかな」



 寝る前には見かけなかったカップが、クリスの座っていた席に増えている。

 寝る間も惜しんで仕事をさせたことは心が痛むが、アインも彼女の頑張りに答える気になる。



「……やるか――って、あれ?」



 書類の山を眺めていると、ふと、一枚のメモ紙を目にした。

 手に取ってみると、文字はカティマのもので、



「や、優しい……」



 暇だから半分片付けて置いた――要約すると、彼女の文字でそう書かれていた。

 恐らく、彼女はクリスの仕事を手伝ってくれたのだろう。



 メモ紙が置かれていた山をみれば、その近辺の書類にはしっかりとサインがなされている。

 よくよく見れば、重要箇所を要約してるものまである。

 カティマもアイン同様、危機感を抱いている――だからこそ、こうして手伝ったのかもしれない。



「感謝して、つづきを終わらせておこうかな」



 ソファに深く腰掛けて、カティマがまとめた要点を眺める。

 昨晩の出来事、地下研究室についての調査結果や、ノイシュたちが行方不明だということが書かれていた。

 既に古代生物研究所の施設と、周辺は封鎖。

 近隣の研究所への聞き込みに加え、他の関連機関へも照会をかけているという。



 また、王都からの決定により、ノイシュらは大陸中にその情報が行き渡ることになった。

 ……そして、



「イスト交易商会と、アルベロ男爵家への立ち入り……ね」



 とはいえ、この件についてシルヴァードからの達しがある。

 イスト交易商会への立ち入りは、アインではなく、他の騎士と文官に任せるとのこと。

 今更ではあるが、王太子を動かすのを止めておきたいのだろう。



 そして、アルベロ男爵家が問題だ。

 そちらの立ち入りは、ある者が立候補をし、立ち入りや聞き込みを行うことにしたとのこと。

 リビングアーマーのマルコだ。

 全盛期の力を取り戻したと喜んでいた、あのマルコがアルベロ男爵家へと立ち入るのだ。



「……うん。過剰戦力にもほどがあるけど、今回ばかりは……うん」



 彼もきっと、アインへの強すぎる忠誠心をいかんなく発揮するはず。

 シュトロムにはクローネたちもいるのだから、この辺りは心配していない。



「となると……俺がイストで出来る事は……」



 もうないはずだ。

 いや、あるにはあるのだが、これ以上、イストに残ってするべき作業は無い。

 騎士や文官に任せられる段階まで進んだと言えるからだ。

 意外と順調だったことは喜ばしいのだが、結局、心に残るのは、地下の研究所で見つけた卵の殻。



 それに対する不穏な事実ばかりが、脳裏に焼き付いて離れなかった。



「殻の調査はもう少しかかるかな? まぁ、そりゃそうか」



 絶滅されたとされていた生物の痕跡なのだから、調べるのには時間がかかる。

 報告に上がってないのも当然かと、気怠そうにため息をついた。

 つづけて、他の残された書類を流し読みしてみると、それらは簡単な確認が必要な物と分かった。

 大した仕事量ではなさそうだから、ソファへだらしなく身体を崩した。



 一枚、二枚、三枚と、紙をめくる音だけがリビングに響き渡る。

 確認する最中に、喉が渇いて茶を淹れることはあったが、それ以外は書類の確認へ費やした。



 ――まだ少し眠気があったが、手早くすましておくのが優先。

 しばしば欠伸をしながら、少しずつ書類の山を片付けていったのだが、



「……あれ……アイン様……もうお目覚めだったんですか?」


「クリス、おはよ。仕事してくれてたんだね、ありがとう」



 と、礼を述べたところでアインの表情が固まった。

 眠たそうに瞼をこする彼女を見て、つい、戸惑いから硬直したのだ。



「……大丈夫ですよー……意外と、徹夜には慣れてるので……」



 半分寝ているか、彼女の油断かのどちらかだろう。

 アインとしてはこの両方な気がしてたが、慌てて彼女から視線をそらした。



「ニャハハ……」



 着替えを忘れたのか? いや、むしろ、着替えの途中で眠ってしまったのどちらだろう?



 クリスは上にシャツ一枚を羽織り、それ一枚で現れたのだ。

 肌の露出は無かったものの、足元がいつもより過剰に露出されている。

 ゆったりと腰掛けていたソファから彼女を見た時、細長く白い足が、何より先にアインの視界に入り込んだのだ。



「も、もうちょっと寝てきてもいいんだよ?」



 クリスは寝ぼけている。

 こう結論付けたところで視線をそらし、自然な動作で書類仕事に戻った。

 内心では、戸惑いが抑えきれてないのは否定できない。



「ッ――わ、私はいらない子ってことですか……?」


「いやいやいや……そうじゃなくって、クリスもずっと寝てなかったし……って!?」


「ま、また置いてけぼりなんですか!? 私はまた、アイン様とバルトまでいけないんですか……!?」



 視線をそらしたはずなのにどうしてこうなった。

 被害妄想が膨らみ、クリスがアインが座るソファに近づく。

 やがて、アインの足元付近で膝を折ると、懇願するような……子犬のような瞳でアインを見上げた。



(忠犬属性がここまで……じゃなくてッ!)



 胸元のボタンがいつもより1つ2つ開けてあるせいか、その付近が強調される。

 彼女らしい甘い香りが、祈るような視線と共にアインに突き刺さる。

 いつもより、彼女の潤んだ唇や、長い睫毛に目線が釘付けになった……が、



(しょうがない。寝かせよう)



 あくまでも冷静に心を落ち着かせ、クリスの名誉のため、アインは内心で想う。

 これはむしろ、魅力的だから落ち着く必要があったのだ……と。

 自分を正しいと思うため、内心で深く頷いてから席を立つ。



「――あ」



 アインが怒ったのかと、クリスが不安そうに顔を上げた。

 しかし、間を置くことなくアインが手を伸ばし、クリスの手を取って歩き出す。



「まだ旅の日程はつづくから、クリスもしっかり休んでほしいし、いらない子なんて、一瞬でも考えた事はないよ」


「で……でも……」


「大丈夫だから、もう少し寝てて。後で起こすかもしれないから、その時は許してほしい」



 ほどなくして、クリスの部屋の扉の前に立ち、扉を開けて彼女の背中をそっと押す。

 おっかなびっくりだった様子の彼女も、最後はアインに頭を撫でられ、頬を緩ませて頷いた。



「……わかりました、もう少しだけ……休憩させていただきますね……」


「そうしてくれると助かるよ。じゃ、また後でね」



 角が立たないよう彼女を見送ると、アインは勢いよく振り返ってリビングを見る。

 すると、外套を掛けるような棚を見て不敵に笑う。

 テーブルに立てかけて置いた剣を手に取り、わざとらしく言うのだ。



「侵入者かな? 怖いし、切っておいた方がいいかもしれない」



 金切り声のような音を一瞬鳴らし、剣が刀身を露にした。

 脈打つ刀身を輝かせ、棚に近づきながら演技をする。



「――ま、待つのニャ!? 私なのニャ! カティマ! 第一王女なのニャッ!」



 外套の陰から慌てて姿をみせたカティマ。

 息を切らし、不満げな表情でアインを睨みつけた。



「ひっどいのニャ! そういう脅しはするもんじゃないのニャ!」


「クリスの太ももにさ、肉球の跡がついてたんだけど」


「ニャァアア!? そ、そんなはずはないニャ! 私が手を貸したのは二時間もま――ハッ!?」


「あのさ、さっき声が漏れてたから。隠れるならもう少しうまくやったほういいと思うよ」



 また変ないたずらをしたものだ。

 カティマの頭を鞘で軽く叩き、詰問するような目を向ける。



「……あのニャ? 私が手を貸したのって、クリスが眠たいっていってたから、部屋まで一緒に行って、着替えを渡しただけニャよ?」


「ん? ってことは、脱がしてけしかけたわけじゃないってこと?」


「ニャー……さすがの私も、そんな下種いことはしないのニャ。私も女だからニャ」



 言われてみれば、カティマは悪戯や騒々しいことはするが、人の嫌がることなどはしてこなかった。

 今回の件も、クリスが知れば恥ずかしいようなことだし、言われてみれば納得だ。



「じゃあ、クリスの露出が多かったのって……」


「寝る前に着替えたいっていったから、私が着替えを渡したのニャ。ボタンが外せないって言ってたから、仕方ないから手伝っただけニャ」



 アインはさっき怒った事を反省した。

 今回のカティマは、本当に何もしていなかったのだ。



「たぶん寝ぼけてたんじゃニャいか? 昔と比べて、クリスはアインに懐きすぎてるし、隙が増えてるだけだと思うニャ」



 距離が近くなったのは同意する。

 だが、起きてからさっきの件を注意するのは、異性からするのは恥ずかしいはず。



「クリスが起きてきたら、カティマさんからそれとなく言ってもらえる? 俺が見た――って言わないように」


「仕方ないのニャ。まったく」


「で、カティマさんはどうしてそこにいたの?」


「面白そうだったから、隠れてみてたのニャ」



 前言撤回だ。

 怒った事を反省したが、この野次馬根性はどうしたものか。

 行き場のない感情を得ながらも、アインは大きなため息をはく。



「そういえば、アインが起きてから言おうと思ってたことがあったのニャ」


「……何かあったの?」


「私にもくれたあの卵の殻ニャけど、本物だと思うニャ」



 また随分と唐突だ。

 目を白黒させて彼女を眺める。



「私なりに調べたのニャ。痕跡としては、双子の時と性質が近いのニャ」



 相変わらず優秀なケットシーで、まさか、この一晩で検証を終えるとは思いもしなかった。



「だから、龍の卵って断定出来たってこと?」


「そーだニャ。あと、あの卵の中身も多分双子だニャ」


「……本気で言ってるの、それ?」


「うむ、本気だニャ。成体の痕跡が二頭分あったからニャ」


「――すごく大変そうなんだけど?」



 一匹でも対処に困るというのに、それが二つというのは勘弁願いたい。

 大変そうと言ったが、内心では、それなり以上の危機感を感じていたのだ。



「私が思うに、うちの双子みたいに魔石を与えれば、相当な速度で成長するかもしれないニャ」


「魔石の店とかギルドに達しをしないとってことか」


「それは無理だニャー。魔石は生活必需品ニャから、規制何てすればとんでもない面倒事だニャ」



 結局のところ、ノイシュたちを追うのが先決ということだろう。



「赤龍信仰をしている者も、徹底的に調べ上げるのニャ」


「もう赤龍って認定してもいいの?」



 半信半疑にアインが尋ねる。



「ここまできて、別の龍なわけないニャろ? 条件が揃いすぎてるニャ」


「……そりゃそうか」



 もはや他の証拠や情報なんて必要ない。

 卵の色なども踏まえてしまえば、赤龍で間違いないだろう。

 この瞬間、アインの内心で敵と目標が定まった。



「赤龍信仰をしてるやつらが敵だ。生まれてしまった二頭の赤龍は危険、だから、俺たちが抑えないといけない」



 今までに溜まっていたいくつもの問題。

 犯罪組織の件や、ローブの男、そして、イスト交易商会や、アルベロ男爵家の件が一気に片付いた。

 例えるなら、赤狐の問題の時と同じように、明確な目標が出来たと言える。



「バルトにはいつ行くのニャ?」


「明日の朝までにはイストを発ちたい。急いで向かって、シルビアさんに赤龍のこととか……以前の赤龍の件も尋ねておきたいしね」



 早いうちにシュトロムに戻りたい。

 もしかすると、主要人物は王都に戻り、赤龍の対策会議が必要となるかもしれないが。



(やれやれ……誕生日は近いけど、こんな祭りは求めてなかったなー)



 何もないというのもイシュタリカらしくない。

 そう思えば、こうした事件も致し方ない気もしてくる。

 国土が広くて人口も多ければ、比例して問題が生じるものだからだ。




今日もアクセスありがとうございました。

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