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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
十七章 ―無限色のトカゲと、龍信仰の者達―

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選定と下見の支度。

先日からお伝えしていることとなりますが、

タイトル変更をする予定がございます。

旧題で魔石グルメと後部に付けると思いますが、よろしくお願いいたします。

 ティグルは馬に乗り、数人の護衛とエレナを連れて屋敷を出た。

 はやる気持ちを抑えながらも、馬をいつもより急かして港町に足を運んだ。

 ここには矛盾があるが、彼なりに表情には気を付けている。



 やがて、町の入り口で馬を下りると、以前とは違う町並みに目を向ける。

 さて、アインにまでは、届いていないであろう、ある情報がある。

 それは、港町ラウンドハートの町並みに関することで、



「……相変わらず、妙に開いた道だな」



 以前の港町ラウンドハートは、大通りの奥に大きな屋敷があったのだ。

 アインが生まれた家である。

 ではそこに何があるのかというと、ティグルの言葉が関係している。



 長い大通りは、以前は吹き抜けた空間ではなかった。

 ではなぜ、今はスッキリと一本道になってしまったかというと、クリスが発端だ。



 以前、ティグルは語っていた。

 港町ラウンドハートの復興作業がはじまる際、クリスがやってきて、鬼のような形相で破壊していったという。

 プリンセス・オリビアの主砲を食らい、すでに半分以上が崩壊していた屋敷が、刻一刻と崩壊したとのこと。



 そこに新たな建物は建てないのか? と、考えた民も多くいた。

 だが、彼らは一様に口を閉ざし、何かを語ることは無かったという。

 なぜならば、イシュタリカの者たちが、屋敷があった敷地を強く毛嫌いしていたから。



 こればかりは当然なことで、民は空気を読み、不平不満は口にしない。

 当然だが、ティグルたちや位の高い人物も同じことだった。



 結局今では、ただの平地としか体を成さない。



「相も変わらず、旧王都がちゃちに思えてくるところだ」



 ため息を漏らす。

 例えば石畳、例えば清潔感、例えば街路に建つ灯りを放つ魔道具など。

 小さなとこ一つとっても、以前の港町ラウンドハートからかけ離れている。



 すでに全体に、イシュタリカの技術力が加わったことで、人々の生活はとても豊かだ。

 変わらないものといえば、潮風ぐらいなものかもしれない。



「殿下、お越しでしたか」



 彼に声を掛けたのは、元ハイム王国騎士。

 この騎士は、昔からティグルと近い場所に居ることが多かった。

 例えばエウロへの遠征、アインとはじめて会った時には、護衛としても同行した。



 また、元ハイム王国騎士と言うのは、すでにハイム王国という名は存在せず、自治領としてなんとか生きながらえているからだ。



「殿下ではない。敬称を用いるならば、ハイム公と呼べ」


「……し、失礼致しました」


「まったく……殿下と呼んでいい相手を間違えるんじゃないぞ」



 つまり、王族に使うべきなのだ。



「ですが! ティグル様だってハイム王家の――ッ!」


「そう言ってくれるのは嬉しいがな、私はそんなに気にしていないのだ」



 語るティグルの顔は晴れやかで、王族時代によくみせた、眉間の皺は鳴りを潜める。



「国を捨て逃げ出した時点で、王族を名乗る資格は消えている」


「そ、それは……あの時の状況が……!」


「……まぁ、責任を放棄したことに対し、私は数えきれない後悔を経験し、存在意義を見失った。だけどな」



 すると、彼は騎士の肩に手を置いた。

 今までのティグルならばしないような仕草に、騎士が驚く。



「――私は今が嫌いではない。というわけだ、だから気にしないでくれていい」


「ティ、ティグル様……」


「恐怖から逃げた人間が、新たなきっかけで新たな事を見出す。昔話に良くありそうな話だが、そんな陳腐さが私に似合っていたということだ」


「……」



 彼は昔、こうして吐露することがあっただろうか、騎士は内心で考える。

 何を考えてみても記憶になく、これも、ティグルの変わった一面ということなのだろう。



「だがな、陳腐だろうが、悪くないものは悪くないのだ。なぜだろうな?」



 今日のティグルは饒舌だった。

 いや、相手によってはいつもこうなのだが、今の相手は騎士。

 であれば、こうした態度はみたことがない。



「穿った誇りは必要なく、対等に軽口を言えて、小突き合える。相手の目を気にすることなくステーキを口に運び、濃厚なソースが口元に付着し、それを笑われても怒る気になれない。さて、この感情はなんと言えばいいのか? ……そういうことだ」



 今まで何度も謝罪した、後悔した。そして、何かに吹っ切れたのだ。

 また、その後に待っていた現状は、不思議と居心地が良かった。

 きっと、それだけの話なのかもしれない。



「とはいえ、安心してくれ。私はハイム公として、この地の繁栄に命を注いでいるからな」



 以前のような重圧はなくなり、自分らしさを表に出して統治をしている。

 意外と、ウォーレンたちからも、ティグルの能力に関しては評価が高かったのだ。



「……はっ。これからも、これまで同様にお仕えいたします」


「頼もしい限りだ」



 ふっ、と笑って労った。

 それから騎士とは別れて、船が停泊している桟橋に向かう。

 近くには、イシュタリカ人とハイム人が共に仕事をする、ちょっとした屋敷が建っているのだ。




◇ ◇ ◇ ◇




 外壁は白く、屋根の赤が映える。

 港町マグナによくある、建築方式や意匠で、ここも以前と違った光景といえよう。



「エレナ。大工や美術家を何人か呼ぶ必要がある」


「でしたら、バードランドに声をかけましょう」


「そうするべきだろう。この策の発案はウォーレン殿だ、値切り過ぎる必要はないぞ? 満足のいく職人を選定してくれ」



 そう言って馬を止め、屋敷の中に足を運んだ。

 広い玄関は天井が高く、床にはふかふかの絨毯が敷き詰められる。

 ところどころに建てられた柱は、外壁同様に白く美しい。



 ――今日も賑やかにやりとりが行われているようで、新たな都(みやこ)についての話が進んでいた。



 さて、彼らがやってくるまでに、仕事を済ませることにしよう……。

 ティグルは頬を軽く叩いて気合を入れると、さっと窓をみれば、ここからも暴食の世界樹が目に入った。



 なんとも大きな樹だな、と、苦笑いを浮かべた。

 彼はそのまま足を進めて、階段を上って奥の部屋に向かう。



「誰か来ても、すぐには入れるな。私に伺いを立てろ」


「はっ!」



 連れてきた護衛にそうつげて、彼らに部屋の扉の番をさせる。

 そこは、ティグルやエレナの執務室で、限られた人物しか入室を許可されていないのだ。

 急な来客はあるかもしれないが、事が機密性を貴ぶための措置だった。



 扉を開けると、ハイム製のものではない家具ばかりだ。

 快適さに大きな違いがあり、すでに慣れたティグルでも感動を覚える。



「なにか資料が必要だな」


「選びます。どういったものでしょうか?」



 エレナがそう答えて、本棚に向かう。



「龍の卵――というのだから、各都市が近いのはよろしくない」



 大陸イシュタルではなく、こっちで見つかったという体を成す必要があるのだ。

 ウォーレンが考えた策に対し、その地域を選定して伝える必要がある。



「冒険者が稼げる地域のほうがいいのだが、残念なことに、イシュタリカと比べれば規模が小さい」


「えぇ……ですから、古い伝承か何かを利用しては?」



 提案を聞き、ティグルが彼女を見る。



「古い遺跡がございます。冒険者の間では、なにか逸話があるそうでして」


「ふむ? というと?」



 おもむろに椅子にこしかけ、つづきを促した。

 すると、エレナも思い出すように、口に手を当てて語る。



「虫や小動物程度の魔物しか現れないそうです。ただ、その最深部には、魔物が寄り付かない祭壇があるそうで……」



 本棚から一冊の本を取り出すと、それをティグルの前の机に持っていく。

 どうやら地図のようで、あるページを開いて差し出した。



「ロックダムの南、我々の北西か? この辺りはじめじめとした、熱帯地域だったと思うが」


「その通りです。その遺跡はこの地にありまして……祭壇にも、異名があるそうです」



 エレナは説明をつづける。

 地図を興味津々にみるティグルに対し、何の気もなしに教えるのだ。



「降臨と授けの祭壇(・・・・・・・・)と呼ばれるそうですよ」


「……で、何が降臨して、何を授けてくれるのだ?」



 ティグルが頬杖をついて聞くと、



「実は、その辺りは分からないんです」



 エレナは困ったように笑うばかりだ。



「はぁ……なるほど。冒険者たちが呼びはじめた、特に意味のない異名だろうな」



 それでも悪くない。ティグルはそう感じた。

 利用できる逸話か条件があればなんでもいいのだ。

 今重要なのは、逸話が本当かということじゃない。



「では、差し当たって……その、降臨と授けの祭壇だったか?」


「仰る通りです」


「そこの近隣を一つの候補地としよう。神が降臨し(・・・・・)、龍の卵を授けられた(・・・・・・・・・)とでもすればいい」



 こじつけにすぎるだろうか? しかし、そもそも、龍信仰すら似たような節があるのだ。

 古い遺跡で、たまたま卵が見つかった――としても、頭ごなしには否定されないような気がしている。



「ところで、神が存在するならば、ハイムの運命はどうなっていたと思う?」



 ニヤっと笑い、いたずらするように尋ねたティグル。



「……私はこう思います。もしも神が存在していたのなら、もっと早くに、ハイムは無くなったのではないかと」



 過去の行いを踏まえ、天罰があるならもっとはやかったはずだと論ずる。

 すると、ティグルは大口を開けて笑った。



「はっはっはっはっはっは! そうだ、エレナの言う通りだな! ならば、きっとその祭壇だって、何の意味もない」



 やがて、満足いくまで笑った彼は、これまた楽しげな表情で語る。



「現地視察ぐらいは必要だな。エレナ、日程調整を頼む」


「ティ、ティグル様が行くのですか?」


「当然だ。私が責任者なのだからな」



 こんなとこで行動力を発揮しないでほしい。

 エレナが内心でため息をつき、同時に気が付かされた。

 娘の良い人と、こういう面ではそっくりなのだなと。



「一応場所の下見をする、とウォーレン殿の手紙にあった。つまり、レオナードとバッツが向かうことになろう。わざわざ足を運ばせたのに、私だけ胡坐をかいて待つのも悪いからな」


「ティグル様? 今は自治区の長とはいえ、立場は相応のものですからね?」



 だから遠慮してほしいと、彼女はそう告げたのだが、



「あぁ、そうだな。エレナがその言葉を、アインにも言えるのならば私もやめることにするが」



 どうだ? と、ずるい一言を口にしたのだ。

 当然のことだが、エレナに止められるはずもない。

 それは精神的にも、力の問題……権力的な話でもそうだ。



 むしろ、あの娘(クローネ)が止められない相手を、自分が止められるはずもなく、



「……イシュタリカの騎士にも、護衛の応援を依頼しておきます」



 最後は諦め、せめてもの安全確保に奮闘するのだった。




今日もアクセスありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんか、重要っぽいワードがでてきたな?今のところ何もないみたいだけど、そのうちにその祭壇とやらは重要な役割が実はあったりするのかな?
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