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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
十八章

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再会と、とりとめのない話。

今日もアクセスありがとうございます。

 数時間も経たぬうちに、古代生物研究所の周辺は騎士によって封鎖される。

 こんな夜更けに何があったんだと、野次馬のように人々は集いだしたのだが、アインをはじめとする関係者は、誰一人として口を開いて説明することは無かった。



 雪は勢いを弱め、空は少しずつ星空が広がっていった。

 が、対照的に、気分が滅入っているアインとクリス。

 二人は建物の入り口付近に立ち、中に入っていく騎士や文官を眺めていたのだ。



「――アイン様。今、何をお考えになられているんです?」



 卵の殻を、地下の隠された研究所を見つけてから数十分。

 ここにくるまで、アインの口数は少なかった。

 何かを考えているのが明らかで、クリスも邪魔をすることが無かったのだ。



 壁に背を預け、腕組みをしている彼に尋ねる。



「……海龍騒動の時とは違って、色々と厄介だなって思ってさ」


「厄介、ですか?」


「海龍が現れるのは……っていうか、海龍の被害を受けるのは、海に近い地域だけなんだ。でも――」



 今回の件は話しが違う。

 龍というぐらいだ、確実に空を飛ぶぐらいはできるだろう。

 襲来することでもあれば、なんて考えていると頭が痛い話だった。



「正直言えば、俺個人としては脅威って思ってないんだ」



 白い息を吐きながら、アインがうつむき気味にそう言った。



「……簡単に倒せるって意味ですか?」


「戦う前から舐める気はないよ。でもさ、仮に赤龍だったとしても、数百年前には、シルビアさんがあっさり撃退したって話だし」



 これまた当然な話だが、シルビアも一角の実力者だ。

 少なくとも旧王都勢は皆が皆、現・イシュタリカ勢が束になろうとも勝てない者しかいない。

 例外としてアイン、そして、双子の存在があるが、今回は除外するべきだろう。



 そして、アインはそのシルビアよりも強い。

 それどころか、魔王アーシェと比べても強いのだ。

 こうした現実を思えば、個人的な勝負では脅威には感じるはずがない。



「だからさ、問題なのは、戦力が揃ってない箇所で暴れられることなんだ」



 つまり、アイン個人が勝てたところで意味は無い。

 イシュタリカに住む人々に被害があること、これが大きな問題なのだから。



「――私では……いえ、ロイド様やディル……黒騎士などが居ても、まだ力不足でしょうか?」



 クリスは悔し気に顔をゆがめてアインを見つめる。

 冬の寒さが、その感情をより一層高めた。



「変な事言わないの。そんなことは無いよ、俺はみんなが居てくれて頼もしいって思ってる」



 近頃は習慣になってる、彼女を落ち着かせる仕草。

 アインは自然と手が伸び、彼女の金髪をそうやって撫でた。

 しかしながら、クリスも内心では理解してるのだ。



「私も……あの日のような……海龍の時と同じ醜態は晒すつもりはありませんから」



 当時、クリスは死ぬ気でマグナへと向かって、艦隊を率いた。

 結果を言えば、無茶をしてやってきたアインに助けられ、なんとか生きて帰ることができたのだ。

 自分もそれなりの実力者という自負はある。

 しかし、アインという存在は、到底手の届かないところに居る存在に違いない。



 そうは言っても、彼女が抱くのは矜持だ。

 クローネがアインに抱く感情とはまた違う、クリスなりの価値観だった。

 騎士としての自分があり、おんぶにだっこは心が寂しい。



 彼女は最後、強く手を握りしめてアインをみつめたところで、落ち着きを取り戻す。



「ご、ごめんなさい……。その、気持ちが高ぶってしまっていたみたいで……」



 一度謝罪をはさんで咳払いをする。

 すると、彼女は視線を古代生物研究所へと向けた。



「えっと……これからどうしましょうか」



 これからというのは、この研究所に関連することだ。


「準備が出来たら、あの研究者……ノイシュのことを、全ての都市に伝える必要があると思う。後は細々としたことだけど、痕跡を追ったり、周辺に聞き込みをしたりっていうのは、騎士たちに任せようかなって」


「――ですね。後は、アルベロ男爵家への聞き込みも、ってところですね」


「うん。だから俺たちは、俺たちに出来る事をしていこうって思ってるんだ」


「……具体的に、何が出来そうってのはお考えなんですか?」



 首を傾げて尋ねた彼女へ、アインは自信のある声と表情で答える。



「あるよ。王族として――っていうのもそうだけど、後は力を使うこと。それと……旧王都に行って、色々と教えてもらうことかな」



 旧王都へ行くことは、元々この工程で予定されていたことだ。

 その通りだなとクリスが頷くと、ふと、彼女はあることに疑問を抱く。



「そういえば、卵の大きさは恐らくですけど、双子の時と同じぐらいかなって思うんです」


「あー……言われてみれば、エルとアルの卵も同じぐらいだったね」



 ロイドに割られる直前だったあの卵も、同程度の大きさだったことを思い出した。



「ですよね? ということは、仮に赤龍が誕生していても、別に驚異的な大きさではない……っていう気がしてるんです」



 双子もそれなりの年月を経て大きくなったのだ。

 時間的な猶予はそれなりにある、彼女はそう思って表情を明るくしたのだが、



「いや、それはあまり考えたくないかな」



 アインがあっさりと否定したのだ。

 確信めいた声色で、少しばかりの苦笑いで。



「双子の成長速度はすごいよ。カティマさんがおやつの名目で、馬鹿みたいに魔石を食べさせてるからだけど」



 ある時期において、カティマの私費のほとんどがそれに投じられていた。

 だからか、すでに年齢にあわない大きさに育っているのだ。



「……先日、ローブの男たちが双子を確認していたのと繋がるんですね」


「可能性として捨てきれないなーって話。それに、どうやってか卵を孵してたんだから、楽観視は出来ない気がする」



 そもそも、絶滅したはずの龍の卵をどうして持っていたのか。

 どうやって孵したのかなど、今だ疑問は尽きていない。



「その辺りも一緒に、シルビアさんに聞いてみないとね」



 さて、そろそろ一度宿に戻ろう。

 指示を出すため、打ち合わせも兼ねて。

 アインが背もたれ代わりにしていた壁から離れたところで、久しぶりの声が届いたのだ。



「――お、何してんのかと思ったら……殿下じゃねえかっ!」


「あれ、ムートンさん?」



 まばらになりかけていた人混みの中から、ムートンがエメメを伴って姿をみせた。

 相変わらずの逞しい腕に、男らしいヒゲを揺らしている。

 すると、殿下という言葉を聞いてか、周辺の者たちは分かりやすく距離をとっていったのだ。



「おうおうおう、さっきまでドワーフを馬鹿にしてた研究者が散っていくぜ」


「え……何かあったんですか?」


「まぁ、大したことじゃねえよ。頭のいい研究者たちなんてよ、結構、冒険者寄りの人間を馬鹿にする奴も多いからな」


「……あまりいい話じゃないですね」



 ある種の派閥のようなものだろうか。

 いわゆる、冒険者や鍛冶師のような体力よりの者と、頭脳勝負の研究者たちの意識の差だ。

 全員がそうではないのは分かってるが、こうして話に聞くといい気はしない。



「がっはっはっは! 別に気にしねーでくれや! 技術の進歩なんてな、意見のぶつかり合いと喧嘩の結果だからな!」



 しかし、気っ風のいい男だ。

 アインはこめかみのあたりを掻いてから、少しずつ笑みを浮かべて語りだす。



「それで、ムートンさんたちはどうしてイストに?」


「おう! 用事があってな! その用事ってのは……あー、おい! エメメ!」


「はいっす! 私たちは新しい炉を買いに来てたんです!」



 翼で敬礼すると、彼女とムートンは得意げに腕を組んだ。



「それって高いんじゃ……」


「おう! 馬鹿みたいにたっけーぞ!」


「でもだいじょーぶなんですよ。お城から仕事貰えるようになってから、実入りは結構いいんです!」


「あ、あぁ……なるほど」



 最初はバルトの町から連れてきて、王都の暮らしを楽しんでもらえるか心配だった。

 が、今では、随分と楽しそうにしてるようでアインも安堵する。



「ついでにバルトにある家にも、久しぶりに荷物取りに行くかなって思っててよ」


「そうなんですか? 実は俺とクリスも、イストの後はバルトに行くんですよ」



 それを聞いて、ムートンが首を傾げる。



「おぉ? あんなしけた町になにか用でもあるのか?」


「この季節なんて、家から出るのすら一苦労でしたもんねー……」


「全くだ。軒先に魔石撒いて火つけたこともあったな!」



 それって大丈夫なの?

 戸惑ったアインとクリスを置いてけぼりに、二人は賑やかに語りつづける。



「おっとと……火で思い出したぜ。実はな、ここまで来たついでに、俺とエメメは大陸の西側にも行くつもりなんだ」


「イシュタルの西側ですか?」



 何かあっただろうか、アインが尋ねる。



「フオルン組の活動拠点があるからな! 覚えてるか? エメメの止まり木を作った職人集団だ」


「覚えてますよ。懐かしいです――けど」



 で、どうして火が関係しているんだろう。

 フオルンは木の魔物だ。フオルン組がフオルンで構成されている訳じゃないが、何か燃やすのだろうか。



「フオルン組は現地でしか売ってねぇけど、いい砥石とか素材売ってんだ」


「大陸西側って、大きな山とか湖が多いんですよー。なんで、東側とは結構別世界な感じなんです!」



 職人特有の知識だ。

 そうした細かい情報はまだ知らないアインは興味を抱く。

 とはいえ、大陸が広すぎるが故、すべてを理解するのはまだ時間が掛かるだろうが……。



「うちの工房で使ってる砥石なんかは、全部現地のフオルン組から買ったものなんだぜ」


「へぇー……希少な素材なんですか?」



 古代生物研究所の件が残っているが、ムートンとの会話は休憩がてら丁度いい。

 クリスも気が落ち着いてきたのか、表情に余裕がみえてきた。



「おう。溶岩(、、)が長い年月と魔力で結晶化した宝石があってな、それがまた堅くていい砥石になるって寸法だ」



 彼が火と言っていたのは、溶岩が関係していたからだ。

 アインが納得したところで、不思議そうにクリスが尋ねる。



「溶岩ですか? 私が知る中では、そうした物が流れる場所は無かったと思うのですが……」



 アインは足を運んだことすらないため、静かに耳を傾けた。



「違う違う。馬鹿みたいに昔、西側には巨大な火山があった……ってことらしいぜ。だからその名残で、地中に宝石が埋まってるってことだ」


「私はそれを初めて聞きました。そうした歴史があったんですね」


「ま、水列車も通ってない地域になるしな。優雅に馬車と徒歩で行くしかない場所だ、仕方ねえよ」



 どんな場所なんだろうという想像が捗る。

 当然、アインには足を運べる余裕はなく、本や人伝に聞くしかない。



「アイン様」



 そうしているアインに気が付いて、クリスが語り掛ける。



「えっとですね……クリム男爵家のご子息はご存知ですよね?」


「バッツのこと?」


「はい。クリム男爵家の現当主が派遣されてる町があるのが、大陸西側なんですよ」



 バッツの父が、魔物と戦う生活をしているとは耳にしている。

 その町が今出てくるとは思わなかったが……。



「特別魔物が強いわけではありません。ただ、開発された箇所が少ないのもあり、出没頻度は高いですね」


「……大変な所で仕事してもらってるってことか。感謝しないとね」



 アインがしみじみと声を漏らすと、彼は唐突に歩き出す。



「クリス、少し待っててね。帰る前に、何か発見があったか聞いてくるよ」


「い、いえいえ! そんなことは私がしますから……!」


「ムートンさんと一緒に待ってて。一応、自分の耳で聞いておきたいだけだからさ」



 彼が去っていくのを三人は見送る。



「お、そういえば今度また、前に送ったナイフを追加で送るからな! 使ってくれや!」



 アインが去ったところで、ムートンが思い出したように言った。

 そういえばと、クリスも使用人たちからの評判を思い返す。



「使用人からも評判みたいですよ。切れ味が良くて助かるって、マーサさ……えっと、屋敷の筆頭が申しておりました」


「だろー? あれは俺の故郷(、、)のナイフなんだよ。ま! 故郷のことなんて覚えてねえんだけどな!」



 故郷についてを忘れて高笑いをする。

 そんなムートンの剛毅さが、今日も留まることを知らず、クリスもつい、苦笑いを浮かべた。



「ドワーフも長寿ですもんね……。大陸のどのあたりの出身かも忘れたんですか?」


「おうよ! というより、イシュタル出身って聞かれると、なんか違う気もしてるんだけどな。まー気にすんなって! がーっはっはっは!」


「さっすがししょー! 細かいことは気にしないんですね!」



 決して細かくは無いのだが、彼らの価値観に踏み込むことはしない。

 二人は冗談ではなく素でこの勢いなのだから、いつも賑やかに感じてしまう。



「覚えてんのは製法と名前ぐらいなもんだ! 別に困ってねえし、他の情報はいらなかったってことだな!」


「クリスさん、あのナイフって作り方面倒なんですよー。素材は土の中にある細かい鉄なんで、集めるのがまた……」


「あ、あははは……手間暇かけていただき、本当にありがとうございました……」



 変な作り方だなー。

 ぼそっと呟いた彼女は、戻ってきたアインと合流して宿へ戻る。

 それからというもの、二人は日が開けて昼になるまで仕事をした。

 ようやくになって眠れたのは、日が傾いた時間になってからだった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前々から思ってたけど、ムートンさんってもしや転生者??
[気になる点] そのナイフの名前って包丁って言うんじゃ・・・。
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