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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
十七章 ―無限色のトカゲと、龍信仰の者達―

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熱帯地域の遺跡[1]

今日もアクセスありがとうございます。

 数日が経ち、予定通り彼らは港町ラウンドハートへとやってきた。

 この任務というのが、事実、二人にとっての初めての、海を渡った瞬間だ。



「なぁ、レオナード」


「……なんだ?」



 不機嫌そうにしているレオナード。

 口数は少なく、船を下りるしばらく前から変わらない。

 


 二人以外のイシュタリカ人たちは思った。

 なるほど、未来の宰相閣下は、殿下への愛と忠誠心が強いのだなと。

 どうしてこの考えに至ったのかというと、目的地がハイムだったからという事になる。

 眉を顰め瞳の奥が揺らぎ、忌々し気な面持ちで、つねに窓の外に目を向けていた。



 時折、急に立ち上がって席を外していたことが、ここまでの旅路で明らかになっている。

 おそらくこの仕草は、アインに対しての過去の振る舞い……それをしていたハイムに対しての憎悪ゆえなのだろう。



 ――しかしながら、友人バッツの考えは違った。

 いや、こいつはそんなことで不機嫌になってるわけじゃないぞ、と。



「吐き気止め、もう一回飲んどくか? 果実水と混じってるから飲みやすいぞ?」


「……すまない。もらえると助かる」



 船酔いだ。

 レオナードは長旅で船酔いをもよおしていた。

 しかし、イシュタリカの船は揺れにも強く、長旅でも快適に過ごすことができる。

 偏にこれは、レオナードが船旅に弱すぎたということに他ならない。



 素直に受け取った彼を見て、バッツも極まりが悪そうに、明後日の方向を向いたのだ。



「しっかしまぁ、思ってたより綺麗な町になってんだな」


「んっ……ぷはぁ。あぁ、確かにな」



 すると、バッツは気が付いた。

 旧ハイム王都にそびえたつ、暴食の世界樹の亡骸に。



「あれがアインだったものってやつか? また随分とでかいな」


「アイン様の器通りだ。何も問題ないだろうに」


「あー、分かった分かった。ったく、吐き気止め飲んだ途端に強気になるんだからよ……」




 ◇ ◇ ◇ ◇




 計画は過密な日程で、それでいて、繊細で神経質になって組み込まれた。



 さて、ティグルと合流してからの二人は、調査団としてイシュタリカの騎士を連れて、港町ラウンドハートを出た。

 馬を走らせ、エレナが指定した例の場所を目指し、丸一日かけて馬を走らせる。



「……少しずつ暑くなってきたな」



 バッツが額の汗を拭った。

 目的地は大陸唯一の熱帯地域とあって、じめじめとした湿気が苛立ちを募らせる。

 文官な性質のレオナードに、元王子のティグル。

 肉体派なバッツや騎士たちと比べて、二人は体力が劣ってしまう。



 体調を崩さぬようにと、少しばかり気を使いながら馬を走らせたのだが、



「それにしても、ティグルも意外と体力あるんだな」



 ケロッとしてる……とまではいかないが、表情に薄っすらと疲れをみせるだけだった。

 元王子の彼が、ここまで精力的についてこられることに驚く。



「私は元からこんなものだ。以前、私がエウロでアインと会った事は知っているだろう?」



 当時の彼は、クローネの情報を得るためにエウロへと向かった。

 何の約束もなしに、唐突に現れた彼に、エウロも、そしてイシュタリカも慌てたことを覚えている。



「あー、それか。そんなこともあったらしいな」


「それに、ハイム公としての職務で、毎月のようにイシュタリカとの往復をしている。体力がなくば、務まらんだろうに」



 仏頂面ながらも、どことなく楽しそうにしてる彼をみて、そうだったな、とバッツも笑った。



 思えば、レオナードも根性のある男なのだ。

 学園時代は魔物現地実習の、アインのための特別な日程を彼もこなす。

 ロランもそうだったが、一組(ファースト)は、根性もなくば生き残れないのだろう。



「おい、なんだその目は。私だって、別にどうとでもなるぞ」


「分かってるって。ただまぁ、お前も根性あったなって思っただけだよ」



 目ざとく気が付いたレオナードへと、つくろうように苦笑いを返す。

 すると、バッツはこの暑い道のりに注目した。



 普段目にするような、森の木々とは姿かたちが違う。

 葉は大きく、そして尖っている。木そのものも背が高く、幹は楕円に太くて丈夫だ。

 耳に届く音は、あまり耳にすることのない獣や、縄張りを主張する鳥の声で賑わっている。



 すぅっと鼻で息を吸えば、じめっとした温い空気と、湿った土とどこか甘い香りが漂う。

 たまに飛び交う羽虫の音がうるさく、早いところ下見を済ませたいという気持ちが高まった。



「なぁ、ティグル。例の遺跡ってまだなのかー?」



 馬を走らせながらも、辟易とした声色で尋ねる。



「もうすぐのはずだが……ん?」



 ティグルが何かに気が付いた。

 目を細めてそれを確認し、大きく手を上げる。



 すると、徐々に一団が勢いを緩め、数秒も経てば停止に至る。



「見えたぞ。あれが例の遺跡だ」



 古ぼけた、ところどころが崩れた石の遺跡があった。

 多くの箇所が苔に覆われ、太いツタが、柱にまとわりつくように伸びている。



 人っ子一人いないというのに、なぜだろう?

 不思議と感じたのは、誰かが住んでいるかのような錯覚だ。



「無事に到着してなによりだ。さってと、それじゃあ……」


「レオナード様。我々は、周囲の警戒、そして遺跡内部の魔物の確認に参ります」


「あぁ、頼んだ」



 そう言って、イシュタリカの騎士が馬を下りて配置に向かう。

 ハイムの冒険者でもなんとかなる地域だ。

 きっと、彼らならば何も問題なく制圧に至るだろう。



「そういえば、魔物っているのか?」


「お前、ティグルの話を聞いてなかったのか?」



 去っていく騎士を眺めながら、レオナードが頭を抱えた。

 遺跡近くは暑さが顕著で、彼の額には汗が浮かび、首筋には彼の金髪がへばりついている。

 心なしか、普段よりも呼吸にも落ち着きがない。



「魔物は居るさ、ただまぁ……遺跡内部にはいないらしいけどな」


「レオナードが言うように、遺跡内部にはいないんだ。なぜか、授けと降臨の祭壇には近づかないってことらしいが」


「ほぉー……そりゃ安心だな」



 他人事のように口笛を吹き、バッツがゆっくりと歩き出す。

 彼もまた、この暑さに参っているようで、額の汗をぐいっと拭った。

 しかし、拭っても拭っても浮き出る汗に呆れ、大きなため息をふぅっと吐いた。



「んじゃま、俺たちも中に行こうぜ。ウォーレン様から、遺跡内部をしっかり確認してこいって言われてんだ」


「あぁ。策に穴をつくるのは許されない。細かなところも確認して帰るぞ」



 二人が歩きだしたのを見て、ティグルも進んだ。

 バッツ同様に、汗を拭っても拭っても湧き出てきたが、意外と、こうして二人と進むのは気分が悪くない。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 騎士とすれ違い、彼らに内部の状況を尋ねる。

 曰く、本当に魔物らしい姿が見当たらないという。

 それどころか、危険な獣の姿すらないとのこと。



 三人は安心して歩き、最深部にあるであろう祭壇を目指す。



「……中は意外と涼しいんだな」



 レオナードが、興味津々に辺りを見渡しながら言った。

 言われてみると、確かに内部は涼し気だ。

 なぜか、不快な湿気も鳴りを潜めたのだから。



「日陰にもなっている。岩で空気も冷めるのではないか?」



 文官寄りの二人が、頷き合って意見を交わす。

 一方で、バッツは二人の後ろをあるいて辺りを窺う。



 遺跡内部は薄暗いが、崩れた天上から、外の灯りが入ってくる。

 そのため、歩く道は良く分かった。



 湿った土と苔の香りが漂い、ここが普段、人が寄り付かない空間なことを教えた。

 壁になった石材に触れてみると、ざらっとした感触に、うっすらと露が垂れている。

 地面も壁も、ひび割れた箇所はいくつもあるが、崩壊しそうにないところに、この遺跡の造りが重厚なことが分かるのだ。



 三人が進むのは、屋敷で言えば玄関ホール。

 それぐらい広く大きな空間が、かなり奥までつづいているのだ。

 太く高い柱が何十本も伸びており、天井までは30m程度だろう。



 ――すると、バッツが壁に描かれた絵に気が付いた。



「おい、二人とも」



 立ち止って二人を呼ぶと、前を歩く二人が振り返る。



「どうしたんだ、バッツ」



 先にレオナードが声をあげ、二人は数歩歩いて彼の元に戻る。



「こんな文字と絵、みたことあるか?」


「文字と、絵?」



 親指で指示し、レオナードとティグルの目線を向けさせる。

 そこに描かれていたのは、三人が目にしたことのない文字と、



「な、なんだこれは……? 一人の女と子供……か……?」


「……ティグル、これは女というよりは、女神……ではないか?」



 跪いた一人の子供と、子供の前に立つ背の低い女性。

 背の低い女性の服がまた、どことなく見慣れないものだったのだ。



「あ、あぁ。確かに女神かもしれないが……与えているものはなんだ?」


「――剣じゃねえか?」



 横から顔を乗り出してバッツが言う。

 彼が言うように、背の低い女性は跪いた子供に、剣のようなものを差し出している。

 何が何なのかさっぱりだ。

 やがて三人は横に逸れていき、別の壁画に目を向ける。



「これはさっきの子供だな。何かと戦ってるみたいだけどよ」


「……この子は男みたいだな。ふむ……後ろには、多くの人々を引き連れている」



 バッツが見て、レオナードが見た。

 何かの戦争なのだろうか? 

 しかし、似たような絵が何枚もつづき、ふと、場面が変わったのだ。



「おい。その男が死んだみたいだが、どうなってるんだ?」



 ティグルが気が付いた新たな場面では、棺の周りに四人の人が立っていたのだ。

 そして、壁画はここで終わりを迎えている。



「誰か来てくれないか?」



 すると、レオナードが声をあげ、すぐさま騎士が一人近寄る。



「はっ! 何かございましたか?」


「ここの壁画を写しておいてほしい。ついでに、文字も頼めるだろうか?」


「お任せください」



 もしかしたら大切な情報なのかもしれない。

 レオナードは写しを用意するように指示すると、



「先を急ごう。今の情報は本国へと持っていく。あとで検証するのがいいだろうからな」



 バッツとティグルは頷いて、歩き出したレオナードの後ろを追った。



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― 新着の感想 ―
[一言] 和包丁って言葉も出てきてるし絵の様子から転生者に関係する所なら文字が日本語なんじゃないかって推測したくなるなw
[一言] 久しぶりの、幼女神だ
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